Magic & Dimension 16
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「雲がここまで広がった。ちょっと見て回ったが、もう誰も残っていないようだ。俺たちは取り残された」豆さんは口早に状況を説明すると、「急いで支度しろ」そう言って自分も着替え始めた。
俺は頭がガンガンしていた。時計を見た。午前3時になるところだった。寝たのが11時過ぎだったから38時間ゲームした後の3時間睡眠。状況は理解できたがフラフラだった。非常ベルが輪をかけて頭を痛めつける。
「戦闘服に着替えてきたぜぃ」そう言ってはるゆりが飛び込んできた。どうしてコイツはこんなに寝起きがいいんだ……。ユウキちゃんも着替えてきていた。どうやら俺が眠っている間に、皆んなは既に準備していたらしい。迷彩BDUの中にパーカ着込んだユウキちゃん。ボア付きフライトジャケットを手に持っている。スキニージーンズに白いセーター、MA1はおったはるゆり。
「お前、つなぎはどうしたんだよ」
ムフフと笑ってはるゆりは答えた。「やっぱり私はコレかな、って」黒キャップを斜めにかぶってみせた。「でもほら。靴はちゃんとジェネリックノースフェイス」
いやいや。こんなお喋りはどうでもいい。
「どうして起こしてくれなかったんだ」
「起こしたんですけど、全然起きてくれなくて……」ユウキちゃんに言われて、
「全然いいよ。気にしないで」俺は答えた。
はるゆりに言われた。
「急げよるおす、モタモタすんな」
俺は言い返した。
「後ろ向いてろよ。ジーンズ穿くから」
ユウキちゃんがクルリと背を向け、はるゆりも「貴様パンツを見せる気か。いいか、絶対見たくないから一秒で穿け」そう言って背を向けた。「い〜ち」と言って振り返った時、俺はギリギリでジーンズを引っ張り上げていた。
着替えながらもフラフラする。頭がガンガンして考えがまとまらない。非常ベルが喧しい。パーカーを着て、リュックの中に丸めて入れていたナイロンジャケットを引っ張り出した。荷物を減らしたい。コレを着て、今まで着ていたフェイクレザーのジャケットは捨てていく……?
俺は着替えながら窓の外を見た。分厚い雲が重く垂れ込めている。雲というより渦巻きだ。筆で書いたように波打っている。暗緑色、玉虫色に光り、墨を垂らしたような闇の中に雲の形を浮き上がらせている。
そして。眼下。湯布院の街のあちこちで、火焔や稲妻光る。火災や自然現象の雷じゃない。スキルの灯りだ。爆烈炎呪、龍撃呪。光るたびビーストの姿朧に浮かび上がる。グロテスクな巨大獣を覆う紅蓮の炎、撃つ稲妻。空一面から稲妻ほとばしり一つとなって落ちる。落天雷呪だ。戦っている。パーティが。街のあちこちで。
「これって……」ガンガン疼く頭に鈍い衝撃を喰らった。
降臨が無数にいる?
「どうしてこんな……」思わず手が止まった俺。
豆さんに急かされた。珍しく焦った口調だった。当然かもしれない。
「急げよるおす。皆、湯布院を脱出してる。取り残されるぞ」




