106.三人風呂
クシュンッ!
「どうしたタクミ?病か?」
「いや、何だろうな。急に鼻がムズムズしたんだ。」
「そうか。」
俺たちは無事、前の町から今さっき到着したウォリントンに着き、旅の汚れを落とす為、人気のいないマージー川の奥まった所でグリの水浴び兼俺の入浴タイム。宿には風呂付いてないから風呂入れないし部屋でも相部屋だから難しいので川の近くでウォーターボールを使って水浴びと入浴。もちろん川の水なんかは使わないけど汚れた水を浄化魔法かけて川に流せばポヨが消化しなくて済むので、こちらに来てじゃぶじゃぶ体を流していた。
「やっぱり、風呂は気持ちがいいけど結界ないと死ぬな。」
「まあ、人里の川などこんなもんだろう。」
そう、川に人がいない理由。それは恐ろしく汚いから強烈な匂いで誰も近寄らないのだ。特にこの町は皮革製品も作っているので特に臭いがきつい。結界を張っていなければ、呑気に風呂なんて入っていられない。いつもながら神様達に感謝だよな。さて、そろそろあがるか。
「グリ、俺はそろそろあがるぞ。」
「うむ、我も切り上げるか。」
「よし、ポヨも出るぞ」
ポヨーン
男一人とデカイ鳥とスライムでの風呂。ありえない光景だよな。これ。ちなみにメェは水が苦手な魔物だそうで水の飛ばない近場で結界内に生えてる草を貪り食べている。そして俺たちは自分たちの体を拭いたり風であてて乾かしたりとそれぞれ水気を取って綺麗な姿で宿へと向かった。
「いらっしゃいませ。」
「よろしくお願いします。あの、小屋まで一緒に行きたいんですが良いですか?」
「はい、かまいませんよ。お客さん。」
前回の宿のように中庭があり、そこから下男が出てきて従魔小屋まで案内してくれた。
「タクミ、今日の晩飯は何だ?」
「今日はワイバーンハンバーグにしようかと思ってるよ。」
「なに?!あの、鍛冶屋で食べたやつか!ムフフフフそれは旨そうだ!早く出せ!」
「わかったよ、あっ!おまえ、せっかく綺麗にしたのに口周り、よだれべったりじゃねえか?!おい、タレてんぞ!」
ジュルッ
「気にするな。物を食せば口の周りなどどうせ汚れる。そんな事より早くだせ。さもなくばよだれの海に沈むことになるぞ。」
「何わけのわかんねえ事を偉そうに言ってんだよ。お前は。待てよ、今出すから。」
俺はハンバーグと米、それから付け合わせの野菜やらサラダとデザートのカットフルーツをさらに用意してグリに出してやった。それとついでにマーガレットさんからの定時連絡もそろそろなので羽ペンと紙を出して置いておく。
「ムフフフフ、ああ、この香り!たまらん!それでは頂くとするか。」
「熱いから気をつけて食えよ。」
「うむ、わかっておる。」
バグッ
「美味!!!!旨いぞ!!!うーーーん!このワイバーンの肉汁が口の中に広がりたまらなく良い香りが鼻に抜け、素晴らしく旨い!奴が大空を飛び回り旨いものを貪り食っていたおかげだろう。この上品な脂はほどよい運動と旨い餌から生み出されたまさに芸術品!それにタクミの調理により硬い部位でもこんなに柔らかく仕上がりさらにしっかりとした深い味わい!あー旨い!!!」
「おまえ、どこの食レポだよ。すげえな。魔物なのに。」
「ふん、魔物を舐めるなよ。我ほどの美食家は他にはおらぬがな。ムフフフフ。」
「はいはい。」
「うむ、おかわりじゃ!」
そして五杯分の米やハンバーグを平らげて、すっかりご機嫌のグリに布団を敷いた俺。すると先ほど出しておいた羽ペンが動き始めた。
「おっ、きたな。良いタイミングだ。6480ペニーか。へぇ〜今日は売り上げがすごく良いな。よし、返信、返信。okっと。これで良いな。ポヨ、片付けすんだか?」
ポヨーン
「ありがとうポヨ。」
俺はポヨに綺麗にしてもらった食器をアイテムボックスにしまいグリに声をかけた。
「んじゃ、グリ俺ら宿に入るな。」
「うむ、また、明日の朝な。」
「おう、おやすみ。」
こうして俺たちは宿に入り手続きをして部屋に案内された。
部屋にはすでに旅の商人風の先客がおり、着ていた衣服を丁寧にしまっている所だった。一応挨拶しておくか。
「こんばんは。相部屋、よろしくお願いします。」
「ああ、これはどうも。よろしく。」
挨拶も済ませたし俺は自分のベッドに横たわった。相部屋ってやはり苦手だな。見ず知らずの人と同じっていうのはやはり厳しいなあ。やっぱりテント、欲しい。うむ、俄然やる気が湧いてきたぞ!明日はしっかり市場を見て回ろう!こうして俺は気がつけばすぐにベッドの気持ちよさに意識を奪われ夢の中へと落ちていった。
ペシッペシッ
「ん、んん〜おはよ、ポヨ。起こしてくれてありがとう。ふぁーあぁー。よし、着替えてグリのところに行くか。」
俺は寝巻きにしている服から冒険用の服に着替えた。とは言っても同じ服だけど。アーロンさんから渡された服をコピーした物なので全く一緒。さて、グリの所で顔でも洗うかな。
俺とポヨは部屋を出て広間を素通りしてグリの小屋に向かう。なんだかとっても良い香りがするので後ろ髪引かれる思いで小屋へと向かった。
「グリ、おはよう。よく眠れたか?」
「うむ、今朝も良い朝だ。水浴びするぞ。」
「はいよ、ウォーターボール出すからな。」
俺はウォーターボールを出してグリは水浴び、俺は顔をじゃぶじゃぶ洗ってスッキリ爽快だ。水浴びの補助をポヨに任せて俺はグリの朝食の支度。まぁ、作り置きを出すだけなんだけどな。今日のグリの朝食は俺特製のおいしい水で炊いたお米とサルビーフッヘンの塩焼きに卵焼きとサラダに豚汁だ。忘れちゃいけないデザートは色々なカットフルーツをシロップ漬けした物を皿に出してやる。なんだか、タンパク質が多めな食事な気がするが、気にしない気にしない。
「よぉーし。準備できたぞ。これ、置いておくから食ってくれな。俺は宿の朝食を食べてくるから。食べ終わった皿はポヨに渡して綺麗にしてもらってくれ。」
「うむ、わかった。」
「じゃあ、後でなぁ〜。」
俺的にはせっかく朝食も付いているのだから、ちゃんと食べたいんだよな。なんか勿体無いじゃん? それに土地によって料理も違うって聞くし、ここはリッチモンド領じゃないから、また違うものが味わえるかもしれないので楽しみだ。
俺は中庭からアーチをくぐって広間へと入り空いてる席に適当に座った。するとウェイトレスのお姉さんが何も頼んでいないのに料理を運んできた。どうやら泊まり客は料理がすでに決まっているらしい。目の前には大きな白パンと塩っ辛いベーコンが入った野菜たっぷりのスープと川が近いからだろう、川魚の塩焼きが出された。そうか、あの行きで嗅いだ美味しそうな香りはこのスープだったんだな。俺は一口スープを飲むと野菜の旨味が口の中に広がった。うん、ベーコンの塩分が野菜の甘みと旨みを上手く引き出してるな。これはなかなかイケるぞ。こっちの魚はどうだろう。魚を食べると、見た目は全然違うのに鮎の味がした。おお!旨いなこれ。俺は素朴だがどこか懐かしい味をしっかり堪能して腹もすっかり満たされた。
「あ〜食った食った。よし、行くか。」
俺は食事を食べ終えて席を立ちグリたちの待つ小屋へと向かった。今日は市場へ行って少しだけ買い物をする予定だ。良い品とめぐり逢える事を期待しながらグリとポヨと三人?で市場へと向かう。
読んで頂きありがとうございます。
更新ペースが遅くなります。




