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ローザが淹れてくれた花茶が注がれたティーカップの取っ手を持ち、少し息を吹きかけて冷ました後、口元でカップを傾ければ独特の酸味が感じられた。
「すっぱいわね……」
「バラの花茶よ。砂糖を入れて甘さを調整すると良いわ。せっかくバラの花が見頃だから、セリナとお茶を飲みながら楽しめたらと思って呼んだの」
「うん。確かに見事なバラ園ね……」
第二の庭にあるバラ園は、今いる白大理石造りのあずま屋を中心に白バラや淡いピンク色のバラ、オレンジ色のバラなど、色とりどりのバラが咲き乱れている。白いつるバラが巻き付いたアーチを通り抜けてこの場所にたどり着いたときには、見事に咲き誇るバラ園の美しさに思わず息をのんだ。
「本当は国賓とか大事な方にご案内している場所なんだそうだけど、こんなに綺麗な場所。セリナにも見て欲しくて陛下にご許可を頂いたの」
「そうなんだ。ありがとう。……レオン陛下とは上手くいってるのね?」
私が尋ねるとローザはプラチナブロンドの髪を風に揺らしながら幸せそうに、はにかんだ。雨降って雨地固まると言うが、どうやら国王陛下とローザについては心配いらないようで一安心した。
「そういえば……。伯爵令嬢フローラについてなんだけど……」
「どうなるか決まったの?」
「今後は犯罪を犯した貴族が幽閉される塔に移送されて、裁判で司法官によって裁かれるそうよ」
「フローラが裁判に……」
「公開裁判になるから一般の国民も伯爵令嬢フローラが、王家や国民を謀っていたということを目の当たりにするでしょうね」
「金獅子国では伯爵令嬢フローラが『聖女の再来』ってウワサになってたようだし。今でのウワサを信じてた、何も知らない者はフローラがウソをついてたなんて信じられないでしょうから、公開裁判で魔力をドーピングしてた件をつまびらかにするのは良い判断ね」
高い魔力だったことが国王の婚約者になったことの大きな決め手だっただけに、その根幹が崩れ去った上、伯爵令嬢フローラが『魔力ドーピング』までして、王家や国民すべてを騙して王妃になろうとしていたというのは『聖女』のイメージとは真反対の所行だけに、フルオライト伯爵家やフローラに対する信頼と信用は地に落ちるだろう。
もっとも、今となっては伯爵令嬢フローラが『聖女の再来』なんてウワサを流していたのは、フローラの実家であるフルオライト伯爵家の可能性が高い気がする。
あのウワサがあった影響もあって、侯爵家子息クラレンス様との結婚がまとまりかけていたフローラに王太子だったレオン様の婚約者候補という話が持ちかけられたのだから……。




