20話
3日目の夜、皆が就寝についた後…ソフィアさんが話し掛けてきた
「ねえディラン、作戦が成功したのは良いけど…異能科は勝てるかしら?」
「ん〜…俺の見立てだと今のままじゃ厳しい、と言うか絶対無理ですね」
「そう……残念ね、勝ちたかったのだけど」
「おやおや、何を仰っているんですかね?」
「その口振りだと何が策でもあるように聞こえるわよ?」
「まあ、別に策って程のモノじゃありませんけど……そうですねぇ、明後日…いや明日の午後位になれば分かりますよ」
意味が分かっていないのだろう、ソフィアさんは首を傾げて?を頭に浮かべている
まあ楽しみは後に取っておいた方が楽しめるからね、今はまだ黙っておこうか
翌日
昨日の作戦が効いた様で、騎士科と魔法科は別々に攻めてくることになった
こうなってしまえば防衛は容易い
「何か拍子抜けだな、今までが今までだった所為もあるだろうけど」
「まあ楽なことに越したことはねぇだろオリヴァー?俺はこの方が楽でいいね」
「何かお前、今日は随分と機嫌がいいな」
「まあね…お楽しみが待ってるからな」
「?……まあいいや、ご機嫌麗しくて何よりだよ」
「そんな事より、ほれ…お出でなさったぞ」
異能科教室を中心として東側から騎士科、西側から魔法科の生徒達が攻め入って来た
まあ一科づつ相手にすればどうってことない、それに明らかに人数が昨日より少ないな
まあ恐らくは警戒してきたのだろうな、取り敢えずやりますか
一方その頃、南側にある実技棟で魔法科と騎士科がぶつかり戦闘が始まった
午前中の戦いは三科共に変化は特になかった
しかし午後になると急に魔法科、騎士科衝突地点に変化が起きた
ルーズが前線に参加し魔法科が押される形になったのだ
「急にどうしたんスかルーズさん?突然前線に参戦なんかして」
「いや…何だろうな、今の内に攻めておかないと不味い気がしてな」
「その予感が当たらないといいッスね」
「…………ああ」
暫く魔法科の前線を下げていると、不意に放送が入る
勿論、学園長からのモノであった
『はいはーい、ここで緊急放送デースよー!なななんと!序列1位と2位の制限を解除!ということで宜しくね〜、最後まで頑張ってね皆☆』
瞬間、気が飛びそうなるほどの膨大な闘気が異能科後者側から発せられた
『序列1位と2位の制限を解除!ということで宜しくね〜、最後まで頑張ってね皆☆』
待っていた、待っていたぞこの時を……!
「フ、フフフフ…クフフフフ……ヒャハハハハハハハハハハハ!!!!」
笑い上げながら『闘気開放・結』を発動して周りに闘気を放つ
最っ高だねこの感覚!久方振りの闘気は本当に最っ高だぜ!!
「『闘気技・羅翔波』」
クルッと一回転する反動をそのまま乗せて拳を思いっ切り振るう
発せられた衝撃波は地面を抉りながら前に立つ標的達を一瞬で吹き飛ばしていく
「う、うわぁ…ディランがマジだ……」
「化物が完全復活したな」
「ヒャハハハハハハハハ!!!どうしたどうした!その程度かよお前らぁ!!」
反対側の魔法科に向けても羅翔波を放ち全滅させる
今までの分、これから返させてもらおうか
所変わってルーズ達
「……伝令、旗防衛陣に連絡…旗なんぞ捨てて全速力で前線に加わるように」
「はい!?しかしそんなことしたら!!」
「馬鹿野郎、解放された化物相手に何人掛かろうと適うわけねぇ…だったら一刻も早く逃げて死者を減らす方が先決だ」
かなりの剣幕で言い放つルーズ、ディランの持つ本当の恐ろしさを唯一知る男である彼の最善の判断である
「わ、分かりました!」
全速力で伝令は駆け出した
「………間に合えばいいんだが……よしお前ら!今の内に点数を稼ぐぞ!!」
「「「「「「おおおお!!」」」」」」
てな訳で現在俺は騎士科の本拠地へと駆け出しています
さっきカノナさん経由でソフィアさんには魔法科を頼んでおいたのでね
ん?アレは騎士科の軍勢じゃないか?……まあいい、取り敢えずは旗を取りに行くか
って着いてみたら蛻の殻…ルーズめ、いい判断を下したじゃねぇかよ
一先ず旗を折る、そして向かうは騎士科の軍勢が向かった方向へ!!
まあ今の俺なら一瞬でケツには追い付くんだがな
「よう、そしてサヨウナラ」
「へ?うわあああああ!?」
地面を殴り隆起した地面で数人を吹き飛ばしていく、追い立てるようにして攻撃するのも楽しぃなぁ全く
「さあさあ逃げろ逃げろ!!『闘気技・隆起岩砕』!!」
地面を殴ると前方に向かって岩が凄まじいスピードで隆起して行き騎士科生徒達を吹き飛ばす
「まだまだ楽しませてくれよ諸君!!」
「クッ!一体騎士科の連中は何を焦ってここまで必死になっているのだ!?」
「ト、トップ!現在も我が軍の前線は推される一方です!!」
「何が起きているというのだ!!」
と、ここで放送が入る
『序列1位と2位の制限を解除!ということで宜しくね〜、最後まで頑張ってね皆☆』
「…な、何だと!?よりによってこのタイミングの悪い……いや、ルーズはもしかしてこれを見越していたのと言うのか?」
「トップ!騎士科後方より凄まじい勢いで序列2位らしき男が追い立てています!!」
「なっ!?クッ…これでは騎士科を倒したところで奴に旗を取られてしまいまう……旗は破棄して構いません!湖の方へ逃げなさい!」
マーフェルが出した指示の元、本拠地を破棄し…北にある湖の方へと脱出する魔法科
脱出は成功
……………したのだが…
湖へ向かう道のり途中、そこに立っていたは……
剣を地面に突き刺し、柄に両手を重ねるように乗せ仁王立ちをした…首輪の外れた序列1位と言う名の魔王だった
「ソ、ソフィア……」
「久しいわねマーフェル、一体何処へ行こうとしていたのかしら?」
「な、何故ここに貴女が居る」
「まあ少し……御礼をしに来ただけよ」
次の瞬間、膨大なまでの魔力が解き放たれる
ソフィアの内に眠る魔力量ほんの一部なのだが……
「さあ、覚悟はいいかしら……『災厄齎す紅き空』」
ソフィアの頭上に巨大な魔法陣が現れる…すると無数の隕石が魔法陣めがけて飛んできたのだ
「は!?嘘だろ!?」
「や、ヤベェんじゃねえかココ?」
「……に、逃げろぉぉぉぉぉ!!」
しかし時既に遅し、降り注ぐ隕石の爆風に飲まれていく魔法科生徒達
マーフェルはバリアを張り何とか凌いでいるようだ
「まだまだ終わらないわよ…『氷塊の嵐』」
未だに隕石が降り注ぐ中、無数の巨大な氷塊が大量に降り注ぎ始める
氷塊は地面へ激突すると氷柱を立て、魔法科生徒達を氷漬けにしていく
そして氷漬けになった所へ隕石の爆風が追い打ちをかけるという何ともえげつない事になっていた
「更にもう一つ…『抉り裂く死の暴風』」
超巨大な竜巻が三つ程生成され、各々の不規則な動きをしながら魔法科生徒達を吹き飛ばしていく
「最後にもう一つ…『裁きを下す万の雷光』」
そして最後に空から巨大な落雷が雨の如く降り注ぎ始める、これもまた氷塊とコンボして大変な事になっている
「ちょ、超大型魔法を四つ同時に使用とか化物過ぎだろあの人!!」
「んな事抜かしてないで逃げうぎゃあああああああ!!!」
無数に降り注ぐ隕石に氷塊、追い打ちをかけるかの如く不規則に動き回る三つの超巨大竜巻…そして止めに巨大落雷の雨
この光景には正に『地獄絵図』という言葉がピッタリだ
しかしまだ地獄は終わっていなかった…
騎士科を追い立てていたら物凄い光景に出くわしてしまった、降り注ぐ隕石に氷塊と雷光…そして巨大竜巻
それに巻き込まれていく騎士科生徒達
何だこの地獄絵図、つかソフィアの魔力量気持ち悪っ
「これは俺も加わらなければな…ソフィアさんが空なら俺は地面を攻めるか」
重力支配を高出力で使用する
操るのは……地下の遥か底
「上がってこい…『重力操作・人口噴火』」
瞬間、地面に亀裂が入りマグマが吹き出す
そして所々からマグマの火柱が立ち上り始める、空も地上も…もう貴様らに安全な場所など存在しないのだよ!
「うわぁぁぁぁぁぁ!?今度は地面から火柱が!?」
「マジでどうなってやがる!?」
フハハハハハハハ!!これこそ正に地獄絵図!!
一方、ソフィア&ディラン以外の異能科生徒達はと言うと
「何だあの地獄絵図、絶対近寄りたくないな」
「彼処だけ世界滅亡してるわよね絶対」
「たとえ世界が滅ぼうとも俺達は一緒だぜハニー」
「勿論よダーリン、いつてだって一緒よ」
「ハハハ…相変わらずブレないよねオリヴァー君達」
「諦めた方がいいわよウェイブ」
「フェルトさんの言う通りさウェイブ、あの二人の空間に入れるのはディラン君位だろう」
「……だよねルーク」
現在は全員が騎士科校舎屋上にて観戦中である、改めて二人の化物具合を思い知らされる事になった異能科生徒達であった
『はーい終了ー!!さてさて、4日目の結果発表をどとどんっといっちゃいましょう!!』
騎士科 796点・魔法科 681点・異能科 781点
ふむ、悪くないな…この分なら明日にはぶっちぎりで一位は確定だろう
やはり蹂躙とは楽しいですなぁ、ハハハハハ!
「ところでディラン、何で解放が予想出来たのかしら?」
「まあ簡単な話、あの人が俺達に首輪を付けて他科との対等な大戦がお望みだと思いますか?」
「……成程ね、納得したわ…全く貴方も学園長も本当にいい性格してるわよね」
「こりゃお褒めに預かり光栄でございますな……まあ
、だから心配無いって言ったでしょう?」
「そうね、結果オーライってところかしらね」
「取り敢えず明日も気の赴くままに蹂躙するとしますか、ではおやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」
こうして4日目が幕を下ろし、後は最終日を控えるだけとなった




