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110.営業

「見せて頂きありがとうございました。」


「いえ、では頑張って下さいね。それでは失礼。」


「タクミ様、お力になれず申し訳ないです。私が申し上げるのも従業員としてあまり良い事ではないのですがオリヴィアはこちらの宿主の子供の中で一番末の娘でして、上の兄弟達にも可愛がられて育った為、どうやらワガママに育ちまして嫁いだ姉達もいるのですがオリヴィアとは異なり非常に穏やかな女性ばかりで、なぜか彼女だけ自己主張の強い少し変わった性格の負けず嫌いなものですから彼女の両親も手を焼いているのです。まだ、子供なものですからどうかご容赦下さい。」


「あははは、貴方が謝る事はないですよ。俺の方こそ不躾なお願いを唐突にして、さらに従魔が失礼な発言をしたんですから怒られて当然です。どうか俺の事はお気になさらず。」


「はぁ。ありがとうございます。そう言って頂け少し安堵いたしました。何しろタクミ様は公国から丁重に扱うよう申しつけられた大切なお客様ですから、まさか、このような事態になるとは私も思わず余計な事をしてしまいました。」


「いえ、素晴らしいアイディアを頂けてヒントまでもらい、さらにそれを無償で使って良いと確約まで頂きました。こちらは喜ばしい限りです。」


「そうですか。お店が繁盛すると良いですね。」


「ありがとうございます。そうだ、お礼にこれ、うちの商品です。よかったらオリヴィアさんに渡して下さい。化粧水と乳液です。それから貴方には迷惑をかけたお詫びに俺の店で出す食事を食べてみませんか?」


「は、はあ。しかし・・・あの、賄いがございますので・・・。」


「でしたらスープだけ是非飲んで欲しいです。食事まだでしょうし、お腹空きません?」


「はぁ。では、スープだけ」


「よかった。アイテムボックスから出すだけですから時間はかかりませんよ。」


俺はアイテムボックスから昆布だしと乾燥椎茸で出汁を取った味噌汁を器に注ぎ彼に出した。


「どうぞ。」


「随分と茶色いスープですね。頂きます。」


そしてイケメン君、上品に一口スープを口に含むと


「う、うまい!これはなんです?コクがありますが魔物や動物のものは使っていませんね。それにこの塩気。一体これは?」


「これは味噌汁です。俺の故郷の味で、出汁を取っているんです。ここの料理は動物や魔物の物を使っていないので、どうもスープに物足りなさを感じていたものですから乾燥させたキノコの戻し汁や海藻を使って料理をすればコクが出ると思いましてせっかく体に良い料理を出されているし、お風呂も最高なのでさらに料理も、もっと美味しくなればと思いまして、色々と誠意ある接客をして下さったお礼です。」


「よ、宜しいのですか?こんなに美味しい秘伝の味をおいそれと教えてしまって。」


「ええ、それにこれは俺の商売にもなりますからね。この出汁を取る作業って大変だし、食材も高価ですけど、うちの商品で粉末化した物を用意していますので、お湯にそれを入れるだけで同じ味が作れる物がありますからお気に召したなら是非注文して下さい。なーんて、少し商人っぽい事してみました。」


「あの、検討したいのですが、このお味噌汁なるスープを宿主に飲ませる事はできますか?」


「そうですね。皆さん、お食事はまだでしょうか?もしよかったらこのスープをどかっとお渡ししますのでまかないの時に出してみて下さい。」


「それはいい!」


「じゃあ、用意しますから鍋だけ持ってきてもらえます?詰め替えましょう。そしたら冷めても温め直しができますからね。」


「わ、わかりました。今すぐ!」


イケメン君は凄い速さでこの部屋を出て厨房に向かったようだ。その間に俺はコピーをして味噌汁を増やす。だって俺らの旅の分がなくなっちゃうからね。大きな納品先が1つ増えるといいなあ。意外に俺、営業もできるのか?よし、こんなもんで足りるだろ。


トントントン


「失礼します、鍋を持って参りました。」


「はーい、どうぞぉ〜。」


「失礼致します。こちらにお願い致します。」


「はい、では移しましょう。」


俺は大きな鉄製の魔女がぐるぐると液体をかき混ぜてウッシシシシとか言ってるようなよくあるシチュエーションに出てくる鍋に味噌汁をドバドバ入れていった。この光景だとあんまり美味しそうに見えないのが残念。


「どうでしょう?この位で足りますか?」


「はい、沢山ありがとうございます。」


「いえ、これで試食会を是非成功して頂ければありがたいです。」


「ではテーブルから転送させて頂きます。」


テーブルがピカッと光って鍋は忽然と消えた。やはりこのテーブルは便利だし、欲しい!さてさて、結果はどうなるかな。楽しみだ。


「よーし、明日も早いし、そろそろ寝るか。そうそう、グリ、ありがとうな。わざと彼女に喧嘩ふっかけるようなこと言って俺が作っても良いようにしてくれたろ?」


「何の事だ?我は思ったまでの事を述べただけだ。」


本当に照れ屋だな。面と向かってお礼されると照れるところが少し可愛いぞ王様。フフフフフ。


「何をニタニタしている。気色悪い。フンッ先に寝るぞ。」


「ああ、おやすみ。」




読んで頂きありがとうございます。

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