私の、好きな人
お母様のお兄様。
それが、私の、好きな人。
優しくて。
美しくて。
そして、誰よりも、強い人。
私は小さい頃、誘拐されたことがある。
貴族を憎む、平民達によって。
私たち貴族が精一杯、領民のために、力をつくしても。
それでも、貴族というだけで、憎まれるのはわかっているつもりだけれど。
まさか自分が標的になるとは、思っていなかった。
5歳の頃だった。
ちょっとした冒険がしたくて。
こっそりと、お屋敷を抜け出した直後。
私は捕まった。
暴力こそ、受けなかったけど。
縛られて、脅されて、色々と恨み言を浴びせられて。
絶望を味わった時に、伯父様に助け出された。
いっぱい探してくれたのだろう、伯父様は。
いつもキチンと着られている服が乱れていて。
泥までついてて。
髪もボサボサで。
目元も少し赤くなっていたけど。
とっても、とっても、綺麗で。
私には、神様にみえた。
その事件があってから、私は少しだけ情緒不安定になってたらしいけど。
伯父様がすごく、すごく甘やかしてくれて。
お仕事大変なのに、私を最優先にしてくれるほど。
勿論、それは、家族の役目なの、と。
お母様も、お父様も、お爺様も、お祖母様も。
みんなして、私を甘やかしてくれたけど。
伯父様の、それは。
ドロドロに溶けそうになるくらい、甘くて。
私自身が、たった1つの宝石かと、勘違いしそうなくらいで。
おかげで、私の心の傷は、目立たないくらいに、落ち着いた。
伯父様は、私の、恩人。
そんな伯父様を好きにならないのは、おかしいと思う。
例え、伯父様が私のことを家族としてしか、みていないとわかっていても。
私を甘やかしてくれるのが、大事な妹の、娘だからだとしても。
ーーー大好き。
そんな伯父様は、お嫁さんをもらっていない。
「もう、おじさんだから、来てくれるお嫁さんはいないな。」と、笑って、先日私と同い年の養子を迎えた。
以前、お嫁さんを迎えない理由をお父様に言ってたのを聞いたことがある。
遊びなら、いくらでも愛の言葉をささやくし。
偽りの言葉を並べるのは得意だけど。
そんな相手を、妻と呼んで、自分の家族とするのは、嫌だなぁって。
家族と同等かそれ以上じゃないと、愛を与えるのは、無理なんだよって。
自分は、家族以外は、愛せない欠陥品なんだよって。
伯父様は、そう言って、笑っていた。
私は、伯父様にとって、家族の括り。
だから、勝算は、あると思うの。
悪役令嬢の役割が、好きな人を色気で落とすというのなら。
私は、全力で。
悪役令嬢に。
それ、悪役令嬢違う!
と、全ヒロインが叫んでる