169.食べ物のこだわり
────翌朝
「んじゃ俺は一足早くジャックさんと会議室に行ってますね」
「はーいっす!」
「グリちゃんの事はまかしてねぇー」
「ムフフフフ。今日は楽しみにしておるぞ」
「すまん、タクミ。俺も楽しみにしてる」
「よろしくお願いしますねタクミ殿」
「はーい、では行きましょうかジャックさん」
「おう!みんな後でな」
『転移』
ぐにゃーん
「さあ!グリちゃん!ジャブジャブしましょ!」
「うむ、アーロンジャンジャン流せ」
「かしこまりました」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おう!会議室使うからな」
「早朝からお疲れ様です!」
「おう、お前らも護衛ごくろーさん」
役所は貴重な物も置いてあるため基本24時間体制で門番が警護しているそうで、あちらの衛兵さんは夜勤の当番だろう。まさかこんな偉いさんが早朝から来るとは思わずに驚いている様子だった。まさか誰も思わないよな。ただ飯が食いたいだけで早朝出勤だなんてさ。
「この部屋だタクミ。窓も開くから火を使っても大丈夫だぞ」
「はい。ありがとうございます。では早速」
俺はアイテムボックスからボビーさんに作ってもらった特製のコンロや包丁、鍋などの調理器具を出して調理を始めた。
まずは材料を洗いカットしてそれぞれ準備。それからオーブンを温めておいて、今度は鍋に水を入れて火にかけて沸騰待ち。その間にボールに卵を入れて混ぜ砂糖、牛乳、小麦粉、重曹、食用油をその都度混ぜながら加えていき次にフライパンを熱して生地を丸く入れて焼く。フツフツと生地がしてきたらひっくり返して裏面も焼く。1枚目はフツフツしてくるのに時間がかかるから、その間に作り置きのサラダを取り出して、それからバターと蜂蜜も用意しておく。
「おっ!フツフツしてきたな」
ひっくり返して裏面も焼く。この時裏面は結構早く焼けるから頃合いを見て取り出さないと焦げちゃうんだよな。チラチラ見ながら手拭きを水で濡らしておいて絞って敷いておく。おっ!沸騰してきたな。鍋の水が湧いたのでカットしたマーニンチャードの葉を鍋に入れて茹でる。そして別のボールに卵を割り入れて砂糖、醤油と少しの水を加えてもう一つフライパンをコンロに置いて火をつけて温める。そろそろ焼けたかな?おお、いい具合に焼けてる。焼けた物を取り出して一度濡らした手拭きにフライパンをジュッ!と。フライパンの熱を冷ましてまた生地を入れて焼き始める。2枚目からはフライパンを冷ましても早いんだよな。そして茹でてるマーニンチャードを取り出してボールに張った冷水につけてしぼって冷水をポヨに吸収してもらいそのボールで砂糖醤油すりごまを混ぜてお浸しに。よーしとなりのフライパンも頃合いだ。混ぜておいた卵を入れて巻いていき甘めの卵焼き完成。皿に移してフライパンの生地をひっくり返す。うん、イイ具合だ。それから卵焼きを焼いたフライパンに油を入れてこれまた卵。今度は目玉焼きっと。目玉焼きを皿に移して今度はウィンナー焼くか。あとは温まったオーブンで魔魚を焼く。適当に切ったトマトにニンニク、白ワインとオリーブオイルを上からかけてオーブンに入れてあとはお任せっと。ついでにマーニンチャードとキノコのソテーも作るか。あとは作り置きのミネストローネ、コンソメ、味噌汁にサンドイッチとおにぎり、フライドポテト、卵豆腐、ハーブで作ったハムに炊き込みご飯など適当に並べてバイキング形式にした。もちろんデザートは食後に出す予定だ。
「おっ前すっげーなー!作り置きがあるにしろこのレパートリーとかヤバいだろ?」
「そうですか?でも作り置きほとんどなくなってきて、本当は料理を作りたいんですけど最近時間がなくて」
「忙しくしてるもんなぁ」
「新しくワイバーンも手に入ったんですけど調理できてなくて今日は出せずにすみません。ワイバーンは売り切れちゃって」
「いやいや、これだけ用意してもらってんのにそんなわがまま言わねーよ」
「すみません、最近狩してないから魚は多いんですけど肉があんまりなんですよねぇー」
「なるほどなぁ。やっぱここは早いとこテントと店作ってダンジョンじゃねえか?」
「そうですね。この際バイオレットにテントの裁縫も頼んじゃおうかな。まだテント作りの職人さんの工房の目星がついていないんですよ」
「そうか。確かにあの生地をやたらめったら出すもんじゃねえしな。アーロンに紹介してもらうのが早いかもしれねえな」
「はい。なんだか申し訳なくて」
「お前はあいつはテントができる方が嬉しいに決まってんだろ?なんせ税収がかかってるんだから」
「ジャック、その通りですよ。私は税収の鬼ですから」
「鬼とまでは言ってねえよヘッヘッヘ」
「タクミ殿、良い工房をピックアップしたリストがありますので後でお渡しいたします」
「ありがとうございます」
「うわー!いー匂い!」
「美味しそうだねぇ」
「なんだあのパンは?!」
ジュルジュルジュル
ポヨーンポヨーン
「さあ、みんな適当に好きな物を皿に取って空いてる席で食事して下さい」
「グリとポヨには取っておいたぞ」
「ムフフフでかしたぞ。タクミ」
ポヨーンポヨーン
「うわ!カリフワがある!」
「今日は卵づくしですね」
「この柔らかいプルプルしたのはなんだ?」
「これはハーブのハムか」
「はーい、熱々のをもう一品」
ジュジュジュジュジュ
「魔魚だ!でっか!イイ香り!」
「さあ皆さん頂きましょう。そこのソースや調味料は適当に使って下さいね」
「「「「「「「いっただきまーす」」」」」」」
さてと俺はやっぱり目玉焼きにはソースだよな。他のみんなも目玉焼き取ってるけどどう食べるかな。ジョージ君はおお、塩胡椒ソースの全部ガケ、ヘンリーさんはへぇー醤油派か。ジャックさんはシンプルに塩のみ、おっ!グリは器用にソースをかけてんなぁ。ポヨはまあ、一口丸呑みだよね。ノアさんは醤油と塩胡椒。なるほどやっぱりこれだけいると好みはバラバラだよなー。おっ!ジョージ君は置いといた食パンに目玉焼きをのっけて半分に折って潰した!そして黄身、ソース、塩胡椒を全混ぜ状態でパンにかぶりついたぞ!あの黄身とソースが混ざった黄身ソースの食パンって美味いんだよなあ。おっ!アーロンさんは醤油をかけて、おお!潰した!そっか潰して食べるタイプね。俺は黄身だけ取り外してお口の中でジュワー派だから黄身を潰してしまうのを見ると無性にもったいなく感じちゃう。
「みんなそれぞれ食べ方も違うなぁ」
「何がですか?」
「あっ、すみません。目玉焼きって色んな食べ方に好みがあるなって思ったんですよ。」
「目玉焼きですか?私としては黄身にしょうゆをかけ白身をそれにつけて食べるのが最高だと思いますが?」
「アーロンも醤油かい?醤油の香ばしい風味とトロリとした黄身との絶妙なコンビがたまらなく美味しいよね」
「塩だけもイイぜ。シンプルで素材の良さがよくわかるぜ」
「えっ!パンには絶対にこのソースが合いますって!」
「ん?ソース?おい、醤油をかけて米と食べてみろ。旨いぞ」
「単体だけでも美味しいですよ。むしろ単体で味わうべきかと」
「え?」
「え?」
「色々食べ方ありますよねぇー。」
「いや、こっちのが旨いっすよ!」
「いや、こっちだろう?」
「いえいえ、こちらの方が」
「まあ全部旨いでいーんじゃねえの?」
「「「よくない!」」」
「ジャック、食べ物の戦いはね怖いから放置しようね。こっちはこっちで他の食べてよ」
「ヘンリー様止めて下さいよ」
「たまにはこういうのもいーんじゃない?あはは」
「サンドイッチの卵はやっぱりこのゆで卵を細かくしてあのマヨネーズソースと混ぜ合わせたこれに限る!」
「いやいや塩で味付けされた薄焼き卵でしょ?」
「いーえ厚焼きですよ。薄っぺらいものではなくインパクトも大切ですよ」
「次はサンドイッチか。あやつら中々のこだわりがあるようだな」
モグモグ
「色々こだわりつえーな。ちなみに俺はどれも好きだし半熟のやつも好きだな」
「フッそんなこだわり、奥さんもらったら消え失せるのに」
「「?!」」
「あはは。そんなもんだよ。愛する人といかに共存するかって事ね」
「譲り合いの精神は大事ですね…」
「譲り合い…あいつらの嫁は苦労するだろうな…」
「おい、どーでもイイがデザートよこせ」
「そうだな。あいよ」
ピカピカピカピカ
「パンケーキは!」
「蜂蜜とバターをちょこっとつけて食べるのが!」
「いやいや!全部塗ってべったりかけるべきでしょ!」
「何を?!バターは一周さっと回して溶かしその後に蜂蜜を!!!」
「タクミ、もう帰っていいか?」
「うーん、ポヨの片付け終わったらな」
ピカピカピカピカ
「ヘンリーさん、俺ら帰りますね」
「カリフワはケチャップ!」
「塩!」
「塩胡椒!」
「君達?そろそろ周りを見ようか?ええ?流石の僕も怒っちゃうよ?!ん?」
「「「はっ!失礼しましたぁ!!!」」」
読んで頂きありがとうございます。
感想で目玉焼き問題については殴り合いになりますぜ。というコメントを頂きとても面白いなと思い小話を書いてみました。素敵な感想ありがとうございます。




