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166.幻の生地とドレスの価格

「あー幸せだ!早朝水浴びしてから1日が始められるなんて、なんて私は幸福者なんだろう!あははは」


「ヘンリー羽の下がかゆいぞ」


「はいはーい」


「アーロンさん良いんですか?主人がグリの言いなりですけど」


「良いのです。これは日々疲れたお体と御心を癒す魔物ヒーリングなのですから!ムフフフフ」


貴方、言い切りましたね。黒い笑み浮かべながらニヤニヤしてますけど、そんなに仕事詰め込んでるんですか?あらあらヘンリーさん嬉しくて目に涙浮かべてますよ。従魔小屋の下働きの人が思いっきり冷たい視線を送ってますけど本当に良いいんでしょうかねぇ?


「うむ、心地よい。ではそろそろ乾燥するぞ」


「そうかい?じゃあ乾いたらブラッシングしようね」


「お前は飯でも食って来い」


「いや、乾燥する姿を見守って……」


「ヘンリー様、食堂へ参りますよ。グリ殿が困っているではないですか」


「えっ!うーんわかったよ。じゃあブラッシングは後でね」


ショボーン


「ヘンリーさん、これから毎日のように水浴びできますから、そんなに肩を落とさないでください」


「そうだね!タクミ君!ありがとう。よし、朝食をとろう!」


昨夜からバースの宿に泊まりヘンリーさん御一行と合流した俺たち。昨日、マーガレットさんに内装工事を進めてくれと話したらあまりに早い建築に驚かれたが内装工事を依頼したといつもの売上報告の時に共に連絡が来た。それから職人の手配もすぐに進めていくつか工房をピックアップしたそうでそちらも併せて進行中との事。ボタンに関してはボタン自体を材料としてドレスを作る工房に卸すのかそれとも自社で販売するかを検討中と行った所。正直卸した方が楽な気もするんだよな。


「おはようございます。タクミさん」


「おはようございますメアリーさん」


「あら?タクミさん、素敵なボタンを付けられておりますわね」


「ああ、次に売り出しを考えてる商品なんですよ。こんな小さな物よく気がつかれましたね?」


「ええ、さりげないお洒落というものはわかる者にはわかるのですわ。しかしそのような美しい輝きを放つボタン、見たことがありませんわ。宝石とも違いますわよね?」


「はい、これはガラスに似た素材ですがかなり頑丈な物でこれから販売していこうと思っているまだ世に出ていないボタンです。メアリーさん、よければ食事の後お時間いただけませんか?少し相談があるのですが、如何でしょう?」


「構いませんわ。私がお役に立つならば喜んで。よろしいですよね?ヘンリー様」


「もちろんだよ。タクミ君、アーロンも必要かい?」


「さすが、ヘンリーさんですね。でもアーロンさんはお仕事が山積みですし、もう少しまとまってからお話を持っていきます」


「タクミ殿のお話でしたら税収に絡みますから第一優先でお話を伺いますのでどうぞご遠慮なく」


「あは…あははは…はい。頑張ります」


「では、私とヘンリー様は役所でリゾート計画を進めておりますので、何かございましたら役所へお越し下さい。受付に名前を名乗って頂ければ通すように話をしておきますので」


「わかりました。ありがとうございます」


「それではそろそろ行こうか。アーロン」


「かしこまりました。ヘンリー様。ん?どちらへ?」


「グリ殿のブラッシングに決まってるじゃない。そのあと役所に行くんだよ。何か不満でも?」


「いえ、お供いたします」


なんかすみません、アーロンさん。


「では、失礼」


「行ってらっしゃい」


「ヘンリー様、外までお見送り致しますわ」


「いや、良いよハニー。君はタクミ君の力になってあげて。たぶん君にしかできないことだと思うから。チュッ」


「かしこまりましたわ。では行ってらっしゃいませ」


「ああ行ってくるね」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「相談というのは……」


「そちらのボタンの宣伝ですわね?ウフフ」


「……はい。御察しの通りです。あと、ドレスも実はありましてメアリーさんにお茶会の際にたまにで結構ですので、このボタンを付けたドレスやうちで今密かに仕立てているドレスを着てお出かけしては頂けないかというお願いとあとはデザインとかの相談です。俺なんかより間違いなく社交界のドレスの準備などを行うメアリーさんの方が流行だったり女性の好みをよく把握されていると思いますので前回の化粧品同様是非相談に乗って欲しいと思っていたのです」


「まあ!ドレスまで仕立ててらっしゃるの?!これは驚きましたわ!」


「ちなみにこれは俺用に仕立てたシャツです。どうぞ見て下さい」


「失礼。まあ!なんて上質な生地にこの手触り……これは絹?でも、手触りが絹よりも良いわね、それに光沢も出回っている上等な絹よりも艶があるわ。これはいったい?」


「アーロンさんは幻の生地や絹鎧と言っていました。これは絹の欠点である水に弱いので家庭での洗濯が困難な点や汗によりしみになりやすかったり変色しやすいという点、それから虫に食われやすいという部分を取り除き、さらに絹鎧と言われる理由は水にも火にも強く攻撃されても恐ろしく防御力が高いので鎧のように使えるのに手触り肌触りは絹のように柔らかくさらに体にフィットして伸縮もするので敗れる事もなく軽くてとても丈夫なのです。そして糸自体も恐ろしく硬いのか虫に喰われない。そんな生地です」


「これが幻の生地なんですの?でもあれはダンジョンで取れるアラクネーの糸を高スキルの者が織る事により初めて反物になるけれど……まさか!タクミさん、そんなスキルまでお持ちなのですか?!」


「ち、違いますよメアリーさん。俺はそんなスキル持ってませんよ」


「ではこれは一体?」


「あの、協力をお願いして申し訳ないのですが出所は秘密にしても良いでしょうか。メアリーさんには嘘はつきたくないですし……」


「あら、タクミさんごめんなさい。貴方を困らせるつもりはありませんでしたの。つい好奇心でこちらこそ不躾な質問を致しましたわ、申し訳ないです。タクミさんが気にする事はございませんのよ。それにしても嘘はつきたくないのでって本当に裏表のない方ですわ。益々応援したくなりますわ」


「す、すみません。それに嘘は下手なので、そんな三文芝居に付き合わせるのも心苦しくて正直に伝えられるままをお話ししました」


「ええ。それで良いのですよ。オホホ」


「それでこの生地やもっと薄い生地のものなどを使ってこのように白いシャツやドレス、それに緑や黒や茶色のドレスを今のところ仕立てようと思っているのですが価値はどの位になるのか教えて頂きたいのとあとは先ほども話した通りお茶会や夜会に着て行って頂けないかと厚かましいお願いをしようと思ったんです」


「うーん、着ていくことは構いませんのよ。でもドレスというのはその方に合わせてオーダーをするので中々難しいのではないのでしょうか?」


「そうですよね。皆さん特別注文されているんですよね。既製品なんて着ないよなぁ」


「いえ、ほとんどが既製服ですわよ」


「え?!」


「一般的にはメゾンのデザイナーが注文者の御宅を訪問して既製服のドレスの案を見せられ侍女や又は本人が要望を出して買い付けた生地や装飾品を既製服のドレスに組み込んで自分好みにデザインしてもらいその後、注文者の体のサイズにドレスを調整したりあとは買い付けた装飾品を縫い付けてもらい仕立て上げていきますのよ。」


「えっ!という事はデザインっていうより提示された物を図案を元に組み合わせてそれをお針子さんが縫い上げて完成させるという事ですか?」


「そうですわね。例えば既製服の図案を何枚か出されてその絵に沿ってここはこの生地を使ってここの装飾の部分はこの石を入れて…と仰るように組み合わせていくのですわ。ですからもしタクミさんがお店をやるのなら生地屋さんなら大繁盛すると思いますがデザインをするとなると相手が女性ですから難しいかと思いますの」


「ああ、そういう難しいですね。あの、例えば既製品のドレス、しかも完成品をお客様にお見せして気に入った物をご購入頂くというのはどうでしょうか?」


「どういう事ですの?」


「今は生地や装飾品から自分達で材料を買い集めて、それを仕立て屋の方に組み合わせの打ち合わせをして今度は別のお針子さんが仕立てるわけですよね?」


「はい、そうですわ」


「それを仕立て屋が生地を決めてデザインをし仕立てた完成品を絵や店舗に飾るなどして気に入ったドレスを選んで購入して頂き、最後にサイズ直しだけするという物です」


「そんな事が可能なのですか?もしそうなれば各お店に手配をかける事が必要なくなりますし、とても効率的で時間も短縮されるのでとても楽ですが他の生地屋や仕立て屋のマダムが黙っていないのではないかしら?例えば生地を売ってくれなくなったりと嫌がらせされないかしら?」


「いえ、生地はこの幻の生地だけを使ってアクセサリーも全て俺の商会でまかないドレスを仕立てるのです。うちでしか使っていない生地でうちだけのオリジナルデザインの他にはない装飾品をあしらったドレス販売です。いかがでしょうかね?」


「確かにそれならば高価で買えない方は今まで通りの所で生地を買いデザインをしてもらい仕立ててもらうので全てのお客様を奪うわけでもないですし、化粧品店同様、新たな販売方法として面白いかもしれませんわ。正直社交シーズンのかなり前から色んな所から生地屋を呼んで生地を見たり装飾品を見たりとそれはもう、大変な作業なのです。でもそこで失敗をしてしまうとあそこの領地は……と言われてしまうので、それはもう必死というかシーズン前からうんざり…いえ、疲れてしまいますのよ」


「なるほど、それは聞いているだけでも大変な事がよくわかります。だって出入り業者さんも一つじゃないわけですよね?」


「そうなんですの。一つに絞ると良いものが入っていない時や他に良い物を回してしまって残り物しか無いとか、そういう事態に備えるため生地屋は3つ大手の所と契約していますの。正直デザインは皆同じですからドレスは生地で勝負という感じかしら?」


「それで生地屋さんなら繁盛すると仰ったわけですね?」


「そうなのです」


「なるほど。うちのできてるデザインを今から転写しますので見ていただけますか?」


「はい、かまいませんわよ」


俺はファッションショーで見た記憶をアイテムボックスから取り出した羊皮紙に転写というのか念写する事にした。これで目の超えた彼女がなんて言うのか。それによってはドレス屋はやめて生地屋に転向しようと思う。


『転写』


「さあ、こちらです。どうぞ」


「こ!これは!なんて素敵な美しい白いドレスなの?それにこの光沢にこのレース?に刺繍?こんな薄い布に刺繍が施されているものなんて見た事ないわ!それにこの形もとてもスタイルが良く見えるわ!ちょっと貴女もご覧になって!」


「はい奥様、こんな薄い生地にこれほどまでの高度な刺繍は見たこともございませんわ!」


「次の物もこのスカートのボリュームはどうやって出しているのかしら?」


「はい、それにこの輝きは先ほどのものより煌びやかに見えますしこのスカートの柄は小花でしょうか?とっても愛らしいですわ!」


「次の物はとても体のラインがくっきりと浮かび上がったドレスですわね!」


「そうね、膝の部分から裾に向かうに連れてボリュームの出るメリハリの効いたこんなデザイン見た事がありませんわ!」


「奥様、これはきっと背の高いスレンダーな方にとても似合いますわね。背の高いスレンダーな方は通常のドレスを着ると貧弱に見られがちですが、これならば貧弱なんて言われませんし女性らしいしなやかな曲線美を演出できますわ!」


「そしてお次は、胸下部分から裾に向かってストンと落ちる、流れるようなラインが魅力的なデザインのドレスですわね。」


「そうね。スカートのボリュームが控えめですから落ち着いた雰囲気でナチュラルに着こなすことができそうですわ。」


「はい、ドレスを着用する方のスタイルや雰囲気によって、女神様のような大人の女性らしさを演出することもできそうですし小さな子供に着せたら妖精のような無垢な少女らしさを演出することも出来そうなドレスかと思います」


「次を見るのがワクワクしてきましたわよ!さてお次はまあ!色が変化していますわ!」


「しかもなんと美しい色でしょう!」


「それにこの刺繍も見事ですわ!」


「次の物は色違い!なんと鮮やかな紫色なのかしら?えっ!次のは生地で作った大胆なお花のドレス!」


「しかもどれもこれも軽そうですわ奥様」


「キャーーーーー世の中にこんなドレスがあるなんて!!!!」


「メアリーさん、そしてお付きの皆さんいかがでしょうか?」


「タクミさん!」


ガシッ!


「はっはい!」


「ぜひ販売するべきですわ!もし販売しないのでしたら私だけにはこちらのドレス売ってくださいまし!」


俺は思いっきりメアリーさんに腕を掴まれ後ろに控えるお供の侍女さんやメイドさん方の目は燃えたぎる業火のような視線でなかば脅されてるんじゃね?俺?と思うくらい熱い視線を送られた。


「では、先ほどお話しした店舗に足を運んで頂いて販売するという方法でも大丈夫そうですかね?」


「これなら放置していても食いついてきますわムフフフフ。でも全く同じドレスで夜会やお茶会で鉢合わせてしまったら悲しいわね」


「そうですわね奥様」


「あの、その為に別料金のオプションとして色違いや刺繍を違う柄の図案を1つのドレスの型にいくつか用意しておいてさらに幅をきかせるというのはどうでしょうか?生地の変更などはイメージも変わってしまいますしできかねると思いますがその位の変更なら可能だと思うんですよ」


「なるほど、確かにそうですわね。それにこれだけの形のデザインがあれば早々かぶる事もないでしょうね」

「はい、上等なものですからそう安易に購入できるペニーでもないですし」


「そうですわね!それにリメイクもしたりしますからね」


「リメイクですか?」


「はい、例えばお呼ばれした夜会に同じ物は着ていかないという暗黙のルールがありましてあまり同じドレスを来ていると領地が貧しいとか言われてしまいますのよオホホホホ」


「えっ!でもドレスなんてめっちゃ高価ですよね?それで一回袖を通したらもう着ないんですか?」


「いえいえ、わかりやすく申しますとアーロンの夜会に着た同じドレスで二度アーロンの夜会には行かないけどリメイクしたり他の方の夜会には参加するという程度ですわ。」


「な、なるほど」


「そしてシーズンが終われば気に入らないドレスや今後着用しないドレス等は親族や侍女にあげたり下取りに出したりもしますわ。やはりドレスは高価なものですし、ある意味財産のようなものでもありますのよ」


「そうなんですね。ちなみに男性も同じですか?例えばシャツとか」


「そうですわね、男性のシャツもお抱えのメゾンがあるかと思われますが機能面を考えますと同じようにお店に置いておくだけでも奥様が手に取り購入されるのじゃないかしら?貴女はどう思う?」


「奥様の仰る通りかと思いますわ。紳士服のお店を出すよりもさらっと置いておくだけで良いかも知れません。奥様や娘様のお買い物に一緒に来られる旦那様もいらっしゃるでしょうから」


「そうですか、そうなると店舗ですね。流石にこれは目立つところじゃないときっとダメだよなぁ」


「そうですわね。今はかる〜くこちらの絵をお店のショーケースの中に入れて飾ったらどうかしら?」


「ショーケースの中ですか?」


「ええ、素敵だと思われた方はきっと店員に質問してくるはずですわ。それにあそこのお店は女王様の特許状に守られているので盗作は出来ませんからドレスデザインを他のメゾンに盗まれることは無いと思いますの」


「なるほど!そういう事か」


「奥様よろしいでしょうか?」


「ええ、どうぞ」


「仮に盗作をしたとしてもあれほどのドレスを真似できるほどのスキルが他のデザイナーや仕立て屋のお針子にあるとは思えません。基本同じ物を繰り返し作ってきておりますから違うデザインとなりますと通常より時間がかかると思われます」


「なるほど。では今から出さない方が良いですかね?」


「いえ、たぶん大丈夫ですわ。もう皆生地を買い集めている頃ですから注文を次のシーズンまでに取りたいのであれば今出すべきですわ。」


「それに奥様、例え今出したとしても仕立て屋がきっとあれだけのドレスを同じように作れる程のスキルも無いと思いますし、あったとしてもきっと多くの注文を抱える中で特別なドレス製作に時間を割く事は難しくて結局間に合わないので同じデザインは請け負わないと思います」


「そうね。その通りだわ。でもいくら上等な物でも高価すぎては私達も手に入らないわ。これだけのドレス、おいくらにするご予定なのかしら」


「ぶっちゃけ、メアリーさんはいくらなら良いと思いますか?」


「そうよね。ここは私やマーガレットでないとわからない相場よね」


「そうなんです。役立たずですみません」


「とんでもない!こんな楽しいドレスを見るのは初めてよ!そうねぇ。アーロンはこの生地の価格についてはなんて?」


「恐ろしい値がつくとだけ。その後はこの生地の素晴らしさについてのお話を……」


「つまり、タクミさんがあまり価値がわからずお説教をされたという事かしら?ウフフ」


「御察しの通りです」


「困りましたわねえ。ねえ、絹は今いくらだったかしら?」


「はい、最高品質で一反780ペニーでございます。その他は平均520ペニー程でございます」


「ありがとう。さて今のを聞いてタクミさんはおいくらつけるのかしら?」


「あの一反でどの位作れるんでしょうか?」


「紳士服のシャツ一枚くらいですわ」


「そ、そんなに絹のシャツって高かったんですか?!」


「いえ、これは仕立て代を含めていないから仕立て屋に出せばもっと高くつくわね」


「お、恐ろしい…絹……」


「オホホホホ、そんなんでビビっていたらドレスは絹で例えばこのデザイン。ヒダが沢山付いているものなんて、かなり豪華に生地を使っているから、こんなの3反くらい必要ですわ」


「三反?!えっと一反が780だから2340ペニー?!ま、マジか!」


「まあ、そのくらい妥当ですわね。流行りのヘンリー様のガウンは2500ペニーしましたわよ」


「うっ!ガウンで2500ペニー?!」


「貴族の服はとにかく高いのですわ。特に絹は他国からの輸入品ですから運送費などがかさみますからね。現地で買えば10分の1から20分の1で購入できるそうよ」


「うおっ!かなりのぼったくりじゃないですかそれ!」


「でも仕方がないのよね。昔は2年とかかけてこちらまで運んでいたのよ。それが魔物を使う事で日数は短縮されてるけどその分餌代がかかるだの何だので結局運賃は変わらずにこのペニーのままなのよね。それに期間は短くなっても命の危険は変わりがないからって事らしいわ」


「確かに魔物に襲われる危険は同じですからね」


「ええ、あと海で亡くなった船乗りのレイスやらあとは海賊なんかも出るし海の運送は危険がつきものなのよ」


「なるほどなぁ。そしてその絹の売り上げは他国に持っていかれると」


「そうね。でもそんなにこちらに敵意を向けてくる国ではないから、そこは持ちつ持たれつで問題ないのだけど、やはり理想としては自国で生産できてまかなえる方が国は潤ういますわよね」


「なるほどなぁ。どうしましょうか。正直悩むところです。はっきり言って絹より安い価格を打ち出す事は簡単ですがそうなると元あったシルクの価格破壊を起こして誰も通常の絹を買わなくなると思うんですよ」


「そうねぇアーロンとの相談が必要ね。とりあえず私個人の意見としては絹の欠点を補う素晴らしい生地であり高い防御力を誇る性能を考えると、他国からの運送費がかからないとしても同じ、もしくはそれ以上の値をつけても問題ないと思いますの。私は防具などの価格はわかりかねますのでもっと値をつけるべきかどうかは答えられないですがデザインにしたってどれも素晴らしいですし職人の手間賃を考えるとこの一番生地を使うドレスを仕立てるのに例えば最低四人は必要と考えてどの位になるかしら?」


「はい奥様、このドレスのスキルは非常に高いものと判断し最低でも1日24ペニーから32ペニーとして製作日数が早くて2、3日で仕上がるとしますと48ペニーから96ペニー必要と考えます。」


「そうすると1着のドレスは最低でも生地代プラス手間賃とタクミさんの儲けを入れる事になりますわね。」


「なるほど、防具としての価値がどの位なのかな?」


「よろしいでしょうか?奥様」


「ええ、どうぞ」


「最高級のワイバーンの革で1着上着を作りますと革代は125ペニーでございます」


「そうですか。貴女は博識ね。ありがとう。という事は動きやすくて軽いしかも絹の手触りのこの生地はやはり1反780ペニーでも何ら問題はないわね」


「という事は一番高いドレスで3反使って2340ペニープラス手間賃で高くても96ペニーだから2436ペニーか」


「タクミさんの儲けがそれでは含まれていませんわ。どうせなら分かりやすく2500ペニーでよろしいんではなくて?あと、オプションもありますからそれも入れるともう少し高くなりますわね」


「え?!売れますかね?!そんな高価なドレス」


「ムフフフフフ。売れますわよ…必ず!ムフフフフ」


「は、はぁ……」


「でも一応アーロンやマーガレットに相談してください。これはあくまで個人的な私達の意見ですわ」


「は、はい…」


読んで頂きありがとうございます。

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