不思議な少女
いじめ。
その馬鹿げたゲームの存在を知らないわけじゃなかった。
でもまさか自分がその標的になるなんて思ってもみなかった。
やっぱりクラスの権力者をあなどってはいけないみたいね。
負けはしない。そんなことわかりきってる。
でもやっぱり一人は辛いんだよ。
最初は古典的に、上履きに画鋲がたくさん入れてあった。
机の上にはたくさんの落書き。
中にはごみや、使用済みの鼻紙。
見ただけでうんざりしたけど、とりあえず手を触れないようにして始末。
あたしの様子をくすくすと笑いながら見ていらっしゃる溝口さん。
むかついたからこけたふりしてゴミをぶちかけてあげた。
その後も階段で突き落とされたり、眼鏡を壊されたりさんざんだったけど、あたしにとってそれがマイナスばっかりだったわけじゃない。
階段では顔に傷をつけないように、そしてちょっと目立つ位置に大き目のかすり傷を作るように巧みに落ちて(あたしの運動神経をなめるんじゃない)、同情を集めた。
ちょっと眼を潤ませて笑顔を浮かべると、意外と人はひっかかるもの。
溝口一派のほうが居心地が悪そうだった。
眼鏡はボールを当てられたんだけど、それも顔に傷をつけられないようにダサ眼鏡だけを吹き飛ばしてもらった。今度はコンタクトに変えてもらおう。溝口さんに弁償してもらって。
結局、あたしにとって悪いことはあんまりなかったといっても良いだろう。
でもね。
やっぱり辛いんだよね。
あたしは強いけど。
支えてくれる人が欲しい。
一緒に笑って、一緒に悩んで、一緒に泣いてくれる友達。
アリスには・・・・・いなかったのかな。
寂しい。
そう思ったときだった。
「めぐ・・・・・・」
すごくすごく小さな声だったけど、はっきり聞こえた、あたしを呼ぶ声。
振り返るとそこには風に吹かれれば飛んでしまいそうな美少女が、泣き笑いのような表情を浮かべて立っていた。
誰・・・・・?
少なくともアリスの記憶にはない人物だけど、呼び方からして親しい仲だったに違いない・・・・
「何・・・・?」
「もし・・・・・・めぐが・・・・辛かったら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・言ってね。」
「え・・・・?」
「だって・・・・私たち・・・・・・・・友達でしょ?昨日からめぐ・・・・・・・・空元気みたい・・・・・・・・・。なんか・・・・・・・・めぐじゃ・・・・・・・ないみたい。」
嘘。
何で。
二日目から勘付くなんて。
ばれるわけない・・・・と思ってたのに。
「めぐはめぐのままでいいからね。」
アリス・・・・・・・・
あなたはこんな友達をどうして捨てたんだろう。
こんなにもあなたを見ていてくれる人がいたのに。
「ありがとう。」
そういうと少女はふっと微笑んでかけて行った。
あの子は誰なんだろう。
謎と恐れと優しさと。
心の中は不思議のベールがかかってるけど、
いつかきっとわかるはず。
さあ、帰ろう。家に。