あの世界
あたしはまたあの場所にいた。
気付くとあたしは淡いブルーの綺麗なドレスを着て、召し使いにメイクをしても
らっていた。
彼女はあたしと目が合うと、慌ててそらした。
あたしが怪獣かなんかだと思ってるみたい。
今日は何とか伯爵がいらっしゃる日。
心を覗くのがあたしのお役目。
すごく気が思い。
伯爵の心は大して面白くなかった。
娘はどうしているだろうとか。
美味しい食べ物は出るだろうかとか。
食事中は、このワインが最高だとか。
あのメイド可愛いとか。
そんな感じ。
伯爵が帰ったあと、それら全てをお父様に伝えた。
彼はみるみる真っ赤になり、怒号を発した。
どうやらあたしがちゃんと見なかったからいけないと怒っているらしい。
ずいぶん勝手な言い草だ。
伯爵がのんきなこと考えてるからいけないのに。
と、突然頬が熱くなった。
殴られた。
「来るんだ。」
あたしは怯えた子羊のように一二歩後退った。
「さあ、早く。来るんだ。」
彼はあたしの腕を乱暴に掴むと、自分の部屋まで引きずっていった。
あたしは何が起こるかなぜか知っていた。
彼の目がギラギラと怪しげな光を放っている。
じりじりとあたしに近づいて来る。
手に焼き鏝を持って。
そう。
彼の趣味はあたしをこうやってボロボロにすること。
こんなやつあたしの父親じゃない。
彼こそ化け物だ。
にやりと薄汚い笑いを浮かべ、あたしのドレスをめくりあげる。
金縛りにあったように動けないあたしは恐怖におののくことしか出来ない。
背中に焼けつくような激痛を感じ、あたしは叫んだ・・・・・・・
そしてあたしは気付くと布団に座っていた。
全身汗をびっしょりかいていた。
見たこともない景色なのに夢であたしは知っていて。
夢と笑い飛ばすにはリアリティーがありすぎて。
つじつまが合うような、合わないような。
何か・・・気持ち悪い。
本当に何なのだろう・・・・・・
答えの見えない問いだけが所在無さげにさまよっていた。