カイルの家・・・2
「アリスは明日は誰の家に行くんだい?」
「ハンプティーの家がまともでいいと思っていたんですけどね。あまりにも君のように
非常識な人に会っているとアリスが疲れますから。」
「ひどいや、シルヴァ。僕のことが好きで君がSだからってそんな言い方しなくたっていいじゃないか。」
「やめな、カイル。きもいぞお前。」
「(泣)」
「そいえば、何で私次から次へと色んな人のところを訪問するの?」
「それがアリスの仕事だからよ。」
「へ?」
「ほら、この国の人にはみんな役割があるでしょ?アリスはとりあえず本当の役割が見つかるまでは『アリス』としての役割を果たさなきゃいけないの。
アリスの仕事は住民全員に会って、楽しく過ごすこと。」
「ふ〜ん。何か仕事じゃないみたい。って言っても、私ココットとかアベルとかが仕事してるとこ見たことないんだけど。」
「失礼ねっ。私はこれでもちゃんと仕事してるのよ。ただ、薬剤師は一人でこもって仕事するから目につかないだけよ。」
「えっ、ココットって薬剤師だったの?!」
「知らなかったの?」
知らなかったのって・・・・誰もそんなこと教えてくれなかったじゃないか!!!!
「怒るな、アリス。心の叫びは俺がちゃんと聞いてやる。」
「余計なお世話よっ」
「にゃん。」
すぐにしゅんとなっちゃうし。塩を振られたほうれん草みたい。
「アリス〜俺だってちゃんと仕事してるぞ?」
「うっそだ〜!!アベルが帽子売ってるところなんて見たことないよ?」
「ば〜か。俺の仕事は医者だよ、医者。ココットが作った薬を処方したりするんだよ。」
「ええ〜!!!!アベルが医者???帽子屋じゃなかったの?」
「帽子屋―マッドハッターっていう名前は、暗に狂人を指してるんだ。俺の祖先はすごく進んだ医術を患者に施してたんだけど、それは宗教的な考え方から見れば、
狂ってるってみなされたんだよ。そゆことで、俺の役割は『帽子屋』。」
「三月兎も似たようなもんよ。三月になると兎ってちょっと興奮気味になるのね。そのことから三月兎って言う名前は狂人を指したりしたのよ。まあ、医術も薬作りも当時は異質なものだったから、狂ってると言われて排除されたわけ。私の祖先はこんな耳がついてたしね。」
「あ・・・・・そうなんだ・・・・」
ぜんぜん知らなかった。
彼らの名前にそんな深い訳があったなんて。
異質なものを排除して安定を保とうとする社会。
口先ばかりの「個性を大切に」。
そこから排除された人々が織り成す不思議な桃源郷・・・・・それが三日月の国。
そしてまた私も・・・異質な人で。
「何か・・・・ごめんね・・・」
「アリス何を謝ってるの?私たちはただ事実を語っただけよ?別にあなたに何かされたわけじゃないし。」
「それに俺らは生まれてからずっとこの国で生きてるんだから排斥なんてされたことないしな。」
「うん・・・・・」
「ほらほらそろそろ昼飯にしようぜ!!!カイル様特製ピザを作ってやろう!!」
「あはは、何それ!!」
「お腹すいたぁ!!」
三日月の照らす三日月の国。
私の役割は何なのだろう。