空想が現実となった原因の始まりの開始
ここ数日の間、この街では雨が降り続いている。
なんでも地球の反対側で起きた異常気象が日本にまで影響を与えているらしい。
ジメジメとした部屋にいることに対して嫌気がさし、ちょっとだけベランダに出ることにした。
立て付けの悪い硝子戸を開けると、そこにはどんよりとした空が広がっていた。
雨空を見上げていると何かが降ってくるのが見えてきた。
遥か上空から重力にしたがって一直線に落下を続けているそれは、なんとも形容しがたい見た目をしていた。
このまま地面に落ちてしまう、そう思った瞬間であった。
それは突如として眩い閃光を放つと、それまでの自由落下が嘘のように空中で静止した。
足元まで伸びる銀髪をなびかせた少女は閉じていた目をパッと開き僕をじっと見つめている。
そのまま見つめ会うこと数秒。
かかわらない方が良いと考えた僕は彼女から目をそらした。
そしてそのまま部屋に戻ろうとして━━
「ねえ」
いつの間にか背後に立っていた少女に肩を叩かれた。
「こんなに美しい私を見て目をそらすなんてあなたは頭がおかしいわ」
こいつ頭おかしい。
確かに美しいか美しくないかで言えば美しいのだがそれを自分で、しかも初対面の人に言うのは常識では考えられないだろう。
もしかするとあれか。
こいつは頭がおかしいと言う理由で宇宙から追い出されたかわいそうな宇宙人なのではなかろうか。
そう考えるとさきほどの意味不明な現象にも説明がつく。
だとしてもなぜこんな宇宙人が僕のところへ来たのであろうか。
いや、こいつの頭はおかしいのだからそこに理由など存在しないのかもしれない。
「さっきから何一人でブツブツ言っているのよ。もしかして、私が可愛すぎて声をかけづらいの?まあそれも仕方ないわね」
俺はそれを冷静に無視して部屋に戻る。
あと、硝子戸の鍵を閉めた。
これでもう安心だ。
と思ったのもつかの間。
「ねえ」
彼女は硝子戸を乱暴に叩く。
「開けて」
無視しよう。
「聞こえないの?」
すると彼女は右手からレーザーのようなものを光らせた。
その光線は薄い硝子を一瞬で貫通し、僕の頬を掠めてそのまま後方へと進んでいった。
部屋の壁に到達した光は「こんなに美しい私をベランダに放置するのはあなたにはもったいないわ。開けなさい」と言う文字を描いた。