見えない手
更新遅くなってすみません(汗
ナンデコンナコガ・・・・
・・・カミナンテヘンナイロ
キットアクマノイロヨ・・・・
キエテシマエバイイノニネ
ソウネキエテシマエバイイノニネ
キエロ
キエロ
キエテシマエ
キエテシマエ
・・・誰!!??
寒気がして飛び起きる。
眼をがっと開くと、目の前にもやのようなものが渦になっていて、霧の中にいるみたい。
でも、ときどきちらちらと見える家具やなんかは、ココットとシルヴァ(とアベル)が用意してくれた部屋に違いない。
ふと、窓のほうに眼をやるとカーテンが風に揺れている。
あぁ、窓開けっ放しで寝ちゃったんだ。
霧が出てるんだ、きっと。
ちょっと安心して、安らかに二度寝をしようと・・・・・
「ぐっ・・・・・」
何か冷たいものに首を掴まれた。
尋常でない力で締め上げてくる。
「だ・・・れ・・・・」
「アナタナンカキエテシマエバイイ。
ワタシタチトオナジヨウニ・・・・・・
アナタハアリスニフサワシクナイ・・・・・
キエテオシマイナサイ・・・・・」
「・・・っ!!!!」
背筋が冷たくなるような恐ろしい単調な言葉。
でもその言葉が泣きたくなるくらい悲しいのは何故??
私は今わけのわからないものに殺されそうになっているのに、
どうして目頭が熱くなるの・・・??
「あなた・・・だれなの・・・っ・・・」
「アア・・・・・
サミシイヨウ
ツライヨウ
サミシイヨウ
サミシイヨウ
アァ
ナラナケレバ・・・・・・
ソウ、コンナトコロニコナケレバ・・・・・・
ソウダ・・・
ソウヨ・・・
コンナコキエテシマエバイイノ・・・
イマスグニ・・・・・・・・・・・・」
首にかかる力が強くなる。
いくつもの声が部屋をさまよう。
何でこんなことに・・・??
これは何なの・・・??
いくつもの疑問が私の頭の中に浮かぶ。
ああ、でも意識も朦朧としてきた・・・・・
もう・・・・・・だめかも・・・・・・・・
「たすけて・・・・・・・・・・」
**************
心を落ち着かせる作用があるというバームミントティー。
僕の大好きなお茶の一つだ。
夜、みんなが寝静まったころに一人仕事を片付けながらこうして一息入れるのが僕の日課だったりする。
それにしても、明日あの人にアリスを会わせるのか・・・・・
僕は今日の出来事を思い出していた。
「あ〜シルヴァ、待ってたのよ☆新しいアリスはどんな感じの子?
年は?顔は?髪は?スタイルは?性格は?」
「いきなり呼び出しておいてそれですか、イザベラ。何で案内人の僕がわざわざアリスの傍を離れて、あなたに彼女の説明をしなくちゃいけないんです?」
「怒っちゃだめよ、シルヴァ☆怒りんぼは嫌われちゃうわよ〜」
「・・・・・・」
読者の皆さんに注意していただきたいのは、僕はここで二の句が継げなかったわけでも、あきれ果てて言葉が出なかったわけでもない。ただ、このぐだぐだ女王、イザベラに無言で怒りを表しただけだ。この人にイラつくのは今回が初めてではないのだが。
「えっと、明日アリスちゃんをここに連れてきてくんない??」
僕の無言の怒りが通じたらしい。といっても全く堪えてはいないようだが。
「『すぐにアリスに会っちゃうと、女王としての威厳とか、ミステリアスな感じとかが出なくって嫌!!』って言っていたのは誰でしたっけ?」
「気が変わったの!!!!細かいことにこだわるんじゃない、白兎!」
「どこまでも勝手な人ですね。」
「そういえば・・・・」
急にトーンを落として顔をぐっと近づけてくる。
僕のつっこみは無視する方針らしい。
「アリスにあの抜け道の話はしたの?」
・・・・・・抜け道。
「そんなの、アリスに使わせません。」
あれは使ってはいけない、狂気の産物だから。
「でも・・・・・」
「抜け道を知ると気も緩みますし、あんなもの最初からないものとして考えたほうが良いんです。」
「そ、そうね。そうなのよね。」
心配そうなイザベラ。彼女はきっとアリスを気に入るだろう。何としても守りたいと思うだろう、僕らと同じように。でも、あれだけは駄目なんだ。
僕は自分に言い聞かせて、家に戻ったのだった。
*************
あれで良かったのだろうか。
いけない、一人になると同じ問題をいつまでもぐだぐだと考えてしまう。
そんなのに大して意味はないのに。
ちょっと気分を変えよう。今度は久しぶりに珈琲でも入れようかな。
そう思って立ったときだった。
「助けて・・・・・・・」
小さな小さな消えそうな声。
ちょっと離れたところから・・・・アリスがいる部屋の方で聞こえる!!!!
そう思うよりも早く、足はその方向へ向かっていた。
僕の自室からアリスの仮部屋に行くには一回外に出なければいけない。
客室に一回通したのを今更ながら後悔しながら、三日月のみの明かりの中で走る。
・・・あれ?
僕の前を走る影。
長い耳に長い髪の毛。あれは
「ココット!!!」
「あ、シルヴァ!!」
「アリスに何かが・・・??」
「私、何か悪い気が入ってくるのを感じたの。すごく寒気がしたわ。
で、その位置を特定してみたら、何とアリスのいる部屋からだったの。
屋敷には入ってこられないように、バリアを張っていたはずなのに・・・・・・
窓を開けて寝ないように注意しておくべきだったわ。」
すごく悔しそうに唇を噛むココット。もちろん僕らは走りながら話している。
「僕はアリスの『助けて』っていう声を聞いたんです。あ、ここですね。」
ドアを開け放とうとする僕の手首を彼女が掴む。
「放してくださいよ!!アリスが危ないんですよ!!」
「今ここで入っていったら更に危ないわ。相手は多分、昔のアリスの魂よ。かなり性質が悪いわ。外からこの部屋にバリアを張るから、私が良いって入ったらドアを開けて。私が幻影を使っておびき寄せている間に、あなたはアリスを連れてリビングに行って。」
「・・・わかりました。」
ココットはこの国有数の魔法使いだ。彼女ならわけのわからない霊にやられることはないだろう。でもアリスは・・・・・
ココットは眼を閉じて呪文を唱え、手を動かしていく。すると、だんだん中が騒がしくなってきた。
手が汗でじっとりと濡れている。僕は案内人なのに・・・・彼女を守らなきゃいけないのに・・・・どうしてこんな時に何にも出来ないんだ・・・!!!
「シルヴァ、開けて。」
冷静なココットの声。そうだ、自分を嘆いているばかりじゃ何も変わらない。
「いきますよ」
さっとドアを開き、部屋の中央に向かう。
霧のようなものが部屋に立ち込めていて、視界が悪い。
ああ、でもベッドにぐったりとなっているのは
「アリス!!!!!!!!!!」
***************
あれ、この声はシルヴァ・・・?
首を絞めていたものがびくっとして離れる。
「ちょっとしばらく我慢していて下さいね。」
ひょっと俵担ぎにされる。
「マテニゲルツモリカ。
ニガサナイ。
ニガサナイゾ」
「あなたたちの相手は私よ。」
凛とした綺麗な声。
「えっココット?!」
「彼女はきっとうまくやってくれるでしょうから、僕らは逃げますよ。」
嘘でしょ??ほっといていいの??
彼は困惑、というよりは驚いている私をしょって、すごいスピードで走り出した。
***************
霧のような中、一人微笑を浮かべて立っている少女。
彼女はふっと艶かしく笑うと唇を開いた。
「アリスに手を出したものは誰であれ、許さないわ。
・・・・・たとえそれが、昔のアリスであっても。」
「ウルサイ。
オマエニナニガワカル。
キエタクルシミ。
サマヨイツヅケルツラサ。
アア・・・・」
「そうやって自分を哀れんでるからいつまでも苦しみが続くのよ。
大体、抜け道を使えば消えることはなかったはずよ。」
「ソンナノ、ワレラノジソンシンガユルサナカッタ。
イマハ、ドウシテアノテヲツカワナカッタカト、コウカイシテイル。」
「ふぅん。色々と考えてるわけね。でも後悔したって何にも生まれないことくらいわかってるでしょ。いつまでもめそめそしてて馬鹿みたい。
まぁ、いいや。トーキングタイム終了。
先代アリスに昔のこと聞いとくのもいいと思ったのよね。
じゃあ、可愛そうな魂たちを清めてあげましょう・・・」
ココットの瞳がきらりと光る。
手を高々と掲げ唇が動き出す。
もはや霊たちが逃れるすべはない。
どんなにあがいても、ココットを傷つけようとしても無駄なのだ。
「エーリアグーシュナリアテント、アムエスティムオナリャボルトナ
彷徨える魂よ、今汝を解き放たん。
汝は黄泉の国の業火にさらされ、清められるべし。
長い苦しみの後に汝の心清くなるべし。
エーリアグーシュナリアテント、アムエスティムオナリャボルトナ
エーリアグーシュナリアテント、アムエスティムオナリャボルトナ!!!!」
断末魔の声の後、一瞬辺りが金色に輝き・・・・・・
何事もなかったかのように部屋は再び眠りについた。
「ココットちゃん、大成功☆」
***********
「ねぇ、シルヴァ!!ココットは大丈夫なの?あれは何なの?」
「落ち着いてください、アリス。ココットは強い魔法使いです。
あんなものに負けたりはしませんよ。」
「へ??」
あの、超美少女が強い魔法使い????
「彼女の力をみくびっちゃいけません。アベルなんて前にココットを怒らせて蛙にされてましたよ。」
すごい・・・・でも蛙に変えるとか古典的だなぁ。
っていうか標的はシルヴァじゃなくってアベルなんだね(笑)
「そういえばアベルは?」
「彼には僕らみたいな発達した耳もありませんし、ココットのような魔力もないので、多分今頃夢の中ですよ。」
「ふふっ」
彼らしい。
「僕はアリスの声を聞いて、慌てて走っていったらココットに会ったんです。
彼女は悪い気を感じたとかで。」
「そうなんだ・・・・・・」
こんな真夜中に2人に心配かけて。
私ったら一人じゃ何にも出来ないのに。
「アリスはあの霊に何をされていたんです?」
「首を絞められて・・・・・
すっごく怖かった。
でも、なぜかすごく悲しかったの。
何でかわからないんだけど、他の人の気持ちが自分の中に流れ込んでくるみたいな感じだったの。ねぇ、あれはなんだったの?」
「名前を見つけられなかった昔のアリスたちです。
もちろん、全てのそういうアリスたちが怨念を持っていつまでもうじうじと後のアリスにちょっかいを出すわけではありませんが。」
「ねぇ。私も名前を見つけられなかったら消えちゃうんだよね?
あんな悲しい辛い思いしたくないよ・・・・・・
私いやだよ・・・・・
ずっとここにシルヴァとココットとアベルとそれからたまにロイ君と住んでたいよ。
初めて来た場所で初めて会った人たちだけど、初めて居場所が出来たと思えたんだもん。
そんなの・・・・・いやなの・・・・・・・」
涙がなぜか止まらない。
まだまだ時間はあるはずだけど、でもなんだかすごく怖くって。
「アリス。」
顔を上げるとすぐ近くに彼の顔。
「何があっても僕らが守りますから。
絶対アリスが消えないように、守りますから。
だから、涙を拭いてください。」
「ひっく、ありが・・・・と」
「明日は女王がアリスに会いたがっているので、お城へ行きましょう。」
「女王??」
「きっと気が会うと思いますよ。」
まだ会っていない人がこの国にはたくさんいる。
知らなきゃいけないこともまだまだたくさんある。
私は涙を拳で拭って、彼に笑顔を向けた。