9話
「まさかここまでの大群だったとは…皆一人では決して戦うな」
委員長さんが何か言ってたけど…ま、いっか…地面を蹴り巨人の様な魔物へと突っ込む
「よっしゃ、まずは一発」
巨人の右肩に向かって一撃放つ、轟音と共に腕は吹き飛んでいく
何だよ随分と脆いな、結局コイツも図体だけなのか?
そんなことを思っていると吹き飛ばした右腕が見る見る内に再生し始めた
「おぉ、こりゃいい玩具になりそうだな」
いいねぇ、テンション上がってきてぜ
取り敢えずここら一帯が吹き飛ばない程度の技を撃ちまくって遊んどくか
「…随分楽しそうね」
「ソ、ソフィアさん!そんなこと呟いてないで向こうからもう一体来ます!」
一人の男子生徒が叫びながら指さす方にディランが相手しているのと全く同じ巨人が迫っていた
「ソフィア、あのデカイのを頼めるか?」
「ええ、勿論いいわよ」
魔法を使い空を飛ぶソフィア、巨人へと接近して行く
そして近付き、魔法を一発
「『激電磁砲』」
掌から極太のレールガンを放つと巨人の右上半身が吹き飛ぶ、しかしスグに再生してしまった
「再生力が気持ち悪いわね、まあいい実験台になってくれそうね」
「私達はあっちに集中しましょうダーリン」
「あの二人が行くなら俺も負けてられねぇ!」
「え、ちょっとダーリン!?」
レヴィが止めようとするが能力であっという間にもう一匹の巨人へと駆け出して行くオリヴァー
仕方が無いので能力をかけておく
「まだ指示を聞かない奴が一人居たのか……はぁ」
「す、すいません」
「いやなに、君が悪い訳では無い…一旦下がれ、この量の相手は君にとって不利だろ」
大人しく下がり見守るレヴィ、しかしオリヴァーの事は心配してはいなかった
「折角ダーリンの近くで手伝えると思ったのに、それにダーリンのカッコイイ姿も見れたのに」
どんな状況でもバカップルはバカップルなのである
数十秒後に轟音が聞こえてきたのは言うまでもない
「全く、ディランは兎も角オリヴァー迄もか…考えても仕方が無いか…まあ、あの三人なら問題無いだろうがな」
「カルロスさん!指示を!」
「よし…全員纏まって戦え!数に飲み込まれればお終いだ!」
「「「「「はい!」」」」」
カルロスの支持の元複数のチームに分かれ魔物達と戦闘を始める生徒達
カルロスの前にも魔物の軍勢が迫っていた
「『力の弾丸……ショット!』」
カルロスが掌から力塊を撃ち放つ、魔物達に当たると彈け魔物達が一瞬怯む
その瞬間に一斉に攻め込む
人数からすれば圧倒的に不利ではあるがそれぞれの個性を生かし一進一退の戦いぶりを見せる
魔法科
「う、うわあああ!!」
また一人が魔物の群れに飲み込まれていく、クソッ!アイツはもう駄目か
学園長は一体何を考えてる!こんなの死人が大量に出るぞ!
生徒達は一斉に魔法を放っているが魔物の数が圧倒的過ぎるため追いつかない、前に立つヤツらを魔法で倒しても後ろから後ろから迫ってくる
いくら人数が居るとはいえ魔法だって無限に使える訳では無い、尽きれば飲み込まれていく
「クソッ!このままじゃ!」
「後退しながら魔法を撃て!魔力が無くなりそうな奴は下がれ!」
一方的に追い込まれていくばかりだった
この時、既にオーヴェンは森全体に『死にかけたら学園の医務室へ強制転送』という魔法陣を張っていた
しかしこれに気付いているのはディランぐらいであった
「『重力蹴り』」
巨人の片腕を吹き飛ばす…がしかし、スグに再生されてしまう
さっきからずっと『重力支配』と『自動操縦』のフル活用でボッコボコにしてるんだが…スグに再生しちまう
すっごく良いサンドバックなんだよ
何やったって倒れない、コイツなら久しぶりにアレ使ってみるか
「『闘気解放・天魁』」
発動と同時に辺り一面に凄まじい量の闘気が放たれる
かなり久し振りだから気を付けなきゃな
「よーし…『天魁闘技・天地激震』」
「何…今の揺は?」
丁度デカ物の魔物を倒したソフィア
ディランが戦闘しているであろう方向から有り得ないほどの闘気が感じられたと思った瞬間、かなり大きく地面が揺れた
「……行くしかないわね、もしかしなくてもディランでしょうけど」
闘気を感じた方へ魔法で飛んでいく
「……は?な、何なのよ…コレ」
先程見ていた鬱蒼と木々が生い茂る森が一変……全てが吹き飛び塵一つ残っていない更地へと化していた
「ル、ルーズさん!流石に不味いです!」
数え切れない程の敵に戦意を失っていく者達
「諦めるな!ルーズさんが何とかしてくれるさ!」
が、しかし…当のルーズは取巻きを盾にするように我先にと逃げ出していたのだ
「お前らは俺の為に囮になりやがれ!」
どの道コイツらは助からねぇ、こんな所で俺の評価が落ちるのは御免だ!俺はここで終わっていい逸材じゃねえ!
「そ、そんな!ルーズさん!」
次の瞬間、意識が飛びそうな程の闘気が発せられた
と思ったのも束の間…轟音と共に発生した衝撃波に飲み込まれ吹き飛ばされていくルーズ達
勿論、ディランの仕業であるがこの事を本人が知るのは試験が終わってからであった
……いやね、滅茶苦茶手抜いたんだよ
森であった大地に腰を下ろしそう心の中で言い訳をする
『天魁闘技・天地激震』、この技…軽く空中で殴る動作をしただけなんだよね
結ッッッッッッ構、軽くやったつもりなんだけどなぁ
まぁ起きた事はいくら悔やんでも仕方が無い、久し振りに使ってスッとしたし良いか
「……でも流石にやりすぎたか」
「何してるのよディラン!今ので絶対何人か巻き込まれたわよ!?」
「あ、ソフィアさんも終わったんですか…巻き込まれても死にはしないし問題無いんじゃないですか?」
「はぁ…何言っても無駄ね、じゃあ雑魚の処理をしに行くわよ」
「え…うーん、止めておきます」
首を傾げ不思議そうな表情を浮かべるソフィアさん
「貴方、蹂躙戦は好きじゃなかったの?」
「今ので大分満足しましたし、数に飲まれていく様を見てるのもまた一興かと」
「………どうしょうもない正真正銘の屑ね」
「ソフィアさんからお褒めのお言葉を頂けるとは…感激の極みですな」
でもそんなに引き攣った顔をしなくてもいいじゃないですか
「ハニー、終わったよ」
巨人の魔物の上でキメるオリヴァー、その下にはレヴィがいた
「カッコよかったわダーリン…さ、早く戻りましょう」
「ああ、しかしディランはまたやったな」
「流石よね…本当、幼馴染みだと思うと心強いわ」
「心強いがやっぱり化け物だぜアイツは」
その後オリヴァーは雑魚の殲滅にて再度活躍
夕刻、魔物達を全て殲滅したところで学園長の声が聞こえる
【皆お疲れ様〜、これにて試験終了だよ…生き残った皆おめでとう!脱落しちゃった子達はこれから頑張ってね、僕はいつでも君達に期待してるからね】
声が聞こえなくなると同時に学園へ転送、ご丁寧な事にそれぞれのクラスへ直接帰してくれたようだ
クラスを見渡す限りいなくなってる奴はいない、全員生還したようだな
「さて、かなりハードな試験だったがご苦労様…疲労も溜まっているだろうから早く寮へ帰って疲れを癒せ」
やっと終わったかぁ、かなり疲れた…ではお言葉に甘えてさっさと寮に帰って寝ますか
久方振りのオフトゥン…いやベットか……が俺を待っている
因みに余談だが、もう助からないと思っていた者達が続々と医務室から戻ってきた事により学園長が特殊魔法陣を張っていることに気が付いたらしい
まあ俺には関係無いけど
翌朝…珍しく、かなーり本当に珍しく自分で起きた
ここ最近はずっとオリヴァーに起こしてもらってた
「おい起きろー……って、え?」
「何だよ、もう起きてるんだが」
「ば、馬鹿な…起きてる……だと!?」
顔を洗っていると馬鹿がドアを開け入ってくる
「失敬な、俺だって起きる時はある」
「普段起きてないからだろ、今日は槍でも降るんじゃないか」
「うるせぇ」
「取り敢えず朝飯食い行くから早くしろよ」
オリヴァーに急かされたのでとっとと準備していきますか…食堂到着
「いやはや上手い飯を腹一杯食えるって幸せだなあ」
「あら、私のじゃ満足出来ないってこと?」
「いや別に不味いわけではないさ、試験中の飯は有り合わせ感があって居た堪れないだけ」
「何を言うか、ハニーの愛情篭った料理は最高だよ」
「もう、ダーリンの為に作ったんだから当たり前じゃない」
バカップル共がまたイチャつき始めおった、食事中にやられると食欲削がれるから止めて欲しい
しかし何だろうか、さっきから周りの視線に怨念が篭ってるような
「何か周りの視線変じゃないか?」
「当たり前じゃない、試験中に使ったあの技で何人巻き添い食らったと思ってるのよ」
「おやおや、ソフィアさんじゃないですか」
というかそんなに巻き込まれたん?やっぱりあの技は軽はずみで使うのは良しておこうかな…まあザマァねぇがな
クルッと周りを見渡す…お、2位さんの取り巻きたちじゃないかなあれ
睨んではいるが……当の本人の姿が見当たらねぇな
「てかどうでもいいけどな」
「あのねぇ、クラス行動するんだから少しは周りに気を使いなさいよ」
「俺にとって得が無いのに態々するなんて、馬鹿馬鹿しいですよ」
呆れた顔をするソフィアさん、周り気にしてたら楽しめないっての
「まあでも全員が全員ディランを敵視してる訳じゃないわよ」
「そりゃどうも」
「少なくとも異能科の皆からは好意的に思われてるわよ」
「同じクラスの奴らか?何でまた」
「食料に困らずに毎晩御馳走だったのはうちのクラス
だけよ、ディランか狩ってきてくれてたおかげでね」
そりゃ光栄な事で…自分が食べたかっただけなんだけどね
まあ喜んで貰えたなら何より
「まあそれ以外の科からの敵視は凄いわよね、当たり前と言えば当たり前かしら」
「まあ知ったこっちゃないけどな」
その後は朝飯を食い終わったので学園へ向かう…と、何やら人が集まっている場所がある
「あれ何で溜まってるんですか?」
「試験の結果発表よ、気になるなら貴方も見てくれば?」
「別に興味無いですね、ソフィアさん見てくればいいじゃないですか」
「おいディラン大変だぞ!」
結果を見に行っいたオリヴァーが慌てた表情で俺の方へ走ってくる
「何だよ、どうした?」
「俺が10位になっててお前が2位になってた!」
……はい?と、ここで放送が流れる
【ディラン君、至急学園長室までお越し下さい】
「アレがディランか…」
「彼奴か」
周りがざわついているがそんな事は知らねぇ、今気にするべき事は
「取り敢えず学園長への文句だな」
学園長室へ到着
「やあやあやあディラン君、試験お疲れ様」
「どうも…で、アレはどういう事で?」
「アレとは一体何かな?」
「何すっとぼけてんですか、最初に言ったじゃないですか…序列2位なんて面倒な事したくないって」
「試験であれだけ実力が出てしまえば必然的な事だよ、1位にしなかっただけマシだと思ってくれ…本当なら1位にすべき所を無理言って取り消してもらったんだからね」
「そりゃどうも…それで、楽しめましたか?」
「ああ勿論、最高のエンターテインメントだったよ」
「どうも」
「では、早速向かいますか」
……はい?何処へ?
「いやいや、説明無しはキツイです」
「後始末だよ」
「後始末?……ああ、夜中の連中…それの総本部って事ですか?だとしたら遠慮します」
「ちょっと違うかな、因みに序列10位以内の生徒は要望に応じて先生達の手伝いを行うって義務があるんだけど……入学式に説明した事聞いてた?」
「いえ全く、というか義務って…強制は酷いです」
「まあまあ、それ以外にも色んな権利があるから」
「その権利要らないんで義務放棄していいですか?」
「いいや駄目だよ…いい加減諦めな、もう行くよ」
言い返す暇もなく転移させられる、空中の上にね
しっかしここもまた森ばっかだな…見渡す限り森だよ
「後始末と言っても僕が一撃で終わらせるんだけどね」
「尚更俺を連れてきた意味は何なんですか…」
「まあちょっと古い友人に頼まれたんだよ、少しばかり最強という力を見せてやってくれってね」
何じゃそりゃ…というか誰がそんなお願いしたんだ?……てか友人いたんだ
「ちょっと本気出してあげるから見ててね」
「まあ…はい」
「『真紅なる業火の破滅』」
そう言いながら指を鳴らすと、有り得ない程に巨大な火柱を立てながら大爆発が起きた…目の前が真っ白に染まっていく、これ巻き込まれんじゃね!?
……と思っていたのだが、オーヴェンさんが障壁を張っていたみたいです
「って何じゃこりゃ!?」
「どうだい?凄いだろ」
明らかに俺が使う技よりも被害が甚大じゃない、しかもこれでいて本気じゃないとなると…とことん化物だな
森だった場所は数10kmに渡り超巨大なクレータを作る
勿論、草木の一本も生えていない更地でね
「……こりゃ頭おかしいわ」
「これが三国を潰した力の一部だよ、よく覚えておきなさい…じゃ、帰るとしますか」
「あ、ちょっとま…」
次のコマには教室の前に立っていた、クソッ…逃げられたな
授業は…1時限目は終わってるな、2時限目から出るか
「遅いじゃねえかディラン、何してたんだよ」
「ああオリヴァーか…まあちょっと学園長とな」
「へぇそうなの、まあサボった訳じゃ無さそうね」
ソフィアさんいつの間に背後に…この娘怖い
サボったら確実に殺られるよなコレ、まあ俺は教室で寝る派だから大丈夫だろうけど
……いや、大丈夫では無いか
「兎も角、2時限からはちゃんと受けなさいよ」
「分かってますよソフィアさん」
てな訳で、いつも通り学園の日常が始まった