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11.マーニン島〜二ヶ月〜

 ボテボテボテボテ。



「う、うわぁ〜気持ちワリィィィィィー」


 いつものまき調達で森の中を歩いていると突然グリーンキャタピラーが上から降ってきた。


 この辺りのグリーンキャタピラーは木の上の方の葉っぱを好物にしているのか歩いていると上から降ってくる事がある。

 何度か遭遇しているので初めほど驚きはないが、やはり見た目が気持ち悪くて、しかも登場の仕方も突如降ってくるので

 慣れる事はない。


 今日は四匹。

 俺の結界の上に鎮座してる。

 あーキモい。

 結界があるとはいえやっぱり嫌なものは嫌だな。


 もちろん触りたくないので風魔法で吹き飛ばす。

 こいつらは他の魔物の重要なタンパク源のようなのでほかっておいてもそんなに人間には害のないもののはずだ。

 そんな事を思っていると何やらでかい塊が俺の感知に引っかかった。


 うん、これはまずいかもしれない。

 そんな事を思っていると突如、上から降ってきた。

 すんでの所でかわすとなんとそれは俺よりもデカイグリーンキャタピラー。

 デカイイモムシだ。

 体には赤色と毒々しい紫色の斑点があってムニュムニュ動いている。


「マジかよ!そんなデカイ図体で、よくあの木の上に登れたな!」


 そんな間抜けな事を言っている俺なんかを無視して口から白い糸を俺に向けて吐き出してきた!


 どうやらコイツは俺を捕獲して食べるつもりなようだ!


 みるみるうちに俺の結界の周りは白い糸で覆われて半円状の空間の外は真っ白になり視界が奪われた。


 参ったなあ。


 だが、俺はその場でのんきに座り込む。


 この糸、何かに使えないかな?

 そんな事を考えながらぼーっと見ていた。

 10分ほど経過しただろうか。

 動きの無かったデカグリーンキャタピラーがどんどん近づいてくるのが感知スキルでわかった。


 どういう動きをするのか気になってそのまま様子を見ていた。


 というのも、俺は転移スキル持ちなので心底やばい状況になればワープして家に帰れば良いからだ。


 そんな事を考えていると…。




 ガツっ!ガツガツガツ!


 異様な音がした。

 ふと視界をあげるとデカグリーンキャタピラーの尖った無数の歯がそこにあった!



 キェ────!


 なんだコイツ!こんな牙があるのかよ!

 怖すぎるだろ!しかもやっぱりデカイ!


 ひたすらかじろうと無我夢中でヤツも牙を突き立てている。


 よし、鑑定してみよう。


【 名前 】ラージグリーンキャタピラー。


 ラージキャタピラーは人間も捕獲するほど大きくなり危険なためEランクの魔物。

 この糸に巻かれると大人の力でも切れず普通のナイフでは切れない。

 魔法で切るか魔法が付与されている剣でないと切れず面倒な相手。

 魔法を使えば簡単に切れる。

 体液が薬の材料になるが糸はベタベタして使えない。


 なーんだ。残念。

 糸は使えないのか。

 しかし薬にはなるんだな。

 だけど体液って。

 どうやって抽出するんだよ。

 気持ち悪いなぁ。


 どうしよう。

 でも人間も食べるっていうしコイツは危険だから狩るか。


 とりあえず保管するのも気持ち悪くて嫌なので土魔法でヤツのいる所に穴を開ける。


『ピットフォール』


 ズシ────ン。


 うん。落ちたな。


 風魔法で結界にくっついた粘着質な糸を剥ぎ取り落とし穴の中を覗くと狭そうにしながら土の中を登ろうとムニュムニュ這っていた。


『ウィンドカッター』



 風魔法の刃が放たれラージグリーンキャタピラーが三分割され動かなくなった。



「仕留めたか。よし元に戻すか。」


『アース、リターン』


 掘った穴の土を元の場所に戻してラージグリーンキャタピラーごと埋めてしまう。

 これで土の養分になり自然にかえるだろう。


 帰り道、何か視線を感じたが気のせいだろう。

 感知スキルは近くでは反応していない。


 念のため転移して家に帰る。


 何も起こらないといいんだが……。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 俺は家の中の掃除や浄化槽の掃除をして(全て魔法でやっている。)

 神の錬金釜で今日採ってきたゴールデンラズベリーのジャムを作りながらのんびりと過ごしていた。


 そんな時だった。


 家の外から何やら物々しい音がする。



 エントランスに出ると感知に赤い点が五つ現れた。


「なんか来たな。」


 今まで魔物に結界が気付かれることはなく近くにいてもスルーされるのに今回は様子が違う。


 外に出ると森は暗いため何も見えないが何かが結界を破ろうとガンッとかキーンとか音を立てている。


 すると向こうが俺の存在に気づいたのか奇声を発した。



「ギギギギギーーーーーー」


「「「「キーーーー」」」」


「猿の魔物かなんかか?」


 しばらくすると遠くの方で閃光が放たれた。


「ん?なんだ?!」


 息つく間もなく俺の視界は赤い光に埋め尽くされ結界がいつも以上に青白い光を放った!


「おい!なんだよこれ?マズくないか?」


 結界のおかげで熱さは感じないが、間違いなく目の前は火の海だ。


 これでは森が焼けてしまう。

 一体どこのバカが森で火なんか使ってるんだ。

 森なんて火気厳禁だぞ。ふざけんな!


 俺は怒りと共に俺を丸焦げにしようとしている火に向かい

 水魔法をかける。


「これでどうだ!」


『ウォーターエリア!』


 俺の家の結界周りを水の魔法の領域で支配。


 上空に青白く光る魔法陣が展開され、あたりが光に照らされる。


 ポタポタ、ポタポタポタ。


 すると雨のような雫が落ち始め、次第に勢いはどんどん増していき豪雨のような水から滝のような水量に変わっていく。



 ザ、ザザザザ────────────。



 ジャバジャバジャバジャバ────────。




 すると この森を真っ赤に染めていた忌々しい火の海が勢いを失い徐々に鎮火され始めた。


「よし!この調子だ。」


 次第に燃えているところの方が少なくなり、どんどん赤い光は消えていく。


「全くどこのどいつだ?こんな事しやがって」


「頭にきたぞ」


 かすかに残っている火の魔法に鑑定をかける。


【 名前 】ファイヤーアロー。

 術者 :ゴブリンメイジ Dランク。

 火魔法。炎の矢を飛ばした攻撃魔法。

 初級の魔法だが術者の魔力量や魔力操作レベルにより威力が桁違いに異なる。

 魔法を使うものなら誰でも使えるが侮れない魔法。


 ◆ 感知スキル情報 ◆


 術者 : 追尾可能範囲内 。


 ◆ 推奨魔法 ◆

 アクティブホーミング。

 放たれた魔力を感知、分析後、攻撃してきた対象物又は術者を探知し追尾攻撃できる魔法。



 推奨魔法とか出てきたよ。

 なんかハイテクだな。

 やった事ないけど出てくるって事はこの内容通りにイメージすればきっと使えるって事だよな?

 逃げられる前にやってみるか。


『ウォーターカッターアクティブホーミング!』


 俺の体から魔力がどっと流れるのを感じた。

 今までにこんなに魔力を使った事はなく、初めての経験だ。


 少しすると小さな青白い光がファイヤーアローが放たれていた所にフワフワと飛んでいき、突如 強い光を放ったと思った途端スッと消えた。


「あれ?失敗なのか? 俺の魔力量じゃ足りなかったのか? それとも魔力操作のレベルの問題か? 」


 今の状況を理解できずに頭を傾けながら考えていると…。



「ギイィィィィィィィッーーーーーーー!!!」




 獣のような悲鳴が森の奥から響いてきた。


 すると俺の視界に画面が現れた。


 ────目標対象物 排除完了────

 

 目標対象 :ゴブリンメイジ


 ─────────────────


「さっきの悲鳴はゴブリンメイジの悲鳴だったのか。しかし成功してたんだな。しかもめちゃくちゃ排除が早いよな。間違って使ったら大変なことになる。使うときは鑑定と必ず合わせて使おう。リンクしてる時に使うなら間違いなさそうだ」


 これで他のゴブリンも当分襲撃してこないだろう。


 それにしても、この焼けてしまった森。

 どうしてくれるんだよ。

 せっかくオークの木も沢山あって住み心地の良い場所だったのに。


 とりあえず今日は真っ暗で何も見えないから状況確認は明日、日が昇ってからだな。


 大した処置が何もできなかったことで無力感と不甲斐なさに打ちひしがれながら、とぼとぼと家に入った。


読んで頂きありがとうございます。

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