8話
突如として腹に衝撃が走る
「おい起きろディラン」
オリヴァーに腹を踏まれていた、てか眠ぃ
「起きろつってもまだお日様上ったばっかだろ」
「お前今試験中だからな、完全に忘れてんだろ」
あ…忘却の彼方でした、てな訳で二日目が始まります
「拠点を変えるぞ」
唐突な委員長の発言、えぇー…動くの面倒臭いんだけど
「恐らく昨日の戦闘で騎士科にもバレているだろう、それに騎士科の連中は魔法科と違ってねちっこいからな…昨日の魔法科よりも大人数で来るだろう」
それは俺として好都合だけどなぁ…
「そんなに嫌われてんですか?」
「ええ、大分嫌われてるわね」
「何でまたそこまで嫌われたんですか?」
「……私が去年やり過ぎたのよ」
アンタの所為かいな、まあ別に突っ込んで来てくれる分には大歓迎だけどさ
「という訳だ、早く準備を済ませろ」
準備って言われても俺ナイフぐらいしか持ってきてないからする事無いんだけど
そういや騎士科の馬鹿共は此処が拠点だと思ってる訳か…いいこと思い付いた
「ディラン、貴方また何か変な事考えてるでしょ」
「ははは、さぁどうでしょうね」
ソフィアさんってエスパーか何かなのかな
結局、暇そうにしてたらソフィアさんに能力で荷物運びを頼まれたんだが……兵糧攻めとかマジやめてけれ
拠点移動後、元拠点だった地点で狩りをする事にした…魔物と人間のね
此処で待ってれば勝手に騎士科の連中が大勢で来てくれるってことだよな?全くいい獲物だ
周りにいた魔物共は邪魔だったから粗方片付けたし、後は来るのを待ちながら直々出てくる魔物を相手してればいいか
そして昼前
寝っ転がっていると足音が聞こえてくる……50、60人程かな…キタキタ
「やっと来たね〜ディラン君」
「おうっ!?いつの間に居たんですか」
「何かまたやってくれそうだったのでね」
横にいた学園長に驚き飛び起きる
まあ要はまた死人が出そうだから転移の魔法をかけに来た訳なんですねそうなんですね
「じゃあさっきと同じのかけといたから、後は楽しんでくれ」
「どうも、全力で楽しみますよ」
一瞬で姿を消す学園長、どの道どっかから観てるんだろうけど
茂みから騎士科と思われる生徒が大勢出てくる、その内の一人が俺の前に歩いてくる
「おいお前、異能科の屑共がどこ行ったか知ってるか?」
「異能科ですか?」
「そうだよ」
「目の前に居るじゃないですか、お前の目は節穴か飾りか何かか?」
言うと同時にアッパーカットを決める、男は吹っ飛んでいき地面へ勢いよく叩きつけられる
「な!?や、やれ!数で押し切れ!」
一斉に駆け出す騎士科の生徒達、頭上へと飛び上がり足を振り上げる
「『闘気技・脚槌』」
威力特大の踵落しをかます、衝撃で大量の生徒達が吹き飛ばされる
ふう、大人数を一気に吹き飛ばすとスッとするなぁ
「な、何で異能科のお前が闘気ゴアッ!?」
「それ前も聞いたからもういいよ」
「よくも!立ってる奴らでコイツを叩きのめせ!」
「『闘気解放・序』」
またまた解放して迫り来る馬鹿共を相手する
「オラァ!」
「よっと…遅いなあお前、しっかり鍛えろよ」
「ゴフッ!?」
殴りを避け腹に蹴りを決める、序に後ろから来ていた奴に回し蹴りを入れる
「舐めんなよ異能科如きがぁ!」
「その言葉何回聞いたことか…そろそろ飽きてきたんだけど」
そう言いながら腹パンして腕を掴み投げ飛ばす
「クソ!『闘気技・拳砲』」
「『闘気技・豪砲』」
拳から闘気を放出させる技、俺の技は相手のヤツの進化版みたいなもの
勿論俺のが勝ち、相手とその周りのヤツらを巻き込んで吹っ飛ばしていく
「さてと『重量変換・重力蹴り』」
飛び上がり地面へ向かう重力を高出力にする、さっきの踵落しより明らかに強い衝撃が辺りに放たれる
「うわぁぁぁぁ!!」
「そ、そんな馬鹿な…たった一人でこの人数を……」
「雑魚はいくら集まっても雑魚のまま…結局は弱いままなんだよね」
「ち、畜生がぁぁぁ!!」
突っ込んでくる残りのヤツらを一人づつ丁寧に殴り飛ばしていく、『自動操縦』のオンパレードだったな
片付いたな…詰まんねぇなあ
その後は一旦拠点へ帰り昼飯を食ってもう一度戻って来たのだが、騎士科以外の獲物は無かった
某国
とある地下の部屋で5人の男達が何やら話をしている
「おい、計画は順調か?」
「何の問題もありません、滞りなく進んでおります」
「そうか…ご苦労」
リーダー格らしき男がそう言うと報告をしていた者が部屋から出ていく
「奴が作った学園のお陰で我が国の優秀な人材が吸い上げられている」
ドン!と机を叩きながら恨めしそうにそう言い放つ
その後に続きほかの者達も喋り始める
「一刻も早く止めさせるべきですな、国の為にも」
「これだけ年月が経てば彼奴と言えど力の衰えはある筈だ、そうは思わんか」
円卓の椅子には座らず、リーダー格らしき者の後ろに立つ男へ問いかける
男は前へ出てきてその問いかけに答える
「そうで御座いますな、流石にあの魔族の化物も数十年と経てば力は衰える筈です」
「奴さえ居なくなればこの国が大陸を…いや世界を支配する日も近いというものだ」
「その為には彼奴の後釜を作らせない為にも学園を何とかせねばなりませんな」
「その為の計画で御座います…必ずや成功いたしましょう、その為にもあの方に居なくなってもらったのですから」
「うむ、そうだな…ではこれより本格的に計画を始めるぞ」
そうリーダー格らしき者が告げると円卓に座っていた者達が頷く
唯、部下らしき男は一人笑みを浮かべていた
「ふーむ…久方振りに覗いてみればまた下らない事を企んでましたか」
5人の男達が座る円卓が映し出された水晶を見ながらオーヴェンが呟く
「本来なら僕が止めるべきでしょうが…計画が計画なだけに試験の課題として使えそうだなぁ、ここは一つディラン君やソフィアちゃん達に頑張ってもらいましょうか」
その日の深夜
森の中で数10人の人達が何やら棒を突き立てている、服装は皆貧相なものでボロボロである
目からは光を失っており、だいぶ暗い
更に別の場所では、群で生活する小型の魔物達が睡眠をとっていた
そこへ忍び寄る複数の影、魔物の体へと目に見えるほどの針を刺していく…魔物達ご気付く気配はない
この様な事が森中で起きていた…まだ目的は不明である
不意にパッと目が覚める、少々寝ぼけながら体を起こす
この俺が眠りから覚めるってことは…何やら嫌な事が起きそうだってことだな
気になるし取り敢えず捜索してみるか、窓を開けて飛び出す…そのまま向かうは森の中
暫く歩くと奴隷?らしき者達が何かしている、正直暗くて何も見えねぇ
……潰すのが早いかな?
「はーいディラン君ちょっとストップ」
「うぉい、急に出てこないでくださいよ学園長」
どっからでも現れるなこの人、いきなり出てこられるのは心臓に悪いから控えて頂きたい
「て言うか何でストップなんですか?」
「確かに彼等のやってることは結構危険な事なんだけどね、取り敢えず放置しておいてくれると助かるな…君にとっても悪くない話だしね」
「…どういう事ですか?」
「まあ明日になれば分かるよ、今日はもう寝なさい」
よう分からんが学園長に言われたら仕方が無いので拠点に戻って眠りについた
翌朝
朝食を摂っていると突如頭の中に学園長の声が響く
【おはよう諸君、お馴染み学園長だよ…今日はいよいよ試験最終日…という訳で今年は僕からサプライズ試験を用意して上げました〜】
「「「「「……はい!?」」」」」
「あー…何となく察した」
「……臨時作戦会議を始めるぞ、準備しろ」
委員長の呼びかけの元、臨時の作戦会議が開かれる事になりました
しっかしさっきの『意思伝達』だよな…本当何でもありだなあの人
「という訳だオリヴァー君、最速で状況確認をしてきてくれないか?」
「分かりました」
「よし、なら戦闘は避けてくれ…何か分かったらスグに戻って報告してくれ」
「了解!」
いつもの様に超スピードで駆け出していくオリヴァー、張り切ってんなアイツ
「カルロスさん、俺も行っていいですか?」
「駄目だ、お前はスグに戦いだすだろ…此処で待っていろ」
数分でオリヴァーが帰ってきた、何か顔青いな
「な、何か色々ヤバイですよ…魔物の大群が攻めてきてますし、中には超が付くぐらいの大型魔物もいましたし」
おっと、また学園長からの意思伝達のようだ
【ゴメンねサプライズの内容言い忘れてた…もう状況確認なんかして分かってる子達もいるかもしれないけど、こっちに向かってきている魔物の軍勢を片付けて下さい…逃げれば勿論失格だから宜しくね☆】
「「「「「「はぁ!?」」」」」」
「どの道やるしかないようだな…皆準備をしろ、あと腹を括っておけ」
「…あ、俺また荷物運びッスか?」
「いや、それは儂がやるからいい」
「おや先生久しぶり、先生の干渉って禁止じゃありませんでしたっけ?」
「学園長から特別許可が全教員に降りた」
「へぇ、じゃあ宜しくお願いします」
皆の準備が整い、オリヴァーの先導の元数分森の中を歩く
森から出ると目に飛び込んできた光景は
万を超える程の大群を成す小型魔物達と、10mを優に超す程の巨人のような魔物が数匹という絶望的な軍勢だった
紫色の肌をしており、人間というより恐竜に近い骨格だな
こりゃあのバカも青ざめるわな……じゃあ、存分に楽しませてもらおうかな