3話
「そんな訳で私と戦りましょうディラン?」
「絶対嫌です」
「まあ貴方の拒否は認めないけれど」
「え?いや、ちょっ!待って!」
首元の襟を掴まれ引き摺られる、そのままツツジ先生の元まで運ばれた
離してくれよ頼むから、ソフィアさんとタイマンとか何の罰ゲームだよ
「先生、ディランと一対一をしたいのでもう一つの部屋の使用許可を」
「まあ構わんが…ディラン生徒が乗り気じゃない気がするのは儂だけか?」
「ツツジ先生止めてくれこの人、軽く誘拐されてる」
「ま、まぁ…程々にしておいてやれ、取り敢えず元いた場所に戻してやる」
「分かりました、有難うございます」
「う、嘘だろ先生…そりゃ無いぜ」
目の前がまた真っ白になった
戻っちきちまったぜ畜生
「ほらディラン早くしなさい」
「はぁ…分かりましたよ」
ベッドが二つだけ並ぶ部屋に入る、そして横になり何度目かの視界真っ白
2回じゃまだ慣れないわ、気持ち悪ぃ
「あら、まだ慣れてないのね」
「流石に2回じゃ慣れられないですよ…少々お待ちを」
「全然いいわよ、全力の貴方と戦ってみたいもの」
「さいですか…」
まあ船酔い状態はすぐに改善されるんだけどね
気分が良くなったので立ち上がり軽くジャンプする
向こうでは剣を出したソフィアさんが立っていた
「ディランは何か武器を使うの?私は剣を使うけど」
「いいえ、素手です」
「ふーん、まあ闘気纏ってるものね……あ、そうそう…私の『復讐者』についてまだ言ってないことがあったのよ」
「何ですかそれ?」
「発動条件についてよ、私の『復讐者』…相手の攻撃を正面からモロにガードしないと発動しないのよ」
「それはまた難儀な異能ですね、まあ40%も軽減してくれるから五分五分なのかな?」
「まあどっちもどっちね、往なしても払っても駄目なよね」
面倒臭い異能だな、真正面からモロにガードか…火力高い相手に対しては結構不利な条件だな
「じゃあまずディランから攻撃していいわよ」
「え、そんなハンディくれるんですか?ていうか自分の力にしたいだけですよね」
「まあそれもあるけど、貴方の攻撃を見ておきたいっていうのもあるわね…どの道貴方が私に勝てるか分からないしね」
「さあどうでしょう、あまり舐めてると痛い目みるかもですよ?」
俺は闘気を纏い、重力の方向をソフィアさんの方へ向ける…それもかなりの力をかけて
「いきますよ…『重力転換・加速』」
オリヴァーと同じ位の速さでソフィアさんへと突っ込む、そして飛び蹴り
「『重力〜〜蹴り』!」
「ぐっ!」
モロに正面から剣でガードした
これを剣一本で正面からガードするとは、流石は序列1位だな
吹き飛びながらも足で踏ん張るソフィアさん
「け、軽減しててもなかなかキツかったわよ今の蹴り…でも何でディランは無傷なのかしら?」
「あはは、やっぱりそこに気付きますか」
何を言ってるかというと、『防護壁』を割った時もそうだが明らかに人体が耐えきれる反動じゃないんだよどちらとも
「ディランは何故何の反動も受けてないかのように立っていられるの?」
「まあ簡単に言うとですね…体内からこちらに来る反動と全く同じ力で重力をかければいい話ですよ、そうすれば俺はいつもと変わらない感覚で蹴りや殴りを入れることが出来るって事ですね」
「まあその原理はいいとして、それを瞬時に出来る貴方の力って…」
「あはは、残念ながらこれをしてるのは俺じゃないんですよ」
「どういう意味?」
「騎士特有の力『闘気』の中に分類される『自動操作』ですよ」
『自動操作』…この力は脳筋の騎士達からしたら喉から手が出るほど欲しいもの、まあ習得が滅茶苦茶難しいんだよね
「コイツが俺の代わりに内部からの重力を操ってくれてるんですよ」
「どういう能力なの?」
「そうですね…本来闘気を発動するのにはまず発動場所に意識を集中、闘気のイメージ…そして発動と時間が掛かるんですがコイツは頭で思っただけでそれを実行してくれるんですよ」
「成程…それって狡くないか?」
「まあ習得するのがキツいんですよね…もう俺も覚えて無いですし思い出したくも無いですが」
「そ、そうか」
本当にあの修行…もうしたくない
「では気を取り直して、いきますよ」
「ああ、こちらからも行くぞ」
剣を構えるソフィアさん、カッコイイわ普通に
そんな事を思っていると踏み出してきた、しかも結構な速さで
「はぁ!」
「うおっ…と」
縦に斬りつけて来たのでそれををスレスレで左に避け、そのまま蹴りを入れる
が、正面からガードされました
「安易に私に攻撃をしない方がいいぞ?」
「はい、今学びました…『重力転換・加速』」
先程と同じスピードで後退、そして後ろへ回り込む
俺はあの馬鹿と違って重力の向きを変えることによって方向転換出来るんだよね
後ろから飛び蹴り
「おら」
「チッ!」
横へ飛びそれを躱すソフィアさん、反応早いね…まあ逃がさないけど
方向転換、ソフィアさんの方へ重力を向ける
「もう一発」
「フフ、まだまだ甘いね」
まあ普通に正面から避けられるよね、まあそうさせないけど
「『重力転換・減速』」
「っ!」
目の前に来て急激な減速、か〜ら〜の…回し蹴り
「がっ!?」
「まずは一発」
横っ腹に蹴りがヒット、そのまま思いっ切り力をかけ吹っ飛ばす
体制を崩しながら吹っ飛ぶが途中から立て直し転がりながら立ち上がる
「た、確かに甘く見ていたようね」
「そんな事言って、まだ本気出してないじゃないですか」
「あら、バレてたのかしら…でも流石に今のには反応出来ないわよ」
そう言うとソフィアさんは何かを唱え始める
魔法か?
「『肉体強化』…『天の盾』…『破壊者の覇気』」
「何ですかそれ?」
「強化魔法よ、悪いけどここからは私も本気よ」
「へぇ…いいですねえ」
「気を逸らさない、『業火の竜』」
竜の形をした巨大な炎がこちらへ飛んでくる
魔法剣士か、カッコイイねぇ
「『闘気技・崩壊』」
闘気技ってのはまあ、闘気を使った技みたいなもんだ
その竜へ向かって拳を放つと跡形も無く消し飛ぶ
と、目の前までソフィアさんが迫っていた
「甘いわよ!」
「よっ…ていうか、さっきより攻撃重くないですか?」
「あれだけ付与してればそうなるわよ」
かなり攻撃重くなった、魔法ってスゲエー…ってまた何か唱えてるんだけど
「『氷塊の一撃』…ちょっと寒いわよ?」
頭上から巨大な氷塊が落ちてくる、ちょっとじゃなくてかなり寒いです
って足凍ってるし…やられた
ソフィアさんはバックステップでその場を離れ、氷塊の着地点には俺一人立っている
「流石にアレはキツイな…はぁ、『重力砲』」
手を翳しデカイ重力の塊を氷塊に向けて放つ、当たるがビクともしない
「そんな程度の攻撃じゃアレは止まらないわよ」
まあそれが狙いな訳では無いからな、俺が指を鳴らすと氷塊は粉々に砕け散った
「…なかなかやるわね、今度は何をしたの?」
「先程放った重力を使って内部から外側へ掛かる力を爆発的に大きくした迄ですよ」
「そんな使い方まで…『獄炎の風』」
「ノータイムですか…流石です」
多分あれ合成魔法だよな…風と炎の
スゲェ序列1位、もう二度と手合わせは御免したい
「『闘気技・旋風陣』」
足にまとわりつく氷を砕き、勢いよく三回転蹴りを放つ
すると竜巻が起き炎の渦を消し去る
それから暫く、攻撃されては防御…そして反撃を互いに繰り返していた
数十分経っただろうか、痺れを切らしたのかソフィアさんが提案をしてきた
「ディラン、お互いこれで最後にしましょう」
「いいですよ、渾身の一撃ってやつですか」
「ええ、このままだと埒が明かなそうだからね」
「それは俺もなんとなく思ってました」
剣を構えるソフィアさん、拳を構える俺
「『覇王の力』…『神狩りの剣』…『竜の咆哮』」
「その状態から更に上乗せするんですか」
「じゃなきゃディランの上には行けないと思ったからね…因みにどれも攻撃力アップよ」
「その情報要らないです…『闘気解放・最終段階』」
両者力を溜め、そして解き放つ
「『 破滅剣の破撃』!!!」
「『最終闘気技・覇天』」
俺の拳とソフィアさんの剣が交わると辺りが真っ白に染まった
気が付けば俺はベッドの上、つまり向こうで死んだんだろう…隣を見ればソフィアさんも既に目を覚ましていた
まあ、あの爆発の中を気絶で耐えきれたらそれこそ人間辞めてる
「わ、私が……まさか…ひ、引き分けに持っていかれる…とは…」
「はぁ…もう二度とやりたくないね」
と言うかそんなに悔しかったのかよ
外を見ると既に全員の生徒達が戻ってきておりこちらを覗いていた
「おい!アイツ序列1位と同時に目を覚ましたぞ!」
「はぁ!?マジかよ!…って事は引き分けにしてきたってことか!?」
「それってかなり…いや滅茶苦茶凄くないか!?」
煩せえお前ら、こちとら精神的に疲れてるんだよ…あんまり騒がんでくれ
「でも向こうでは何が起きてるか分からないじゃん、もしかしたら狡してたのかもよ?」
「確かにそれは一理あるな、こっちからじゃ見れないし」
等と抜かす生徒にツツジ先生が
「不満があるならソフィア生徒に聞け、もしくはお前らがディラン生徒とやってこい…今ここにある結果が全てだ」
と、バッサリ切り捨てた…イチャモンを付けていた生徒は黙ってしまう
カックイイね先生、本当そういう所好きだよ
「本当に強いわね貴方…何者なのよ」
「その言葉そっくりそのまま返しますよ…お互い化け物って事ですよ」
という訳で無事かどうかは分からないが授業が終わった…さあ夕飯だ
仮想空なんちゃらの部屋からでて更に実技室から馬鹿達でる
と、そこで声をかけられる
「君がディラン君だよね?」
割と美形な男に声をかけられた、例えるならアレだな…ナイト系と言うよりプリンス系の男、分かるかな?
「さっき序列1位と一緒に目覚めたろ!?いやー凄いね!憧れてしまうよ!」
「ああ、そりゃどうも…えっと、誰だっけ?」
「な、何だって!?こんなに美形で美しい僕の顔を忘れたと言うのかい!?というより昼に自己紹介している筈なんだが…」
「あー…悪い、ソフィアさん辺りから全然聞いてなかった」
「おぉ、何と言う事だ……まあいいだろう!ところでディラン君、夕食をご一緒してもいいかい?」
まあ俺は全然構わないけど、ていうかナルシスト気味だけど割と面白いなコイツ…嫌いじゃない
「俺らも構わんぜ!」
「私もいいわよ」
レヴィは頷きオリヴァーはグッと親指を立てる
そういや名前聞いてなかった…ま、まあ本当の意味で聞いてなかったんだけど
「そういや名前なんだっけ?」
「ああそうか、聞いていなかったんだよね…ルークだ、今度はちゃんと覚えておいてくれよ」
「ああ、覚えたよ…ちゃんとね」
という訳で食堂に到着、席に着くとルークが二人の生徒に声を掛けた
「そこの君達も一緒にどうだい?ディラン君も構わんだろ?」
「いいよ全然、気にしない…馬鹿達は放っておいて構わん」
「ば、馬鹿達って…一応君達友人じゃないのかね」
「唯の腐れ縁だよ」
「じゃ、じゃあ…俺達も一緒にいいのかな、ゴメンね」
「有難うございます」
背の高い短めの髪の男子生徒と平均的な身長でボブカットの女子生徒が同席する
……なんと言いますか、二人共顔がなかなか整っておりますな
「俺の名前はウェイブだ、宜しく頼むよ」
「私はフェルトと申します、宜しくお願いします」
「美しぃこの僕はルーク、よく覚えておいてね」
「……ディラン」
「お前単純過ぎだろ…オリヴァーだ、宜しくな」
「流石ディランね……レヴィよ、これから宜しくね」
わざわざ話すこともないだろ…全員の自己紹介が終わり夕食を食べ始める
「なあルーク、この二人を誘った理由って?どう見ても初対面だろお前達」
「それはだなオリヴァー君、教室の時からそうだったんだがこの二人はどのグループにも入りづらそうにしていたからね」
「あら、案外優しいのね」
「というか、それお前も一緒なんじゃないか」
「て、手厳しいねディラン君…僕の場合は美し過ぎるが故に周りが近寄ってこないだけなんだよ」
……ちょくちょく入ってくるナルシストさえどうにかなればいい奴なんだけどな
「ディランさんって、もっと怖いイメージがあったんだけど…面白いね」
「はい、私もそう思ってました」
「コイツが怖ぃ?そりゃ何かの間違いだってごめんごめん!重力かかってるから!!潰れるから!!!」
何か腹たった、凄くウザかったコイツに言われたことが…だが後悔も反省もしてない
「実の所僕も最初はそう思ってたんだよ、と言うより君達とても話しかけづらかったんだよ」
「ディランはともかく何で私達まで?」
「そりゃあ、レヴィさんとオリヴァー君は常にラブラブモードで話しかけづらいし…ディラン君に至ってはオーラからして近づいたら殺られそうな気がして」
「あ、それ俺も何となく思った…唯一隣だったフェルトさんとは話せたけど」
「バカップル達と一緒にされるのは御免だね、少なくともコイツらよりはマシだ」
俺ってそんなオーラ出てるのか?自分だと意識がないから全然分からんな
そんなこんなで友人が3人程増えまして、今日のところは解散…その後は何も起きずそのまま就寝