Magic & Dimension 22
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右も左も戦闘中だった。パーティが戦っている。紅蓮の焔がビーストを包む。稲妻が走る。取っ組み合うグロテスクなビースト、暗闇に浮かび上がる。砕かれた建造物の破片飛んでくる。
右側に小さなグラウンドがあり、そこを占領して獣同士が戦っている。左側では古い商店を踏み砕いて。勿論パーティがスキルを浴びせている。ここだけじゃない。その先でも、あちこちで。戦っている。ここを抜けなければいけない。
ユウキちゃんを振り返った。
「ここが多分、さっきマップで見たなんとか街道。豆さん達と合流するにはここを抜けなきゃ」
ユウキちゃんは頷いた。
さっきアプリで確認した。この激戦区を抜けた先に豆さんとはるゆりのアイコンある。こっちへ向かっていた。すぐに閉じてゲームにログインしたから、今も生きて移動中かどうかは分からない。いや。最悪、二人のスマホが化け物の腹の中という可能性だって……。ギルチャにも応答ないのは、チャットする暇なく戦っているからなのか、それとも既に……、分からない。
俺たちはパーティの横すり抜けて走った。テイマーが使うビーストは圧倒的にメガザリウムが多い。メガザリウムvsゾッズケゥザゼル。メガザリウムvsジェルクッ・ドゥルド。メガザリウムvsゾズゾズクェツォル。援護する爆烈、稲妻、矢の雨、巨大な刃。こんな光景はどんな戦場でだって見れないだろう。
露天風呂でフレになったフルボッキさんからチャットが来ていた。チラ見した。こんな内容だった。
『よるおす君まだ湯布院か? 俺は今阿蘇だが。こっちはほとんどいない。湯布院異常発生らしい。ツイッター見ろ』
返信する余裕はなかった。勿論ツイッター確認する余裕も。
行く手塞ぐゾズゾズと見知らぬパーティの戦い。俺は迂回路を探した。けれど。一瞬で切迫した状況に。それは。
ゾズゾズの何本もある首の一本が、そのパーティのテイマの腕を食い千切ったから。牙がスマホごと砕いた。途端にテイマーのビーストは消え去った。壁が消えた。
腕を噛み千切られ、叫びながらゴロゴロと転がっている人、その悲鳴が、ゾズゾズの牙の内に消えた。頭を噛み砕かれた。飛び散る脳症、牙から滴る血。一瞬で総崩れになったパーティ。必死にスキル撃つメンバーを襲う8本の首。次々と牙にかかる人間。爆烈も稲妻も物ともせず、人を喰らうビースト。腹を裂かれ、頭を齧り取られ、次々倒れていく人々。
「クソ、逃げられない」俺はユウキちゃんに言った。言うと同時にスキル放っていた。高いダメ与えれば、敵のヘイトは俺に向かう。
俺のスピアを食らってゾズゾズは、一瞬足を浮かせて仰け反った。二撃目を放つまでのクールタイム。ゾズゾズの八本の首は一斉に俺へ向いた。
ネジ巻きを巻き上げるような効果音。ユウキちゃんのディレイ。さすが長い付き合い、以心伝心と思った。部位破壊で足を吹き飛ばしてくれ。ところが。
部位破壊の成功率はスキルLv7で50%、Lukによりプラス。ユウキちゃんのクラッシュはLv9でLukは女神の微笑みにより最高水準だが。
ネジ巻き音の後、無音。何も起きない。部位破壊失敗だ。
「ご、ごめんなさい」
ユウキちゃんは言ったが、ディメが常に部位破壊成功するなら最強職だ。「気にしない」と言って俺は二撃目を放った。槍を受けて一瞬足が止まった獣。けれど次の手は無い。スピアのクールタイムはアロレより長い。連写は出来ない。考えても次策が浮かばない、迫り来る化け物、その時。
俺の目の前の空間が歪み、まるで古いブラウン管の映像のように粒子の荒い姿が浮かび、次の瞬間破裂音と共に実体化した。俺の視界を覆い尽くし、ゾズゾズとの間に立ち塞がったのは。
銀色のドラゴン。クェルカツツだ。
目を見張った俺の背後で、格好いいセリフ。
「意外と早く会ったな」
まさかと振り返ると。ハネシタさんだった。スマホ片手にニッと笑っていた。
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ハネシタさんのクェルカツツがゾズゾズに食らいついた。ハネシタさんが挑発スキル立て続けに放つ。ゾズゾズの怒りのボルテージはマックスに。猛然とクェルカツツに牙を剥く。
生き残りの爆烈ウィズがスキル撃った。紅蓮の焔が二頭の獣を包む。俺とユウキちゃんもスキル撃った。
急ごしらえのパーティだったが揃っていた。バランス良い。生き残りの爆烈ウィズ。俺とユウキちゃん。そして完璧な壁役ハネシタさん。
「上手いぞ、どんどん削れ」ハネシタさんはそう言っているけれど、爆烈ウィズのスキルが自分のクェルカツツを巻き込むことを快く思っていない。顔見たら分かる。けれど今はそんなこと言ってられない状況。
ユウキちゃんがMPガンガン補填してくれる。おかげでガンガンスキル撃てる。
パーティの形になっている、これなら勝てる、俺は独りごちた。
一人の時は怯え逃げ惑うしかなかった。けれど今は。捕食される側から、狩る側へ。俺たちはパーティで、各々有効な武器を持つ。協力して狩る。まるでリアルモンハン。
大昔石槍を持って熊と戦った原始人はこんな気分だったろうか。ただ、俺たちは自分たちの武器の正体を、何がどうなってこうなっているのかを、皆目理解してないけれど。
背に何本も槍突き立てたゾズゾズクェツォル、激しい爆烈がその身を包む、食らいつくクェルカツツ。
勝てる、行け行け、一気呵成だ。勢いづいたその時。
クェルカツツの姿が急に消え、場にそぐわないアイフォンのコール音、煎茶、鳴り響いた。一瞬呆気にとられたが。何が起こったのかは瞬時に分かった。
ハネシタさんに電話がかかって来たのだ。まあ……、電話で戦っているのだから……、こんな事があっても仕方ない……。




