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M&S

・M&Sのメンバー


木戸星良(きどせいら):M&Sでヴァイオリン担当。最初に私に声をかけてくれたあの清純な感じの雰囲気の子。

石川沙織(いしかわさおり):M&Sでチェロ担当。こちらはまだ会っていない。

竹田円香(たけだまどか):M&Sでピアノ担当。グループのリーダーで、今朝星良と一緒にいた子。

そして私、山崎恵美ボーカル。


・M&Sとは


自分たちで作詞・作曲をするバンドに近い有志。癒し系な曲を得意とする。

二ヶ月に一回開かれる校内の音楽系有志共同コンサートに参加している。

名前の由来はみんなのファーストネーム。


・今度のコンサートは7月18日。ちなみに今日は7月2日。

つまりあたしはけっこうやばいってこと。


曲目

・For ever

・Tear

・それだけが伝えたくて


作詞は主にあたしっていうか山崎恵美と、木戸星良が、作曲はあとの二人が主にやってたみたい。







あ〜疲れた。一日人の心覗きまくって情報集めるの大変だった。


そして今活動教室に向かいながら集めたことを整理してみたのが上。


げっ。緊張してきた。何でだろ。

教室からは調弦をしている音が聞こえてくる。


ドアをガラガラと開けて入る。


調弦の音がぴたっと止んで、星良がにこっと微笑んで振り向いた。


三つ編みがふっと揺れて、濃い睫に縁取られた瞳が柔らかい光をたたえている。


ああ、百万ドルの笑顔。


その脇で机に必死で向かっている少女は今朝会った快活な感じの子・・・円香。


「はろ〜」


「あっ、めぐ!お〜っす。」


どうも宿題をやっていたみたいだ。

ポニーテールでスカートの短い彼女は、茶色の瞳を知的な光で煌かせている。


「あれ、沙織は?」


「まだだよ〜、いつも通り。」


あ、いつも遅いんだ。



・・・と、廊下が急に騒がしくなったかと思うとドアががらがらと開いて、大きな袋を抱えた子が短い髪を振り乱しながら飛び込んできた。


「おっ、遅れたぁ〜!!!!」


これが沙織か。短髪で割合がっしりした体つきの彼女はうっかりすると男の子みたいだ。密かにファンクラブもあるとかないとか・・・・


「よっ沙織。遅れた理由を述べよ。」


「アイス食ってた♪」


「「「おい!!!」」」


「てへ☆」


いいキャラだ。うん。絶対に憎めない。


「・・・じゃ始めよっか。」


「何やる?」


「『それだけ』やろうよ。あれむずいし。」


「良いよ〜」


決まると同時に位置に着き、沈黙で一瞬空気が張り詰める。


そしてその沈黙を切り裂くように星良と沙織の弦が歌い、あたしもすっと息を吸って歌い始める。


「最近なんか悩んだ顔してるね


辛いこと抱え込んでるみたい


そんな君に何にもしてあげられない僕は弱虫


口を開くのさえためらわれて


不器用で口下手な僕は君に何にも言ってあげられないけど


僕は君の隣を歩こう


それだけが伝えたくって僕は歌を歌う


重い鍵のかかった君の心に届くように祈りながら


君のこと何にもわかっちゃいないけど


君は大切な人


それだけが伝えたくって僕は君の隣を歩く


永遠の時の流れに今という時間を見つけて


Ru,ru-


Ru,ru-


Ohー


Hum・・・・・・」



一気に歌った。


初見だったけど、前から知ってたみたいに歌が唇を流れ出た。


最高の気分。


「あ〜47小節のとこまた間違えたぁ。暗譜無理〜」


「沙織〜そんな弱気なこと言っちゃ駄目だよ〜」


「ちょっとくらい間違えても大丈夫だから、ね?」


「今日めぐ調子良かったねぇ〜」


「ホント。いつも途中で一回は『間違えた!!』って言うんだもん。」


「あ、ごめ〜ん!でも今日は大丈夫だったよね?」


「うん、その調子だよ!」


アリスって本当にダサいキャラだな。
















あたしは気づかなかった。


ただ一人口をつぐんでいる彼女に。


じっとうつむいてた星良に。




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