初めての学校
この学校はずいぶんと古いみたい。
でも厳しいのかな、掃除が行き届いていて廊下もすべすべしてる。
すごくいい環境のはずなのに、ここはなぜか・・・・
息苦しい。
高校生の教室が集まっているこの階はなんとなくピリピリしてて・・・・
なんかすっごく嫌な感じ。。
教室をのぞくとみんな座って参考書と睨めっこしている。
へ、馬鹿じゃないの!!!
朝っぱらからおしゃべりもせず、漫画も読まず。
部活の朝練は?外で遊ぶとかないの?
あたしが教室を覗いて顔をしかめていると後ろから声をかけられた。
「おっはよ〜めぐ☆」
ぼさぼさのショートカット、三日月みたいな眼、短い睫、セルの眼鏡、ひざ下6cmはありそうなスカート、短いソックス。身長約155cm〜157cmてところかな。
あたしの記憶によるとこいつは有田雅代だったと思う。
あだ名はなし。がり勉なのに勉強が出来ないって言う痛い人。
本人もさえないやつなら、友達もさえないやつってことね。
「お、はよ、まさよ。」
「ねぇ、めぐ、悪いんだけどさ、化学のノート貸してくんない?
私、授業はすごく面白いと思ったんだけど、なんか途中でお腹痛くなっちゃってさぁ。
我慢してたら先生に保健室行けって言われて〜。
あ、あとこないだ借りた歴史のノートなんだけど、家でいろいろとあってまだ写してないのね。だから・・・・・・・・」
「あ、もういいよ。いまノート持ってくるから。」
言い訳ばっかり。心の中で何思ってるんだか。
「はい、どうぞ☆」
「あ、ありがとうめぐぅ〜!!いつもほんとごめんねぇ」
これ以上ないくらい優しい微笑を浮かべ、じっと雅代の眼を見つめる。慌ててあの子が逸らそうとしても駄目。逃がさず、そのままじっと覗き込んむ。するととだんだん彼女が二重にぼやけて見えてくる。実体としての雅代のから心だけが浮いて、喋ってる感じ。
そう、これがあたしの心の覗きかた。ああ、聞こえる、聞こえる。
『めぐってほーんと便利な友達。自分でノーととらないであの子のノーと貰った方がよっぽど楽だし、効率良いし。このままあの子のノート焼き捨てちゃおっかな〜。そしたら哀れな彼女は勉強できなくって再試になるかもね。あは、こういうのって最高〜☆たまにはあの子も敗者の屈辱を味わったほうがいいもんねぇ〜』
うわぁ・・・・。
気分が悪くなる。反吐が出そう。
友達面してよくそこまであくどいこと出来るね。
ある意味尊敬しちゃう。
嫌気が差してばっと眼を逸らすと、彼女は我に返って「ほんとサンキュー」と言って離れていった。
有田雅代か。今度ノート取り返さなくっちゃ。
最初に会った友達があれなんて、ついてないわぁ。
・・・・でも、この後あたしは両手の指では足りないほどたくさんの、嫌な友達面したやつらと会わなきゃなんなかったんだ。
**************
あたしの席は一番後ろの窓から3番目。
うん、机の中も綺麗でいい感じ。
友達は・・・・・・
首を回して教室をぐるりと眺める。
あ〜あ。みんな朝から英語ばっかりやってる。
・・・・そんなにやんなきゃ出来ないほどお前らアホなのかよ。
ま、進学校だからしょうがないのかもね。
今のうちに時間割の確認しとこ。
今日の時間割は・・・・
一時間目:国語
二時間目:数学1
三時間目:英語
四時間目:数学2
〜昼休み〜
五時間目:家庭科
六時間目:家庭科
七時間目:経済
ふ〜ん。よかった、貸しちゃったノートの科目がなくって。
いつ取り返そうかな。
頬杖をついていろいろと考えてると、また声をかけられた。
「おはよう、山崎さん。」
ねちょねちょした嫌な甘ったるい声。
ふりむくと黒いロングヘアーにミニスカートの子が、「あたし可愛いでしょ?」って感じの笑顔を振りまいて立っていた。
ああ、声と顔がぴったりマッチする。しかもさえない取り巻きを三人連れている。
「お、おはよう。」
「今日の英語のテストなんだけど・・・・・勉強した?」
「一応、ね。」
ぶっちゃけしてない。英語なんて、勉強しなくてもわかるもん。
でも彼女・・・・確か溝口さんだったと思うんだけど、はその答えに満足しなかったよう。
口の端をすっと上げて視線をきつくする。
「そんなこと言って、頭にたくさん詰め込んであるくせに。
まあ、いいの。私の用件はね・・・」
溝口さんの目が怪しく光る。
そして私の耳にそっと囁く・・・・
「へっカンニングの許可???」
「知恵は共有、幸せも共有しなきゃね。
あなたは満点、私も満点。二人で幸せ、ね?」
「なんでそんなことあたしがしなきゃなんないのよ。」
「あれぇ、この間のテストのときは快諾してくれたのに。
いいの?あのことみんなにばらすよ。」
けっ、小学生レベルの脅し。多分アリスはこの手に弱かったんだろうな。
でもあたしは違う。あたしは彼女よりずっと強いんだから。
「ん〜と、あのことって何?忘れちゃったぁ。」
満面の笑顔を向ける。もちろん眼からは強い光を放つ。
「ほ、本当にいってもいいんだね?
クラスみんなを敵に回すことになるのよ?」
あ、焦ってる、焦ってる。
取り巻き連れてるくらいなんだから、きっとクラスの人気者なんだろうな。
でもね。あたしに勝てるわけはないよ。
さて、あたしに脅しをしようとしたその根性叩きなおしてやろうか。
「忘れるようなことなんて言われても構わない。
それで困るのは・・・・・あなたなんじゃないの?」
「わ、わ、わ、私がどうして困るのよっ。」
「あれぇ知らないの?カンニングって校長室呼び出しなんだって。」
「あ、あなただって同罪じゃない!!!」
「何言ってるの?あたしはちょっと手が滑っただけだから。」
「うっ」
返答に詰ったらしい。すると取り巻きたちが攻撃を開始した。
「瑠美子様になんてこと言うのよ!!」
「あなたなんて勉強しかとりえがないんだから、瑠美子様にそれぐらい手助けをしたっていいじゃない!!」
「そうよ、そうよ!!」
うるさいやつら。何が瑠美子様だ。
ふんと鼻を鳴らして私も攻撃開始。
「じゃあ、聞くけど、あなたには『瑠美子様』にお仕えする以外にとりえがあるわけ?
瑠美子様、瑠美子様って、あんたたち金魚の糞みたいね。
そんなに人に尽くすのが好きならもっとましなこと言えば?
自分で勉強しないで人のテスト覗いてしかハイスコアを取れないなんて、ただのアホじゃない。
将来あなたたちのだ〜い好きな『瑠美子様』ご自身が困るってわかってるわけ?
ホント、あんたたちって馬鹿ね。」
溝口瑠美子とその取り巻きの顔が真っ青になる。
だって、昨日までさえないただのがり勉少女だった山崎恵美が、いきなり自分たちに張り合おうとしてるんだもんね。
彼女たちは何よ、とか、ふん、とか言いながら離れていった。
最初から牙むきすぎたかなぁ。
でも、大丈夫。あたしは何でも出来る。
人の心掴むのも、怖がらせるのも、尊敬させるのも、そして心を覗くことだって出来る。
みんなに愛されて、尊敬されてやる。
アリスのように。
学校の様子は意外と書くのがめんどくさいです(汗)
高慢な恵美ちゃんを書くのは楽しいですけど(笑