三日月の国の朝
「アリス〜起きなさ〜い!!!」
「ん〜お母さんもうちょっと・・・・」
「いつ私がアリスのお母さんになったのよ!!!!」
ばっとブランケットを剥ぎ取られる。
観念して眼を開けるとそこには頬を膨らませて耳をぶらぶらさせている美少女の顔。
そうだった、ここは三日月の国だったっけ。
「あ、ココットか〜」
「あ、ココットか〜じゃないわよ!!ほら、さっさと起きて頂戴!!もう10時よ!!」
「うげっ!!!!」
ずいぶんと眠ってしまったようだ。昨日の夜いろいろとあったから・・・・・
「はっ、そういえばココット昨日はごめんなさい!!大丈夫だったの??」
「ああ、昨日ねぇ。う〜ん、むかついたからちょっといたぶってやったわ☆」
こ、怖い。怖いよ、ココットちゃん!!!
「でも、これからは気をつけなきゃね、私もアリスも。」
「うん、ありがと。」
「ほら、朝食が冷めちゃうから着替えて早く来て!!」
「は〜い。」
もぞもぞとソファーから這い出す。ああ、シルヴァが寝かせてくれたんだ、きっと。
部屋に戻り、服を選ぶ。何しろ華やかなドレスばっかりだから着慣れないと目がちかちかする。
「今日は女王に会わなきゃいけないんでしょう?だったらピンク系×姫系のドレスがきっといいわよ〜」
下からココットの怒鳴り声がする。
「ありがと〜」
怒鳴り返して深呼吸してから、服の山に突っ込んでいった。
あ、これがいい☆
ぱっと眼についたのは大きなリボンがウエストと背中についている、桃色の割とシンプルなプリンセスドレス。絶対ドレスに私が負けちゃうけど・・・・
まぁ、それはしょうがないよねっ!!
昨日つけていたピンクのリボンを頭に結んで、みんなのところへ。
「おはよう!!!!」
「アリス、おはようございます。」
そういって微笑んでくれるのはもちろんシルヴァ。黒のタキシードで決めていて、本当にかっこいい。
あっ、誤解しないで!!恋じゃないよ!!!ただ、一般的に見てめちゃくちゃかっこいいってだけだからっ!!!!
「おはようじゃなくておそようだろ、アリス!!」
「アベルうるさぁい!!朝からごちゃごちゃ言うんじゃない!!」
「へっ、ねぼすけアリス!!」
「ふ〜んだ、へなちょこ帽子!!先がつぶれてるよ〜」
「な、なに〜!!!」
「二人とも朝からじゃれてると朝食抜くわよ〜」
「「げっ」」
エプロンをつけてちょっと睨んでくるココットは超萌!!じゃなくって。
「ココット〜お腹すいた〜」
「成長期の子供の朝食抜くもんじゃないぜぇ〜」
「はいはい、しょうがないわね。」
目の前にほかほかと湯気を立てた朝食が置かれる。
スープと、目玉焼きと、トーストと、ぶっといソーセージ。
アベルはいただきますも言わずにがっついてる。
シルヴァは・・・・上品にトーストを齧り、紅茶を飲んでいる。
ああ、絵になる。
「いただきます!!!」
ソーセージを切ってトーストに乗せてかぶりつく。口の中でバターの香ばしい香りと、ソーセージの肉汁がじゅわっと溶け合ってなんとも言えない美味しさ。
シンプルなメニューなんだけど、一つ一つに手がかかっていてこだわりの一品って感じ。
「すごく美味しい・・・・・・」
「でしょ!!!これ私がつくったのよぉ☆」
「ココットすごい!!」
「今度アリスにも作り方教えてあげるわvv簡単なのよ〜」
「わぁい☆」
毎日朝からこんなに美味しいものを食べられるなんて・・・・・
三日月の国ばんざい(笑)
「アリス、朝食が終わったらすぐに女王のところに行きましょう。早く行かないと今日中に帰れなくなりそうですから。」
「えっ・・・・??」
「女王はすごいお喋りなんで、話し出すと止まらないんですよ。しかもすごいおせっかいですし。」
どういう人だ。女王ってすごく貫禄があって、あんまり話したりしなくて、余は何とかじゃとか言って、椅子の上でふんぞり返ってるイメージだったんだけど・・・。
「イザベラは話し相手にちょうどいいわよぉ☆」
「イザベラ?」
「イザベラ・リジャイナ。女王の本名です。」
「あの・・・・女王を呼び捨てにしていいんでしょうか・・・・
首切られたりとか・・・・」
だってアリスの女王は首を切るのが大好きなんだよ?呼び捨てとかしたらすぐにぶった切られそうだよ。
「あははっ、アリス何言ってんだよ!!!」
「そうですよ、首を切るって何年昔のことを言ってるんですか!!」
男どもに大爆笑された。アリスちゃんショック。
「この国の女王って言うのはひとつの役割だから、別に特別えらいわけではないのよ。
ただ、国だからまとめ役が必要なだけ。身分は私たちとぜんぜん変わらないの。
まぁ、イザベラの好きな花は首切り草っていう赤い花だけどね。」
「へぇ・・・」
いい国だ。っていうか首切り草とか縁起悪い花だな。
会うのが楽しみになってきたよ、イザベラって人。
「ほらほらアリス、ご飯が冷めちゃいますよ!」
「俺がもらってやるよ!!」
「だめぇ!!!!」
こうやってじゃれてる時間がすごく愛しかった。