Who am I ?
まず、この国は「三日月の国」といいます。
あなたのもといた世界とこの国とは違う世界です。まぁ、一言で言えば「異世界」ってことですかね。
この国はもともと、あなたのいた世界ではみ出し者だった僕らの祖先が作り出した世界です。
ざっと3000年くらい前の話です。祖先たちは見た目が普通の人と違うということで迫害されたわけですが、皆それぞれ一つづつ、異なった能力を持っていました。迫害に耐えかねた彼らは、住人個々の技術を最大に生かし、互いに支えあえる世界を作るために持てる能力をフルに使いました。その結果がこの国です。確かに桃源郷のようなところにはなりましたが・・・ここには太陽が現れませんでした。月も決して満ちることなく、かといって消えることもない。ただ、細い三日月が常に頭上にある。それがこの国の名前の由来です。え、ここには昼や夜がないのかって?いや、ちゃんとあるんです。太陽の姿が見えないだけで、きっとどこかから光は届いている。気候も、季節も存在する。しかし、祖先たちは何か物足りない気持ちに苛まれたわけです。
そんな時、どこかから少女がやってきました。見た目は普通でしたが、どこか寂しげな女の子だったそうです。彼女はアリス・リデルと名乗りましたが、それは彼女の仮の名前に過ぎませんでした。なんとあろうことか、彼女は自分の本当の名前を、そして自分の能力も忘れていたのです。
あ、アリス、質問は後にしてくださいね。
住民たちは戸惑う彼女を受け入れ、大切にしました。すると彼女は心を開き、もといた世界に馴染めなかったこと、どこか遠い別世界に生きたいと願っていたこと、三日月に見とれていたらここに来れたことなどを話してくれました。
三日月の魔力といったところでしょうかね。
そうして、彼女は住民たちにとってまさに太陽のような存在になりました。
しかし、アリスがやってきてちょうど一年たった日に、彼女は消えてしまったのです。
アリスの使っていた小物も、髪の毛一本だって残っていなかったのです。
住民たちは嘆き、悲しみました。国全体が殺伐とした雰囲気になり、もうこの世界も終わりのように思われたそうです。
すると、ある日、またどこからか一人の少女が現れました。アリス・リデルとは別人でしたが、境遇は似ていました。名前と能力を覚えていないところも。住民たちは彼女を『アリス』と呼び、慈しみました。
はい、最初のアリスのときと同じです、結末も。そうして3人の『アリス』が一年後には消えていきました。
しかし、4人目は違いました。最初の立場は同じでしたが、何のきっかけからか自分の名前と能力を思い出したのです、はっきりと。すると一年たっても二年たっても彼女は消えなかったのです。もちろん彼女だって生き物ですから寿命はありましたが、その前の3人のように存在が消えてしまうようなことはなかったのです。
それ以後も、この国の均衡が乱れるたびに新たなアリスが呼ばれ、ある者は役割を全うし、ある者は消えていきました。そして
「あなたも『アリス』なわけです。」
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うわぁすごい話。まぁ、ここが日本と同じ世界とは思わなかったけどね。確かに私、「おとぎの国」に憧れてたし。しかしすごい世界だなぁ・・・じゃなくって。
「シルヴァ、質問。本当の名前って何。能力って何。」
・・・質問はすぐにできないと気持ち悪いよ。ほんとに。
「アリスは前の世界でなんと呼ばれていたんですか?」
「あ、私としたことが自己紹介忘れてた(汗)山崎恵美、です。」
「その『山崎恵美』という名前はあなたの世界で生きるために仮につけられた名前に過ぎない、ということです。
本当の名前とは、親に決められるものではなく、生れ落ちる前から持っている名前のことです。あなたが二人いないのと同じように、あなたをあらわす本当の名前も二つとありません。」
「う・・・そ・・・」
正直、嬉しかった。
地味で平凡な名前が私みたいって思ってたから。
でも、自分も聞いたことないような名前なんて
「そんなのわかるわけないじゃん!!!!」
「何かのきっかけで必ず思い出せる筈なんです。それにヒントもちゃんとあります。アリスは何かに熱中するみたいなことってありませんでしたか?ずっとずっとやっていたいようなことって?」
いっつもいっつも勉強勉強勉強。試験前はもちろん試験後すぐだって勉強勉強勉強。
そんな私に熱中できることなんて・・・・
「あったはずなんです。ただ、この世界に来る衝撃で忘れているだけ。それがわかれば、名前も思い出せます。そして、その熱中できるものこそが、あなたの能力であり、ここで果たすべき役割なんです。まぁ、おいおいわかります。とりあえず、この世界を知ってください。みんなあなたを待っていたんですから。」
元の世界では決してかけられなかった落ち着いた温かい言葉。
この言葉にすがろうと、私は大きく頷いた。
説明下手でごめんなさい(汗)
次話で住民登場です。