430
双子と朝食を食べ終わった後はお店を開店させ、ケーキを持ち帰るお客様やオープンカフェを利用する方の接客をしていった。ピークの時間が過ぎてから店頭のショーケースを見れば、かなりケーキの数が減っている。
「うーん。思ってたより減ってるけど今日はこのまま追加は作らないから、売り切れたら早めに閉店しましょうか……。明日、あさってはお休みだからゆっくりしましょう!」
「はい!」
そう。明日とあさっては久しぶりに連休にしたのだ。やはり少人数でフルに働いているのもあって、定期的に連休を入れないと身体が持たない。前々から、明日は店をお休みすると決めていたので鮮度の高い生の果物はすでに使い切っている。
ケーキが売り切れるまでまだ時間がかかるだろう。今の内にアレをやってしまおうと思い立ちダイニングルームから、たまっていたマンダリンの皮を持ってきた。
「本来なら一年かけて陰干しして作るそうだけど、要はしっかり乾燥させれば良いはずだものね」
ある程度、乾いていたマンダリンの皮を銅ナベに移してから手をかざす。
「火魔法だけで加熱するのは熱量が強すぎる。風魔法だけだと時間がかかりすぎる。ならば、火魔法と風魔法を組み合わせれば良いんだわ」
火魔法と風魔法を組み合わせた熱風にさらすことで銅ナベに入れた黄金色の皮が急速に乾燥していく。熱風によって水分を失ったマンダリンの皮は、あっという間に一回りも二回りも小さく縮んでいった。
「ふむ。こんなところかしら?」
完全に水分を失ってカラカラに干からび、固くなったマンダリンの皮を細かく砕いてガラスビンに入れてフタをし密封した。
「これでマンダリンの皮を材料にして漢方薬の『陳皮』ができたわ。猫が口にすると良くないけど、人間がスプーン一杯程度の『陳皮』を熱湯に入れて『陳皮茶』にしたりする分には問題ないはずよね。風邪予防や健胃、整腸効果が期待できるし、身体を温める効果も期待できるからこれからの季節にぴったりね」
ひとまず、自分で飲んでマンダリンの皮と魔法で簡易的に作った『陳皮』に効果や効能があるのか確かめてみよう。そう思いながら粉末の『陳皮』が入ったガラスビンをタナに置いた時、調理場のドアが店頭側からノックされた。
「セリナ様、生菓子のケーキは売り切れました!」
「そう。じゃあ、ちょっと早いけど今日はこれで閉店しましょう!」
「焼き菓子は完売してないですが、お店をしめても大丈夫ですか?」
「そんなに残ってなかったわよね? 少ししか残ってないなら、私たちで頂きましょう」
「はい!」
「了解です!」
ルルとララが元気よく答えてくれた後、今度は勝手口からコンコンと軽いノックの音が響いた。ご近所の人かしら? そう思いながら勝手口のドアノブに手をかけ開いた。するとそこには見慣れた銀髪の狼獣人がいた。
「ヴォルフさん?」




