表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/24

Magic & Dimension 6

 右足を失い転倒したMOB。火だるまになって丘を転がってくる。俺は飛び退って避けた。転んだ俺のすぐ側を、ビーストは滑落していった。

 トドメを刺さなきゃ、立ち上がろうとした俺の目の前を、ノースフェイスのパクリブーツが横切った。良かった。コイツに任せよう。アロレじゃ火力不足だ。


「はくっ!」高々とスマホ掲げて、はるゆりは言った。


 いちいちスキル名言うとか、厨二病か、コイツは。


 丘の下に目をやると、ビーストを包んでいた炎が消え、代わりに白い凍結がその身を包んでいっていた。見る見る白くなってゆく。ビーストはもがくが、もう抵抗する力は残っていない。ビーストの体表を覆った凍結は、秒で浸透し、内部まで凍らせる。最後は液体窒素に浸けられたみたいに固まる。負け惜しみじゃないけれど、ビーストの抵抗力が高ければここまで上手くいかない。


「どうよ?」と得意げな笑み浮かべたはるゆりに。


「俺が削ったからだろ」と答えた。息が切れて、それだけ言うのが精一杯だった。

「まあ、頑張ったのは認めてやろう。もっとも。一番頑張ったのは豆さんで、一番の功労者はユウキだけどね」


 どうしてこんな上から目線なんだ、コイツは。


 俺ははるゆりの真似してスマホ掲げ、スキルアイコン、タップした。アローレイン。矢の雨が白く固まったビーストを襲う。ビーストは粉々に砕け散った。


「あ、ちょっと! なんか、あんたが倒したみたいじゃん」

「へいへい」


 丘を登り、俺とはるゆりは豆さんユウキちゃんと合流した。強風が俺たち全員の髪を、上着を、なびかせる。時折、立っていられないほど強く吹く。


「危なかったな」豆さんは言った。

「皆んなはぐれちゃって、一時はもうダメかと思いました」とユウキちゃん。


「九重でコレとか……」俺は溜息を吐いた。

「そうだな」豆さんが受けて言った。「高千穂はどうなってるんだろうな」


 天孫降臨の地、高千穂。今回の厄災の中心地。その昔神様が降りて来た伝承の地で、今は地獄の蓋が開いている。神が降り立った、そんな伝承が残ってるという事は、その地が異界と繋がりやすいのかも知れない。今回は変なトコロと繋がってしまった、本来繋がってはいけない世界と。そんな風に考えるのは安直だろうか。


「とにかく。いったん引き返そう。湯布院まで戻れば安全だろう。湯布院に一泊して作戦会議としよう。それぞれのオプション構成や装備を見直す必要がある」


 豆さんのいう通りだと思った。湯布院湯布院とはるゆりがはしゃいだ。コイツまだ観光気分なのかよ、俺は心の中で毒づいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ