二人の一日
何のために生まれて♪
何をして喜ぶ♪
わからないまま終わる♪
そんなのは嫌だ♪
皆さんご存知のア○パ○マ○のテーマソング。
確かにかわいい。
かわいいが。
これで朝起きるのはかなり嫌だぞ!!!!
趣味悪いよ、山崎恵美・・・否アリス。
頭の中でエンドレスで流れ始める。
明日から他の曲に変えなければ・・・・。
「めぐみ〜早く起きてらっしゃい!!今日は英語のテストでしょう!!!!」
「は〜い!!」
そうだった。今日は英語のテストだった・・・らしい。
大丈夫。あたしは見たもの全てを瞬時に記憶するという能力を持っているから。
あ、今嘘だと思ったでしょ。
ほんとだよ。
あたしの記憶力は宇宙一なんだから!!!!!
「めぐみ〜何してるの!!早くいらっしゃい!!!」
「早く来なさい。今日はテストなんだろう?」
うわ、煩い両親。
っていうか朝から二人してぎゃーぎゃー子供に文句つけて・・・
馬鹿じゃないの。
「あっごめんごめん!!ちょっと考え事しちゃった〜」
極上の笑顔を振りまいて両親のところへ向かう。
「昨日はちゃんと勉強できたのか?」
「うん、ばっちり。」
「この間もそんなこと言っていたけど、98点だったじゃない。どこを間違えたのよ。」
「うんと・・・スペリングを一個。でも今回は大丈夫。満点取ってくるよ。」
「うん、当然だ。がんばれよ。」
「じゃあ、行って来ます〜」
「車に気をつけるのよ。忘れ物しないでね!」
小学生かよ。
っていうか満点逃したくらいでそんなごちゃごちゃ言うなっつうの。
あほくさ。
アリスの気持ちがちょっとわかった気がする。
しかし、全く違和感を感じてないのにも驚いたね。
自分の娘の変化にほんのちょっとだって気づかないなんて。
あの両親は娘じゃなくて、娘のテストペーパーが、娘の名誉が可愛いんだな。
あたしはそう見たよ。
これで満点持って帰れば自分の娘の出来栄えに大いに満足するんでしょ。
単純だね。
ま、大いに喜ばしてあげましょうかね。
****************
こちら三日月の国。
ただいまアリスちゃん質問タイム。
「そういえば、この国の人たちの本当の名前って何なの?
本当の名前っていうのがどうもよくわかんないんだよね。」
「そうだな、例えば俺の本当の名前は『アベル・マッドハッター』だ。この国の住民はみな、自分の本当の名前を普段から使っている。名前って言うのは呼ぶ人がいて初めて大きな意味を持つからな。アリスのもといた世界の人々は本当の名前を使わなくなってしまったから、忘れ去られるようになっちまったんだろうな。本当の名前って言うのは、生まれる前から知っている名前のことだ。魂の名前ってところかな。この国の子供たちは言葉がしゃべれるようになると、始めに親に自分の名前を知らせるんだ。僕の名前はアベル・マッドハッターです、みたいにな。」
へ〜不思議な感じ。
「名前は魂の性質を現すのよ。だから、名前とその魂の得意分野、つまり『役割』は切っても切り離せない関係にあるのね。」
そう説明したのはクッキーをつまむココット。
あぁ、ものを食べる姿が絵になる人ってうらやましい・・・。
私たちはあれからずっとお茶会を続けている。もう3時間くらい紅茶を飲んでいる気がする。
シルヴァはさっき、女王に呼ばれたとかいってぼやきながら出て行った。
「なんで案内人の僕がアリスの傍を離れなきゃいけないんですかね・・・」
とか言いながら。
「夕方までには絶対戻ります。アリスをよろしく。」
って言って、風のような速さで走っていった。
「ねぇ、アリス、今度はこのマカロン食べてみて☆」
「え、もうお腹いっぱい・・・」
「なんか言った?」
百万ドルの笑顔。
怖いよ、ココットちゃん。怖いってば!!!
これでもう8回目。美味しいお菓子ならいくらでも食べれると思ってたけど、
そして、ココットのお菓子は本当に絶品なんだけど・・・
流石にもう無理・・・。
助けを求めるようにアベルを見たら、こっちはニヤニヤ笑ってる。
「あ、ありがとう。」
満足げににっこり笑うとココットは私の前に色とりどりのマカロンを積み上げた。
「全部食べていいのよ☆」
彼女のmayはmustと同意義だ。
この3時間で私は学んだ。
とりあえず頂点のピンクからつまむ。
口の中に甘酸っぱい味が広がる。イチゴ味。
美味しい。
美味しいんだけど・・・
それを口に出してはいけない。
「もっとどう??」
と言われて、山がさらに高くなること間違いなしだから・・・。
「ただいま〜」
きゅ、救世主登場!!!まともなシルヴァはきっとこのマカロンを何とかしてくれるに違いない!!
「お帰り、シルヴァ!!!!!!!」
「どうしたんです、アリス。そんなに嬉しそうな顔して・・・」
私は目でマカロンの山を指し、訴える。
「あ〜ココットですね。良かったですね、美味しいお菓子をたくさん食べれて。」(にこにこ)
だめだ。
この国の人たちはどこかがずれているに違いない。
「アリス!!ものを食べている最中に立っちゃだめでしょ!!!」
「は〜い。」
諦めて大人しくマカロンにもう一度手を伸ば・・・・
「あれ?」
マカロンが消えた。
私の横にはネズミの耳のついた小さな男の子が幸せそうに寝ている。
口の周りに色とりどりのかすが・・・・
「ま、まさか、一瞬であの山を食べたんじゃないよね・・・??」
「あぁ、きっとそうですよ。ネズミはほとんど寝ているので食べられるときには何でも口に入れるんですよね。」
「そうそう、この前なんて寝ぼけて私のリボンを食べようとしたんだから。ほんと、びっくりしちゃう。」
あんまりびっくりしていないように言うところを見ると、いつもそうなんだろうな、この子。
「眠りネズミ君・・・?」
「そうそう、この子は眠りネズミの」
「ぼく・・・・・・・・・・・ロィ・・・・・シュ・・・ラ・・ン・・バー・・・・・」
「何言ってんだかわかんねぇよ、ロイ。アリス、こいつロイ・スランバーっていうんだ。」
「この家に住んでいるみたいなんですけど、いつの間にか現れていつの間にかいなくなるんですよ。」
「変なとこから出てくるしね〜。オーブンの中から出てきたときは焼いて食ってやろうかと思ったわ〜☆」
あの、ココットさん・・・怖いんですけど。
っていうかオーブンの中で寝ちゃうロイ君もびっくりだなぁ。
お腹すいてたのかな・・・・(笑)
「そういえば、アリス、部屋をまだ見せてなかったわよね?」
「へ、部屋??」
「ほら、今日からここがあなたのお家だから、自分の部屋も必要でしょう?
今日は準備が間に合わなかったから、ちょっと狭いだろうけど客室をつかってもらうわね。」
あ、そういえばシルヴァもそんなこと言ってたっけ。
「俺も掃除したんだぞ!!!」
「アベルは掃除ではなく暴れていただけでしょう。かえって僕らの仕事が増えたんですからね。」
「うっ・・・」
「アリス〜こっちよ〜」
あぁ、ココットさん無視の方向ですね。了解しました。
「何ぶつぶついってんのよ〜早くぅ〜☆」
「はぁい!!」
***********
「ここよ〜」
連れてこられたのは大きな白いドアの前。家のドアと似ててすごくお洒落。
「さぁ、どうぞ☆」
ぎぃっと音をたてて開いたドアの向こうは・・・
「うわぁ・・・・・・」
金色の縁取りのある大きめの窓に短めの綺麗なレースカーテン。
真ん中にはふんだんにピンクや白のレースやリボンが使われている大きな天蓋つきベッド。
他にも衣装箪笥やら鏡やら全てが白やピンクやレースやリボン・・・・
つまりかなり少女趣味のお部屋。
「可愛い・・・・」
「本当!!よかったぁ気に入ってもらえて☆これ、私の趣味なのよぉ〜衣装箪笥も見てみて!!!!」
観音扉をココットがガラッと開けると・・・
「部屋???」
「あぁ、衣裳部屋よ〜。とりあえず13着しかドレスの用意が出来なかったから、今度一緒に買いに行きましょう☆」
お姫様系のピンクのドレスや、真っ赤なタイとドレス、青いベルベットのドレス、若草色のドレスetc・・・が4畳くらいの小部屋に並んでいる。
「ココット・・・これって誰の?」
「何寝ぼけてるのよぉ!!全部あなたのよ〜」
「えっえっこんなに高そうなドレスばっかり「大丈夫こんなの安いから☆」そういう問題じゃなくって「アリス!!!!!!!」ひゃっはい!!」
「あなたはアリスなの。私たちの希望なの。太陽なの。
この国では経済的な問題っていうのはまずありえないのよ?
そんな国においてあなたが部屋だのドレスだのをいちいち金勘定して断ってたら、住民がみんな落ち込んじゃうわ。ここは大人しくもらっておいて、ね?」
ココットのすごい剣幕に押されてとりあえずうなずく私。
そうか・・・私だけの問題じゃないんだね・・・。
「ありがとう、ココット。」
「わかればいいのよ☆お風呂はこっちで、WCはこっちね。それから・・・」
**********
「ふわぁ」
思いっきりアホ面をしてベッドにダイブする。
ふっかふか。気持ちいい・・・。
あのあと、ココットに屋敷の中を大体説明してもらって、思いっきり豪華な夕食を食べて、
広い広いお風呂に入って、今に至る。
それにしても・・・と我が身体を見る。
何でネグリジェなんだ!!
ココットに「もっとカジュアルな感じのってないの?」
って聞いたら、「それが一番はだけてないわ★」と笑顔で言われた。
なんだ、その「はだけてないわ」って。
それを聞いたアベルが「うわぁ、アリス顔赤いよぉ〜あはは〜」
と言ったのも気に食わない。
こんなに至れりつくせりなんだから、ネグリジェぐらい我慢しよう。
自分に言い聞かせつつベッドにもぐりこむ。
疲れていたからすぐに寝てしまったような気がする。
風にカーテンがなびいているのに気づかずに。