Magic & Dimension 4
●
北九州空港、入ってすぐのメインロビー、ほとんど人が居ない。ガラガラだった。大きな階段が目に入る。並んでエスカレーターも。ちょうど女性が二人降りてきていた。二人とも二十代半ば。
俺は女性の容姿をどうこう言うのは好きじゃない。けれど。手前の女性はズングリムックリで、その後ろの女性はモデル級。絶対手前がはるゆりだと思った。
「アレじゃないですか?」俺が豆さんに言って、俺たち三人が目を向けると。
後ろのモデル級が反応した。嬉しそうに笑い、俺たちに向かって手を振った。まさか、と思った。ユウキちゃんが感激してこう言った。
「はるゆりさん綺麗。顔ちっちゃい、足長い、芸能人みたい」
その通りだけれど、コレがはるゆりなら、どうしてこんな女が昼も夜もゲームしてるんだ、疑問だった。
「やふー。会えて嬉しいぜぃ」ギルチャそのまんまのノリで目の前に来た女を改めて見た。
スキニージーンズに黒いインナー、豹柄のアウター、ど金髪に黒いキャップ。この自己主張の強さははるゆりそのものだった。
「会えて嬉しいよ。ギルマスさん」豆さんが手を差し出した。握手を返しながらはるゆりは。
「他人行儀過ぎぃ。あと、豆さん格好いいな。ユウキも可愛い。うちのギルドは顔面偏差値高いな」そして俺に目をやり「お前が下げてるな」と言った。
「うるせぇよ、てめえ」と俺は返した。
「はるゆりさん綺麗です。モデルさんみたい」と言うユウキちゃんに、
「一応そうなんだ。あまり仕事ないけど」少し照れてはるゆりは言った。
「へぇ。本当に芸能人なんだ」豆さんが感心した口調で言った。
「豹柄コート可愛いですね。もこもこで」
「コレ、安いよ。六千円くらい」
「ホントに」
「ユウキも可愛いの着てるじゃない。なにそれ。どこで売ってるの?」
女子の会話に俺は割って入った。
「メイクバッチリなのはまあ許せるとしても、なんでハイヒールで来てんだよ。これからどこに行くか分かってるのか」
俺のツッコミに、はるゆりはこともなげに答えた。
「うちみたいな弱小ギルドが行ったって何の役にも立たないに決まってるじゃない。ビースト退治は廃人さん達が頑張ってくれるわ。うちらはのんびり湯布院行って九重行って阿蘇山見て、あと、黒川温泉にも絶対行きたいわぁ」
この女、観光気分で来やがった! と思った。
「まあ、それにしても」苦笑いしながら豆さんが言った。「ハイヒールは無いな。どこかで靴を買おう。動きやすい服も必要だな。小倉のサバゲショップに戻るのは手間だし、ワークマンでいいか? この近くにあるから」
「ワークマンって?」
「作業服専門店だ。ドカチンのお店だな」
「うげげっ、どかちん? って何?」
「無法松でも良いならそこら中にあるぞ」
「なにそのパワーワードの連チャン」