100.出立
とうとう出立の日がやってきた。
マーガレットさんと打ち合わせ後、彼女は迅速に行動しデザイナーさんへ内装のデザイン画の発注から新規従業員の募集と飲食店や商品の価格調査の頼んだ事全ての段取りを済ませてリストにまとめてきてくれた。
なんて仕事の早い人なんだろうか、尊敬する女性だ。
もちろん商人ギルドのキャサリンさんもかなり協力してくれているそうだ。
デザイン画の方は流石に部屋数が多いためこの日までは当然間に合わなかったが店舗の事もあるためザマゼットに到着しても週に2日ほどは転移でリッチモンドに戻る事になっている。やはりそうしないと色々進まないし建築だってしなきゃいけないからな。
商品の単価などについてはキャサリンさん提供の資料だそうでかなり詳細に記されたリストのおかげでとてもわかりやすく今後の参考になる。ちなみにこれは求めれば誰でも閲覧できペニーさえ払えば写しももらえる。さすが商人ギルドだ。
内装のデザイン画が上がってきて気に入ったら、それで建物を建てて内装工事に入ってもらうつもりだ。以前とは違い俺の住居スペース以外のデザインを約三階建て分で単純に5件分の店舗プラス託児室と休憩所3階分で建物一階部分だけで800平米の面積。
あぁ、ペニーがいくらかかることやら……。
小屋や道の舗装は俺とガーデナーさんでやるとしても物凄い事だよな。一棟ビルを建てるんだから。
そして仕事以外では長旅に備えて料理をいくつか追加した。ワイバーン丼にワイバーンのそぼろ丼ワイバーンステーキ、ワイバーンハンバーグ、ワイバーン ロールキャベツ、野菜のワイバーン巻きとワイバーンのローストビーフならぬワイバーンローストそして甘辛オーク丼にオーク肉じゃがとオークカレーにオークの味噌漬け炒めとオークの生姜焼き、鶏肉のトマト煮込みに唐揚げ、ハーブのハムに炊き込みご飯を用意した。
この前の3日間のマーニン島滞在中にサルビーフッヘンをまた捕まえたのでフライや刺身、塩焼きにバターソテーそれから簡単に調理もできるようにオニオンステーキソースや焼肉ソース照り焼きソースを用意してあとはいつもの定番、ミネストローネ、味噌汁、コンソメ、トマトソース、オーク汁、白飯にトラウトの塩焼きを具にしたおにぎりや卵焼きにウインナーを焼いた物も用意したりパンにレタスとトマトとチーズとパティーを挟んだハンバーガーやテリヤキチキンバーガーにサンドイッチやフライドポテトと簡単にパパッと食べられる軽食も用意。
これだけあればまた当分料理には困らないだろ。
もちろん途中で何か良いものを見つけたら料理ができるように、コンロや包丁などボビーさんグッズはもちろん持っていく。
さらにグリやポヨ、メェの為のマーニンビートも、備蓄をしっかり用意して準備万端だ。ダンジョンでも何が取れるか楽しみだなぁ。
新たな冒険に心躍らせつつ今日までなんとかやってこれた事を思い返し、神様からもらった魔法のおかげで異世界でも俺はなんとかやってこれてるよなってしみじみと思い、久しぶりに神様に感謝した。
『ありがとうございます。オーデン様達。これからの旅もどうぞ見守っていて下さい。いつもありがとう!』
そんな事を心の中で念じていた。よし、それでは行きますか。一番初めの目的地はメェを送り届ける為スノードン山に向かう。
「じゃあグリ頼むぞ。」
「うむ、参るか。」
俺達は城の一番広い初めてこの地に降り立った所に出て日の明けきらない朝もやの中を出立する。朝早く行くのは早く向こうに着けるようにという事もあるが街の人々をグリの巨大な姿を見せて驚かせない為だ。
「行くぞ。」
ここでは助走できるほどのスペースはない為グリが風魔法を使ってスーッと静かに浮かび上がり、巨大な翼を優雅に羽ばたかせて離陸する。助走をつけて行く時とは違い揺れもかなり少なく、まるで気球にでも乗っているかのようだ。
『凄いな、こんなに揺れが少なく飛び立つなんて初めてだ。』
『助走がつけられないのだ、魔力を消費するが致し方ない。』
そうか、これだけの巨体を持ち上げるんだ。かなりの魔力消費をするはずだ。それなら街外れから出れば良かったかもな。今後はそうしよう。
ファサッファサッファサッファサッ
翼の羽ばたかせ方が優雅なのもきっと周りの建物への配慮だよな。グリには悪い事しちゃったよ。
『気を遣わせて悪いなぁ。』
『フンッ。大した事ではない、そろそろ良いころであろう。しっかりつかまっておれよ。』
「うわっ!」
こうして無事リッチモンド城を後にし南に向かい出すと東の空から暁の光がゆっくり筋を伸ばし、俺たちを少しずつ照らし始める。まるで俺たちにおはようとでも言っているかのようだ。
『夜明けだな。何度見ても日の出は綺麗だな。』
『そうだな。闇の者共にとっては自分たちを食らう恐ろしい存在だがな。』
『たしかにレイス達からしたら強敵だよな。』
『ああ。』
俺はグリの翼に視線を向けた。
燃えるような赤い朝陽を浴びて美しく銀色の翼がさらに輝きを放っている。
俺はグリのこの美しい姿を何度見ても、ため息をもらす。
中身はただの酒好きなおっさんだけど、こうして大空を舞う姿はグリフィンの中の王なのだと思い知る。
さらに視線を落とせば下は緑の絨毯が広がっていた。
上空から見れば自然豊かな美しい大地だが、きっとこの辺りには魔物がうじゃうじゃいるんだろう。
大地だけではなく、もちろん空を飛ぶ魔物もいるが、まずグリフィンを襲うような魔物はいない。
弱肉強食がある意味しっかりしてるおかげで空の方が陸を進むよりは魔物との遭遇率も下がり安全そうだ。
────2時間後
『そろそろ休憩入れなくて大丈夫か?』
『もっと飛べるがまあ、山に入ってからだと面倒だ。川もあるし、この辺りで休憩して次は山頂まで向かって休憩するか』
『そうだな。そうしようぜ』
グリは相変わらずの急降下をして地面間際でくるんっ!と態勢を整えバサッバサッと地面に降り立った。
「お疲れグリ、水とジュースどっち飲む?喉乾いただろ?」
「うむ、まずは水だな。そのあと少しオレンジローズヒップが欲しい」
「あいよ!」
グリはピカッと体を光らせ獅子の姿になった。
この方がどうやら休憩しやすいようだ。
俺はグリとポヨの器を取り出して水魔法の水を注ぐと、二人に器を渡した。
「足りなかったら言ってくれ。また水を注ぐから」
「うむ、わかった」
そして俺はアイテムボックスからリスボンとロカイを取り出して日光浴させメェも呼ぶ。
「おーい、メェお外で少し遊べるぞ〜」
「ンメェ〜」
黒いたわしのような毛をしたメェが外に出てきた。
『少し休憩してまた飛ぶから近くにいてな。
あと、これ水な』
『ンメェ〜、わかったメェ』
俺は周りに結界を張り巡らせメェが他の魔物にやられないようにする。
ポヨは分裂して1匹メェの上に乗った。
どうやら護衛をしてくれるようだ。
しばらくするとカツンカツンと音がする。
音のなる方に視線をやるとホーンラビットが結界に向かって突っ込んできていた。なんだか懐かしい光景だ。
マーニン島ではいつも俺に突っ込んできては、"今日こそは負けん!"と言わんばかりに毎日勝負を挑んできた奴がいたなぁ。あいつ元気にやってるかなぁ。
俺はそんな事を思い出しながらのんびりほっこりしながらゆっくりと休憩を取り、グリから"そろそろ行くか"と声をかけられたので出した物や、メェをアイテムボックスにしまってグリの背中に乗った。
次の目標は遠くに見える山の山頂だ。
読んで頂きありがとうございます。少し更新ペースが今後遅れる事が出てきそうです。




