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レッスンしましょう?


「俺に迫ってみろよ。色っぽく…さ。」


その言葉に反応して

手を伸ばして、彼の頬を触れる

普段は外で剣の稽古をしてるくせに、きめ細やかな肌は少しひんやりして、触るととても気持ちいい


彼が、触れている私の手に自分の手を重ねて、形の良い唇を薄く開いて私の名を呼んだ


私は応えようとしたけど、声にならず、そっと顔を彼に近づけてるだけ


彼の長い睫毛が伏せられる


それを合図に、私は更に彼に顔を近づけて…



「ズルい…」



耳元でそう囁いた






ただ今、アラン様のお部屋で、レッスン中です。

アラン様に色っぽくなりたいって訴えた後、あのまま公共の場で話す事では無いという事で、そのままアラン様のお家にやってきました。

お年頃の男女が2人きりで密室の中って本当はダメなのですが、アラン様のご両親が進んで2人きりにしてくださいます。

2人まとめてお部屋にポイって感じなのです。

まあ、幼い頃から一緒なので、兄妹みたいなものだと思われているのかもしれませんね。






「何だよ、ズルいって。」


閉じられていた目が開き、空色の瞳が私を射抜く。

ああ、アラン様の瞳はいつ見ても晴天のお空のようで、綺麗だな。

やっぱりズルい。


「蜂蜜色の髪も、お空の色の瞳も、この白い雪のようなお肌も、全部ズルいのですーーー!」


頬に触れていた指先で、アラン様の頬を摘み、思い切り引っ張る。

もちもち柔らかで、とても引っ張りやすかった。


「いてっ!」


そう叫んだのを聞いて、今まで並んで座っていたソファから降り、続いている隣の寝室へと逃げ込む。

勝手知ったるアラン様の部屋。

どこに何が配置されているかも熟知している。

目指すはクマのぬいぐるみ。

ベッド横にちょこんと置いてあるはず。

すぐに見つけた。

それを抱きしめてベッドへとダイブ。

6歳の誕生日に伯父様からアラン様と私に色違いで贈られたクマのぬいぐるみ。

私も大事にベッド横に置いてあるもの。

私の大好きな伯父様からのプレゼント。


それを抱きしめて、追ってきたアラン様を見つめる。


「何だよ、ズルいって。」


引っ張った頬をさすりながら、こちらに近づいてきた。


「…だって、アラン様、私より綺麗なんですもの。ズルいです。」


「…は?」


「色っぽく迫ろうとしたけど、綺麗なアラン様を間近で見るとドキドキして、それどころじゃ無くなるんです。」


「…。」


「顔を寄せると、いい匂いするし、目を閉じて唇開かれたら、キスしたくなったんです。それって、アラン様の色気のせいですよね。本当にズルいです!」


「…。」


「私が色っぽく迫らなきゃいけないのに、待ってるだけのアラン様の色気に惑わされるとか、女として、悲しいのです。」


言いながら本当に悲しくなってきて、更にクマのぬいぐるみをぎゅーっと抱きしめた。


そう、私が惑わされたのは、アラン様の色気。

アラン様が綺麗だから、いけないの。

綺麗だから惑わされたの。

好きだからキスしたくなったのでは、ないの。

私が好きなのは、伯父様。



だから、

「…アンナ。」

って優しく呼ばれて、いつのまにかベッドに座って抱きしめられているのも。


もう一度、

「アンナ。」

って甘く囁かれて、目を閉じようとしたのも。




「アラン!そこまでよ!!」

と、アラン様のお母様に引き剥がされるまで、流されていたのは、全部、アラン様の色気に惑わされていただけ…なの。



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