ここが女王様の住まわれる城
「うわぁ・・・・」
思わず感嘆の声を漏らした。
ここは女王の住むというお城の前。
家を出たのは結局9時前くらいで、10分ほど歩くと到着した。
シルヴァは女王の側近らしい(アベルが教えてくれた)から、城の近くに家を建てたのかもしれない。
私が驚いたのはその大きさもさることながらその装飾の細かさ、そして可愛さだ。
窓は全てハート型。ところどころに蔓薔薇がちょうどよく絡み付いていて、可愛い緑の葉を
つけている。壁はクリーム色で、屋根は真っ赤。
大きさはだいたい東京ドームくらい。なんか童話の中のお姫様が住んでそうな感じ。
・・・・事実そうなのかもしれないんだけど。
「アリス、口を開けて突っ立ってるないで下さいよ。ほら、行きますよ。」
「げっ。口を開けて考え事をするなんて私としたことがっっっ!!」
「何ぶつぶつ言ってるんです。さぁ、こっちです。」
「はぁい。」
おとなしくシルヴァに従って門をくぐる。
「あれ?門番とか、トランプ兵とかはいないの?」
「必要ないですから。この国で女王にかなう者はいませんし。」
「でも他の国とかから悪い人が攻めてくる・・・みたいなのは?」
「ありえません。この国は他のどの国、いや、どの世界とはまず接触ができない様になっているんで。あ、もちろんアリスは例外ですよ。」
「ふ〜ん。セキュリティーは万全なわけね。」
周りをぐるっと見渡すと一面薔薇。白薔薇、赤薔薇が咲き乱れていて、メルヘンチック。
シルヴァは側室だそうだから特別な出入り口みたいなのがあり、私たちはそこから入った。
あれ、でもここ変だ。
ドアを開けて中に入るとなぜか正方形をかたどって長い棒が四本立っている。その先端を求めて見上げると・・・・・・
天井がない。
どこまでも上に伸びていく四本のなぞの棒。
その真ん中にシルヴァは立ち、私にも来るように手招きした。
「シルヴァ、この棒何???」
「あ、アリスそれに掴まっててください。ちょっと動きますよぉ〜」
「動くって何が・・・・・うぎゃぁ!!!!」
動いた。地面が動いた!!!
と思って下を見ると、私たちが乗っている2畳大きさの床が例の棒の上の方に移動してるみたい。どうやら、簡単なエレベーターみたいだ。
こうやって中継してると落ち着いて見えるけど、実際私はかなりびびってて、座り込んで
棒に必死でしがみついていた。
「大丈夫ですか、アリス。」
「大丈夫に見えるか!!!!何で説明してくれなかったのよぉ!!」
「それだけ元気なら大丈夫ですよ。だから動くって言ったじゃないですか。」
くそいまいましい白兎はむかつくほど綺麗な笑顔で私を見下ろしながらそう言った。
もちろん彼は自然な感じで立っている。まあ、ここをいつも使ってるのは彼なんだから当然か。
「はい着きますよ〜」
エレベーターガールみたいなことを言うシルヴァに手を貸してもらってうんとこしょっと立ち上がる。なんちゃってエレベーターは音も立てずにぴたりと止まった。
「女王の部屋です。」
目の前にあったのは赤い大きなドア。金色のドアノブがついていて、いかにもって感じ。
エレベーターは床と早代わりし、シルヴァはさっとドアの前に行くとノックしてから言った。
「白兎アリスを連れてまいりました。」
おお〜やっぱり女王となるとこういう話し方になるのか・・・・。なんだか怖くなってきたぞ。
「え、アリスちゃん??入って入って!!!」
誰。
シルヴァは苦笑しながら中に入り、私にも入るように促す。
「失礼します。アリスで「堅苦しい挨拶はいいのよ、アリスちゃん☆」
さっきのはっちゃけた声はやっぱり『女王様』のものだったらしい。
恐る恐る顔を上げると・・・・・
「えっ!!!!!」
「だから言ったじゃないですかぁ。何の説明もなしにあなたに会うと女王というイメージとかけ離れすぎて混乱すると。」
「だってぇ。見てのお楽しみのほうが特別な感じがしていいじゃなぁい☆」
推定25、6歳。大きなチョコレート色の瞳で、綺麗な金髪をアップにしている。
ちょっと色を抑えた赤いプリンセスドレスなんだけど、私のドレスの何十倍も派手で豪華。
そしてその雰囲気は・・・・・・
声の通り、派手。美人特有ののんきさを持った話し方だけど、ぜんぜん嫌味に感じないのはこの人の気品からだろうか。
「女王のイザベラ・リジャイナよ☆
さぁさ、アリスちゃん座って座って〜。今日はいろいろ話したいなぁと思って呼んだんだから。この国の詳しい仕組みとか、これからのこととか。」
「これからのこと・・・・・・」
「で、そういう事務が済んだら、いっぱいお喋りしましょ☆」
ね、と言ってその大きな瞳でウインクをくれた。
ズッキューン。
真っ赤になる私を面白そうにシルヴァが見て、ふふっと女王様が笑って。
私この人好きになれそう。
対人恐怖症の私だけど、この国に来てからその症状が治まってるみたいです。