150.徴収と薬
「・・・という事で、今は寝室にてターゲットは休んでおりまして手紙もこちらに」
「うむ、それでは取引だが、今回も変わらず行うと先方に伝えろ。今回は鉱石もあるから楽しみにしておけともな。」
「かしこまりました。」
シュタッ
「フッフッフッハッハッハッハ!まもなくだ!まもなく・・・」
ーーーー翌日
「おはよう、ヘンリー。調子はあまり良くなさそうだね。」
「ああ、ウィリアム。すまないな、こんな事になってしまって。」
「いや、仕方がないさ。仕事の事は私に任せて君はゆっくり体を労わるといいよ。」
「そうだ、ウィリアム。君に渡さなければならない物があるんだ。アーロン。」
「はい、こちらリッチモンドで取れた鉱石です。備蓄としてお使いください。」
「そうか。助かるよ。では、倉庫にでもいれておこうかな。」
「おい、君。これを備蓄倉庫へ」
「かしこまりました。」
「それでは私は仕事をするので申し訳ないが失礼するよ。」
「ああ、すまないが、よろしく頼む。」
「あと、これは追加の薬だ。また飲むと良いよ。」
「ありがとう。」
「では失礼するよ。」
ガチャ
「さあ、貴方。グッスリ休んで一日も早く薔薇のような頬を見せてくださいまし。」
「ああ、そうだね。ありがとうメアリー。」
「アーロンもすまない。」
◇ ◇ ◇ ◇
ーーーー夕方
「おい、今日の徴収はどうだ?」
「はい、いつも通りしっかりと集まっております。」
「そうか。明日で全部の徴収が終わるな。滞りなく頼むぞ。」
「はい、かしこまりました。」
フッ、庶民どもは俺のペニーを増やしてくれるありがた〜い存在だよ。全くあやつらは愚かな生き物だ。自分達の備蓄だと思って一生懸命運んでいやがる。クックック。俺の小遣いになるというのになぁ。
「フッフッフッ。」
「ご機嫌ですなぁ〜代官様。」
「ああ、君達が一生懸命に働いてくれてとても嬉しいのだよ。」
「そうですかい。しっかり励みますぜ。」
クックック、庶民とは哀れだなぁ。高貴な者に声をかけられるだけで、こんなにも目を輝かせてやる気に満ちてくれるとは。愚かで哀れな生き物よ。
ーーーー城内とある廊下
コンコンコンコンコン
トントントントントン
キィー。ガチャ。
ササッ
コンコンコン
「失礼致します。」
「どうぞ。」
「お薬をお持ち致しました。」
ニコッ
「ありがとう。」
「失礼致しました。」
薬か。足音が二つ。なぜ二人だ?チクショウ!中が見えねえな。まあ、問題ないだろう。足音からしていつもの侍女と男の足音だ。きっとアーロンかヘンリー付きの男だろう。
「さっ、ヘンリー様。お薬を飲んでくださいまし。」
「うむ。これは良く眠れるからね。ウィリアムに感謝だな。」
「そうですわね。さぁ、おやすみ下さい。」
「ああ。」
◇ ◇ ◇ ◇
「おかえりなさいませ、ウィリアム様。」
「うむ、ヘンリーの調子はどうだ?」
「よく眠っておられます。」
「そうか。明日は忙しくなる、ヘンリー達の世話をしっかりと頼むぞ。」
「かしこまりました。」
さて、私はメアリーを少し慰めてやるか。
トントントン
「失礼するよ。メアリー。」
「ウィリアム、おかえりになったのね。」
「ああ、ヘンリーの調子はあまり良くないようだね。」
「ええ、貴方のくださったお薬のおかげで、よく眠れているようだわ。」
「それは良かった。どうだろう?彼はグッスリと眠って夢の中のようだし、共に夕食を食べないかい?」
「いえ、目を覚ました時に側についていて差し上げたいので、私は本日もこちらでお食事をいただきますわ。勝手を言ってごめんなさいね。」
「心配なのはわかるが、これでは君が倒れてしまうよ。側にはアーロンもいる事だし、少しくらい休憩を挟んでもヘンリーは怒らないと思うよ。」
「いいえ。私が側に居たいのですわ。そうでなければ、私自身の心が落ち着きませんの。心配りありがとうございます。私は大丈夫ですわ。」
「そうかい?あまり無理をしないでくれよ。愛しい人。貴女が倒れてはヘンリーも喜ばないからね。」
「はい。」
「では、私は明日も早いので失礼するよ。」
ガチャ
フンッ!意地を張りおってあのアマ。まあ良い。どうせすぐに手に入るのだからな。クックック
ーーーーー翌日
「さあ、しっかり運べ!荷を落とすなよ!」
「へい!」
「これで徴収は全て揃ったか?」
「へい!」
「ご苦労だった。下がってよい!」
「ははっー。」
「はぁー疲れたな。どうだ?一杯ひっかけていこうぜ。」
「そうだな。喉がカラカラだぜ!」
「今回もまずまずの収穫であったようだな。」
「はい、旦那様。そのようで。」
「それで、お前の主人はこの街に?」
「はい、まもなくご到着されます。」
「そうか。ではいつもの刻限に。」
「はい。」
さてと、私はヘンリーの様子を見に行くか。今日はアーロンにも飲ませなければな。しっかりと熟睡して頂こう。
コンコンコン
「どうぞ。」
「やあ、お加減はいかがかな?ヘンリー。と言っても熟睡かぁ。」
「ええ、たまに嘔吐されたりうわ言をおっしゃられては、また、眠りにつくという状況の繰り返しで、だんだんと酷くなっているようですわ。」
「そうか。それは良くないな。」
「教会に手配をかけて回復魔法をかけてもらうべきですかね。」
「そうだねぇ。では、こちらで手配するから君はヘンリーについてやっていてくれ。それより君達も、もしヘンリーの病がうつってしまうと大事だからね。よければヘンリーに飲ませている薬を君達の分も用意したので夕食の後に飲むと良いよ。」
「これはかたじけない。」
「ありがとう、ウィリアム。」
「いやいや。礼には及ばないよ。フフフ。では、失礼する。」
ガチャ。
「おい」
シュタッ
「奴等が薬を飲み寝るのを確認して知らせに来い。」
「御意」
シュタッ
さてと今晩は少し忙しくなるな。フッフッフッ
ーーーーその頃
「おお!待ってたぞ兄さん。てっきり受け取りに来ねえのかと思ったぜ。」
「すみません、ちょっとバタバタして。」
「そうかい。んじゃこれがさばいた魚だ。それから買い取り分はこれだけで解体料はこんだけだ。いいか?」
「はい、結構です。」
「んじゃ支払いするな。」
チャリーン
「はい、たしかに。」
「その様子じゃあ教会には行けてなさそうだな。」
「はい、ちょっと忙しくて。」
「まあ、時間がある時にでも行って来い。神様はいつも俺達を待っていて下さるからな。」
「そうですね。そうします。」
「戻ろうかグリ、ポヨ。」
コクっ
「おい、せっかく市場に来たんだ。少しくらい肉を食ってもかまわんだろ?」
「そうだな。んじゃ買い食いするか。」
俺達は魔魚の受け取りで市場へとやって来た。どうやらグリは焼き鳥を気に入ったらしい。8本も買わされたよ。ポヨはグリが食べ終えた串を綺麗にしながら塩味を楽しんでいるようだ。俺も適当に買い食いしてまた、元いた場所へと転移した。
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