月曜日、その後
繰り返しますが、この作品はフィクションです。
今回の更新も短くて申し訳ない。
「はい。食べられるなら食べた方が楽になるから」
「ありがとう」
オティーリエがパン粥を作ってくれた。口に運ぶと優しい甘さで食が進む。
「おいしい……」
「エーファのためにずっと作っていたからね」
優しくほほ笑むオティーリエの表情からは暗いものは感じられない。妹さんの体質が分かって、自分がそのために役に立てているということが良い方向に向いているのだろう。
「ごちそうさまでした」
「眠れるならもう少し寝ておくといいわ。皆は通常通りの訓練をするように伝えているけど、ラウラと私が交代でここに居るようにするから安心して」
私の食器を片付けながらオティーリエがそんなことを言ってくれた。今週も訓練内容を変えるつもりはなかったので訓練に遅れが出ずに済みそうでほっとする。
微笑みながら看病してくれるオティーリエが近くにいると、先ほどまで感じていた不安感もどこかに行ってしまうようで急に眠気が襲って来た。十分寝ているはずなのだけれど、ここはオティーリエの言葉に甘えて眠ってしまうことにしよう。
眠気で意識レベルがあやふやだけれど、一応眠る挨拶はしておかないと。落ちる前に声よ出てくれ。
「お休みなさい……お姉ちゃ……ん……」
オティーリエは頬を赤らめて目の前で眠りに落ちたユリアの顔に見入ってしまった。
「私、別にこんな趣味はなかったはずなのに……。ユリアにお姉ちゃんって呼ばれると胸の奥が……」
ぼそぼそと独り言を口にしながらオティーリエはたっぷりとユリアの顔を見つめていた。徐々に二人の顔が近づき、オティーリエの頬が上気したように赤くなる。顔の間の距離が握りこぶし一つ分ほどに縮まった時、オティーリエが手をついたベッドがギシリと軋みを上げた。
「あ、あら、私ってば……」
はっと正気に戻ったオティーリエは、ユリアが眠ったままなのを確認するとほっと安堵の息を漏らした。
「ふふっ。今はゆっくりと休んで慣れるといいわ」
そう言うと、優しくユリアの額に口づけして部屋を出て行った。
「ふはははは。祝杯だ!」
女神達がお祭り騒ぎをする中、アンジュはワインをデカンタであおっていた。見た目が子供なので違法に見えるが、そこは女神である。果汁100%のジュースのようにごくごくと飲み干していく。
その眼前ではユキがここぞとばかりに腕を振るった手の込んだ料理がラヴィーとクロに驚くような速さで消費されていた。その隣のテーブルではブランとDが酒瓶のまま酒を楽しんで呂律が回らない言葉で笑いあっている。
「遅い遅いとは思っていたが、これであいつに贈ったギフトが機能する」
「肉体が女性になることをキーにして魂の性別と同じ性別から好まれるようになる、でしたか。でも、本当にそれだけですか?」
空になったアンジュの杯にワインを注ぎに来たユキが疑問を浮かべた。
「うん? 何がだ?」
「先ほど見えたオティーリエの反応といい、瑞穂の反応といい、全方位にばらまいていませんか?」
ユキの視線を追うようにしたアンジュが見たのは、マグナムボトルのワインを抱えながら尻尾を振っている瑞穂だった。目はとろんとして頬を赤くした姿はまるで発情期のようだった。
「……あれは酒に酔ってるだけだろ。あのボトル、何本目だよ」
瑞穂の足元に転がるボトルを見てアンジュはあっさりとユキの懸念を否定した。形状の違うボトルが見えるだけでも五本は転がっている。龍というのが酒好きのくせに酔いやすい種族と思っているアンジュにとっては当然の判断だった。
「本当にそうならいいのですけど……」
「心配し過ぎだ。あれは対人では効果があるが、そもそも神には効かんように作ってある。あれが男に好かれてモテてどんな反応をするか見るための術式だしな」
「もう。そうやって偽悪的に振る舞って。もとの世界の自分と決別して新しい自分として歩けるようにするための手助けでしょうに」
ユキが苦笑しながら注いだワインを飲み干すと、アンジュはにやっと笑って杯をつきだした。
「一石二鳥は結構じゃないか。相手と自分に良い契約をさせてこそ一流の邪神だろ?」
「はいはい。あの子が私たちの望む結果を出すにしろ出さないにしろ、大事な弟子ですからね。見守ってあげましょう」
今度は微笑みながらユキは静かにアンジュの杯へワインを注ぐのだった。
最近、IKEAのサメが家に来ました。抱きしめるのがストレス解消に一番いい感じです。癒されています。
毎回の更新が開く上に短くて本当に申し訳ありません。
 




