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114.エルフの晩餐

「さあ、沢山食べてくれ!冒険者は体が資本だからな!キンググリフィンも遠慮なく食えよ。」


ヤベッ!今、思いっきりグリのやつプイッでしたぞ。あっ、器を足で押して欠伸までしやがった!あいつ、流石にあれは礼儀知らずだ。でもなぁ、あの餌じゃあいつが食べないのも無理ないよなぁ。あれ、羊と同じ餌だもんなぁ。まいったなぁ。


「すみません、グリの食事なんですけど、いつも俺と同じもの食べてていわゆる家畜とか魔物の餌はほとんど食べないんですよ。俺と契約する前は自分で魚とか獲って食べたりしてたみたいで、あまり飼料とか食べ慣れていないんです。」


「なるほど、これは済まないことをしました。あの、よければいつも与えている餌をあげて下さい。」


「すみません、クリスさん。せっかく用意して頂いたのに。」


「いえ、かまいませんよ。動物や魔物は普段から食べ慣れているものしか口にしない物も当たり前にいますので、そう、お気になさらずにどうぞあげて下さい。」


「はい。では、ちょっと失礼しますね。」


「んじゃ、今日はコカトリスの照り焼き丼だ。お前の好きな甘じょっぱいタレにキャベツの千切りとトマトを添えて、それからその上からマヨネーズをかけてっと。それから汁物は味噌汁なぁ。デザートはカットフルーツにするな。よし、どうぞ。」


こいつ、このまま喋らないつもりか?ん?無口を気取ってもダメだな。やっぱり。よだれで足元ベッタベタ。洪水じゃねえか。まったく。


ガツガツガツ


ペチャペチャペチャ


ガツガツガツ


「おいおい、ゆっくり食べろよぉ。喉に詰まったら大変だろ?あっ。水も出しとくな。味噌汁だけじゃ水分足りないよな。」


「ほほお。随分と美味しそうなものを食べさせているんですねぇ。」


「え、ええ、まあ俺の飯もいつもこんな感じで同じもの食べていますから。」


「そうですか。それにしても良い香りだ。」


「いや、所詮は男の料理ですから奥様方の食事には足元にも及びませんよ。」


「さあさ、私達も食べましょう。」


「そうしよう、ぜひ旅の話も聞かせておくれ。」


「へぇー、シャボンウォーターかぁ。そんな面白いものがあるなんてなぁ。しかもそれで風呂にまで入れるなんて便利だ。水魔法を使えても、その形を維持したり圧力のかけ方であったり魔力操作が高くないとできない代物だな。」


「どうなんでしょうか?俺はよくわかりませんけど、狩には必要だったのでできるようになり、メェもその方法で浄化しましたから凡庸性はあると思います。」


「それにしてもお話を聞いているとタクミさんはかなりの魔力量がありそうですね。もしかするとエルフ並みに長生きするかもしれませんよ?」


「そうなんですか?」


「魔力量が多ければ長生きしますから。エルフもお連れになってるキンググリフィンも。エルフの中でも寿命の長いものでは800年など生きますのでグリフィンでも短いものもいれば長いものもいる、全ては魔力量の多さにより寿命がこの世では決まりますので人族でももしかするとエルフと同じくらい生きるかもしれませんよ。」


「えええ???」


「まあ、こればかりは20年くらい経たないとわかりませんけどね。20年経っても容姿がほとんど衰えず老化しなければ私の言った通りきっとあなたは長生きされる事でしょう。」


「そうかぁ。顔以外もやっぱりシワとか出ますかね。俺、自分の商品を毎日使っているからもしかするとシワは一生できないかもなぁ。」


「ん?どういう事だい?」


やべっ!女性陣の目がなぜか光ってる!


「あっ、化粧品の販売もしていて俺が開発した商品を自分でも使ってるっていうだけです。」


「ほぉ。そりゃあこの辺りでも買えるのかい?」


「いえ、リッチモンドの店でしか買えない商品です。」


「そうかい。あんた、商人と冒険者とさらにテイマーって大変だねぇ。」


「いえ、うちの従魔といいますか家族のグリとポヨが頑張ってくれますので俺は大して冒険者としてはあまり働いていないので、今回の依頼くらいですよ。まともに俺だけで行動したの。あとはほとんどこの二人が頑張ってくれました。」


「ほぉ。いい子達だねぇ。」


素直になぜなぜされてるグリが愛らしいなぁ。やはり自然と共に暮らすのが上手な種族の人達だからかな?グリもエルフ族の人達といる時は俺以外の人族といる時より大人しいというか素直になぜられたりしているし、心なしか警戒心が薄いように思える。やはりエルフって特別なんだな。


「それにしても、あんたが料理もできるとは驚いたよ。この味噌汁?美味しいねぇ。」


「ええ、お母さんの言う通りとても美味しいですわ。肉も魚も使ってないのにしっかりとした野菜の味だけでは出すことのできないこのお味。素晴らしいですわ。」


「ああ、それは出汁のことですかね?これも商品の一つなんですよ。」


「きっと成功間違いないですわ。頑張って下さいね。」


うわぁ〜。トム君のお母さん。この笑顔天使ですか?いや天使ですよね?

こうして穏やかな笑顔絶えない団欒の時間を天国より遣わされた種族なんじゃないかと思うくらいの男女ともに美しい人々と過ごして俺達は貸してもらった部屋に戻った。


「本当、エルフの人って優しいなぁ。見た目があんなに綺麗だから俺なんて虫を見るような目で見られるかと思ってたけど全然違ったよ。」


「いや、そう言う奴も中にはおるぞ。あやつらがたまたま違った話でエルフが一番!ってヤツは普通にいるぞ。というか人族でも獣人でも俺らが一番!っと思っておる者もいるしお前のようにそうでない者もいる。人それぞれだ。」


「そっか。そう言われてみればそうだな。種族云々じゃなく、やっぱり個人の性格や価値観が大事なわけだ。」


「うむ、それに今は公国も大人しくグランド王国の発展に貢献し協力的だがな、昔は違ったらしいぞ。」


「そうなのか?」


「ああ、ヘンリーのじい様のさらにじい様がカムリの君主の血を引いているとかで、それで協力的らしい。しかもじい様は予言の子などと言われてカムリの地を抑圧から解放する者とみなされていたとか。じい様がまだグランド王国でテーダー朝を開く以前には、かなりあの地は内乱や後継者争いで荒れていたそうで、幼少の頃にはこのカムリの地で育ち、さらに戦乱の時にはカムリの援軍や通航権を確保し最終的に戦乱を終結させたそうだ。」


「へぇーって事はヘンリーさんも何分の1かはエルフの血が流れてるのかぁ。」


「うむ、そうなるな。」


「たしかに、あの青い瞳に美しいブロンドの髪と透き通るような白い肌。なんだか、納得したよ。そっか。お爺様は凄い魔力量の多い人と言っていたけどエルフの血のせいか?」


「うむ、そうだろうな。ごく稀に何代、何十代前のエルフの血が色濃く現れる者がおるらしいからな。」


「でも、その割には短命だよな。300年とか生きたとか聞いてないけど。」


「たしか、ヘンリーと同じ病にかかり死んだそうだぞ。顔は似てないそうだがな。」


「てことは、長生きの種族でも病には勝てないってことか。よっぽど結核って強いんだなぁ。で、カムリの君主の血だとすると、カムリがこの土地とグランド王国の王になったって事だけど、なぜ公国とグランド王国と別れているんだろう?」


「まあ、単純に言えば民族の違いだろう。公国はほぼエルフ、グランド王国は人族と獣人、混ざり合ったところでうまくいかぬし、そのままにしておいた方が国も統治しやすいのであろう。それに次代の王は必ずまず、公国の君主に任ぜられるとも言っておったぞ。」


「つまりエリザベスさんが子供を産めばその子はカムリ公国の君主になるってことか?」


「肩書きはそうなるな。まあ、エルフの血が入っているのであれば、納得もするであろうがもし、女王が子孫を残さず後継がエルフの血の入っていないものに仮になるとすれば荒れるだろうな。」


「ヘェ〜、なんか俺にはそういう難しい話はよくわからないけどエルフの血って凄いんだな。ところでお前はどうしてそんなに詳しく知ってるんだ?」


「全部アーロンの受け売りだ。水浴びの時にお前のことを思って我に話しかけながら一人でブツブツあーでもないこーでもないと話をしておったわ。」


「な、なるほど。きっと公国に俺が寄るからグリに歴史とか話してくれたんだろうな。しかしあの人も随分と丁寧な人だなぁ。」


「ああ、あのように冷たそうに見えるヤツだが実に過保護だな。」


「まっ、公国は大事な所ってわかったし、すごくマジックアイテムが発展していて面白い物が沢山あるって事がよくわかったよ。来てよかった。まあ、メェがあんなにも薄情だとは思わなかったが・・・。シクシク」


「女々しい奴め。あれは動物の本能を全うしておるだけだ。文句を言うな。」


「そうだな。あいつには子孫繁栄してもらわないとこの公国もグランド王国も困るからしっかり働いてもらわないとな。」


「そうだぞ。面倒な奴め。」


こうして俺達は任務を無事完了した。明日はいよいよ俺の商人としての旅が始まるぞ!

読んで頂きありがとうございます。

更新ペースが遅れます。

次の更新は来週までお待ち下さい。

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