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一通り、食材を購入した後は植物の種や苗を売っている店へ向かう。花を販売してる店ならば種や苗もあるだろうと行けば黄色や赤色、青色などの可愛らしい花々と共に植物の小さな苗や、色んな球根と謎の壺を陳列させている花屋を発見した。
麻布の天幕に簡易的な骨組みで建てられた露店の天井部分からはディスプレイの意味もあるのだろう。目に鮮やかな色とりどりのドライフラワーの花束がいくつも吊り下げられている。その露店の中に置いてある木箱に腰かけている中年の男性店主がいた。
「あの、ハーブの種はありますか?」
「もちろんあるよ!」
「じゃあ、今から植えて育てることができるハーブの種が欲しいんですけど」
「お嬢ちゃんはハーブをあまり育てたことがないのかい?」
小太りの中年店主に尋ねられ、魔力の実を育てたことはハーブを育てたという範疇に入るのだろうかと少し首をひねる。しかし、あれは特殊なのでハーブを育てた経験の内には入らないだろう。
「えっと……。最近、家のテラスでガーデニングを始めた感じです」
「ふむ。まだ初心者ってところか……。じゃあ、育てやすいハーブが良いな」
「そうですね。どれが育てやすいですか?」
「一番育てやすい。というか放っておいても育ちやすいのは何と言ってもミントだろうな」
「ミントですか……」
そういえば、ミントの葉をケーキに添えることもできるなと思いつく。普通にショーケースの中に入れると葉がしなびてしまいそうだけど、オープンカフェで客が食べる直前にミントの葉を添えるというのはアリだろう。そんなことを考えてると露店の店主は笑顔で頷いた。
「ああ。繁殖力が強すぎて庭に植えれば、庭全体がミントで覆い尽くされることもある位だ」
「それはちょっと、強すぎますね……」
思わず顔を引きつらせながら苦笑いすれば、中年の店主は屈託なく笑う。
「でもテラスのガーデニングで育てるなら鉢植えだろう? 繁殖するとしても鉢植えの中におさまるから問題ないさ。それにミントは寒さに強く越冬もする。寒くなる時季でも安心して植えることができる。育てば葉を収穫してミントティーにしたりできるよ」
ミントティーといえば、すっきりとした味わいで夏場アイスミントティーにして飲むのを思い浮かべるが、冬場は温かいホットミントティーにすることで確か風邪の予防効果、胃や腸の調子を整える効果、痛みをやわらげる効果も期待できたはず。
風邪の予防効果が期待できるなら、これから寒くなると言う時季に育てておいて損は無いだろう。それに植物自体が強靱で初心者が植えても、まず失敗しないというのは大きな魅力だ。
「そうですね。じゃあ、まずミントは確定ですね」
「毎度!」




