18話
一方その頃、攻撃隊はと言うと
「ハニー!久し振りにハニーの目が届く所で戦えるよ!」
「ダーリンの勇姿楽しみにしてるわよ」
「期待していてくれよ」
バカップルは相変わらずの様だ
「ディラン君は毎日これを見ていたのか」
「……まあ、仲がいいのはいい事じゃないかしら?」
「そうだねフェルト、因みにルークの調子はどうだい?」
「ディラン君に鍛えて貰ってからというもの異能の調子が最高潮さ!そんなウェイブ君だって自信ありげじゃないか?」
「まあ、俺だって伊達にディランの修行で耐えてた訳じゃ無いからね」
「はははっ!それもそうだな!」
「よし…フェルト!レヴィ!オリヴァーに異能を掛けて!」
「「了解!」」
フェルトの『臨戦時の指揮』とレヴィの『防護壁』をオリヴァーに張る
作戦は兎に角オリヴァーを暴れさせる事である
「ッしゃっあぁぁ!!いつもより数段速い俺の力を見せてやるぜ!」
「行くよ!」
魔法科本拠地の森の中へと侵入した攻撃隊、勿論の事そこらじゅうに魔法科生達が防衛として立っていた
「『超最高速度』!」
オリヴァーは構わず辺りの魔法科生達に突っ込んで吹き飛ばして行く
「じょ、序列10位!」
「慌てるな…これも予想通りだ」
「トップ、どう致しましょうか」
「慌てて陣を崩せば相手の思う壷だ、冷静に処理しろ」
「了解!」
だが然し、オリヴァーの速さは尋常ではない為魔法が当たる訳も無く虚しく空へ散ってゆく
「おらおら!そんな速さじゃ俺には追いつけないぜぇぇ!!」
次々と魔法科生達を跳ね飛ばして行くオリヴァー
「ト、トップ!速過ぎて当たりません!」
「ならサポート組を攻撃しなさい」
「分かりました!」
「うわぁぁぁ!?ナ、ナイフが!」
男の指差す方向には数十本等という甘い数では無い、数百本ものナイフがウェイブの周りに浮遊していた
「俺だって強くなったんだ…『百華躁剣』!」
「うおおおお!??!?」
「ぎゃあああぁぁ!!!」
蛇の様に大量のナイフ達を畝ねらせながら魔法科生達へ飛ばす、余りのナイフも鞭のように扱い周りの敵を薙ぎ払ってゆく
「クソッ!アイツが邪魔で序列10位に狙いが付かねぇ!」
「早くあいつを沈めろ!」
「分かってるっての!」
「甘いぜお前ら、まだまだ速さが足りねぇな!」
「「うぎゃあぁぁぁぁ!!!」」
少しづつではあるものの、徐々に旗との距離を縮めてゆくオリヴァー達
「クッ…そのまま後ろの補助異能を使ってる二人をやりなさい!」
「了解したトップ!」
ウェイブの隙を見てレヴィとフェルトに向けて魔法を放つ…が、その行く手を炎の壁に阻まれる
「フフフ、フハハハハ!!強くなったのは何もウェイブ君だけじゃないさ、この僕だって一段と強く…そして美しくなったのだよ!!」
「本当、アレさえどうにかなればいい奴なのよね」
「良いじゃないレヴィ、アレがルークの個性だしイイトコなのよ」
「……それもそうね」
「刮目せよ!我が美しき炎を!『劫炎の大火球』!」
「ぎゃあああ!!!」
炎の極大火炎級を投げつける、地面に触れると爆発を起こし辺りの魔法科生達を巻き込みながら爆炎を上げる
「数で押し切れ!あの炎だって限りはある筈…」
「馬鹿な事を言わないでおくれよ、僕の異能…この炎は『永久炉の炎』、消える事は無い永遠の炎なのさ!!」
ルークが剣を振るうと後を追うように炎が舞い上がる、何人かの魔法科生を巻き込んで行く
「オリヴァー君!旗までの道を切り拓く!」
「ありがてえぜ!」
「フッ…『業火絢爛』!」
剣から大量の炎が噴出される、炎は一直線に伸びてゆき…旗までの道を作った
「アイツらを旗に近づけさせるな」
「了解!」
「アラン!アランはまだ戻らないのか!?」
「もう行けます」
「よし、アイツらに向けて撃て」
「オリヴァー君下がれ!」
「んなこた分かってるっての!!」
アランがオリヴァー達へ手を翳す
「はぁぁぁ……『炸裂』!」
次の瞬間、爆発がオリヴァー達を包んだ…魔法科生誰もがもう終わったと思った
「良くやりました」
「は、はい…」
「しかし、貴方のそれは燃費が悪すぎますね」
「すみません」
「いえ、いいですよ…さて、もう一度陣形を……な!?」
立ち込める砂煙が晴れてゆくと、そこには全員が無傷で立っていたのだ
「ふぅ、危ねぇ危ねぇ」
「本当…危機一髪だったな」
「一応、私だってディランの施しは受けたのよ…まああの修行は死ぬかと思ったけどね」
レヴィが5人全員を覆うほどの『防護壁』を張っていたのだ、それだけ拡散していても爆風程度ならば防げるようになったのだ
「ではお返しだ…『炸裂型火炎爆弾』」
圧縮された火炎球をポイッと投げる、地面に触れると『炸裂』並の爆発が起こった
砂煙に紛れてオリヴァーが異能で一気に旗までの距離を縮める
「しまった!」
「チェストォォォ!!」
勢いを殺さずに旗目掛けて飛び蹴りをかます
見事に傍に当たるとボキッ!と音を立てて綺麗にへし折れた
「よっしゃああ!!」
「チッ…こうなったらせめて被害は抑えましょう、部隊を組み遠距離から攻撃しなさい」
「「「「「「了解!」」」」」」
「あのすばしっこいのは魔法で退路を塞ぎつつ誘導しながら応戦しなさい」
魔法科生達は部隊を組みオリヴァー達を遠距離から攻撃し始める、連携が立て直されてきていた為迂闊に近づけない
「旗を折ったはいいが…こりゃ長く持ちそうにないな」
「だが、やれる所までやろうか!」
「勿論だぜ!」
ルークは再び後衛の警護でウェイブば後方支援且つ牽制役、オリヴァーは相も変わらず暴れ馬
然し、炎に尽きは無くとも体力には限界があるもの
「うぐっ!」
「ルーク!!」
「す、すまないね…僕はもうそろそろ限界の様だよ…ならせめて自分の力で尽きるとしようか!!」
ルークの頭上には『炸裂型火炎爆弾』よりも遥かに巨大な火炎球が出来上がっていた
「レヴィさん!皆に『防護壁』を!」
「ルークはどうするつもりよ!流石にその大きさの爆風じゃ全員に張ってたら防ぎ切れないわよ!?」
「僕はどの道体力の限界、僕抜きで張れば何とかなるでしょう?」
「ま、まあそうだけど…まさか自爆する気?」
「お喋りはこの辺にして……僕が操れる限界の炎だ『炎戒帝球』!」
超巨大な火炎球が地面へ下ろされると先程の爆風とは桁違いの勢いで爆炎が広がって行く
魔法科生は巻き込めたようだが、部隊を組んでいた為複数の部隊にはシールドを張られ防がれてしまったようだ
そしてルークに限らず体力の限界は来ていた
「ご、ごめん…なさい…」
「フェルト…お疲れ様」
魔法に被弾したフェルトがリタイアした
「そろそろ私も…限界ね、きゃあ!」
「ハニー!」
「ごめんね…ダーリン……先に…戻るわね」
そして続いてレヴィもリタイアしてしまう
「オリヴァー!君はもう撤退しろ!君一人じゃ無理だ!!」
「いいや、ルークが漢張ったんだ…最後の最後まで足掻かせてもらうぜぇ!!」
「全く、付き合わされる身にもなってくれよ…まあ悪くないけどね!!」
残る力を使い二人は必死に魔法科生達を倒してゆくが、ただえさえ多勢に無勢の陣形だったのだ…もう限界だった
「うがっ!…無理しないでくれよオリヴァー」
「ウェイブ……分かってるさ、こいつで終いにするつもりさ」
オリヴァーは異能を使い高く飛び上がる、高く高く高く……そして
「ルークが身を犠牲にしたなら俺も負けてられんな!『人鉄槌』!」
地面へと全速で突っ込んで行く…かなりの規模で地面がめくれ上がり魔法科生も大勢巻き込んだ
まあ、生身でそれを行ったオリヴァーが戻されるのは言うまでもない
「思った以上に粘られましたね…旗もおられましたが、まあ点数では負けていないでしょう」
オリヴァー達の攻撃隊が全員教室へ戻されたそうだ、お疲れ様
時間もそろそろ終わりだな
『は〜い終了、2日目お疲れ様〜デス!では気になる2日目結果発表と行きますか…じゃあドドン!』
騎士科 493点・魔法科 395点・異能科 201点
うーむ、旗はなんとか防衛出来たし魔法科の旗を折る事は出来た……が、防衛で少し死に過ぎたな
点数が開きすぎだな、やはりニ科に組まれると面倒だな
夜、昨日と同じように北側の湖にて騎士科と魔法科のリーダー…詰まるところルーズとマーフェルが船に乗っていた
「今日の作戦で異能科が潰れると思ったが…ディランの野郎、思った以上にやりやがる」
「全くですね、挙句の果てに我々の旗は壊されてしまいましたし」
「そりゃ自業自得だろう…まあそんな事より明日の策を練ろうじゃないか」
「そこで一つ私からか提案だ」
「何だ?」
「我々には広範囲殲滅型魔法がある、そこへ異能科を上手く誘導すれば一網打尽に出来ると思うのだよ」
「おいおい、それだとお宅らに得が行っちまうじゃねえのか?」
「我々の方が点数は少ないのだから良かろうが、それに上手いこと殲滅型魔法で異能科校舎ごと破壊できたのなら旗はお前達にくれてやる」
「ほう…ならばその話乗った、但しその殲滅型魔法とやらを放つタイミングはこちらで決めさせてもらうぞ…うちの奴らが巻き込まれたのなら本末転倒だ」
「構わんぞ」
「そうだな…腰に赤い布を巻いた騎士を使いに出す、そいつの指示に従ってくれ」
「請負った、なら今日はこの辺にしておこう」
船は岸へと戻っ行った……その数分後、丁度船が停滞していた辺りの水面が揺れる
すると一人の人影がそこから出てきた
「……と、言う事らしいわよ…詰まりあの二科はやはり手を組んでいたって事」
全員が納得の顔をする
てか少し待て、今の話を聞いてると何だ…アンタ待ち伏せの時間と話を聞く時間を含めて合計二時間以上水中に居たってことか?
しかも泡を立てないように息を遮断して?
意味不明だろ何その肺活量気持ち悪っ
「おいディラン、言いたい事があるなら口で言え」
「いえまさか…まあ予想通りと言うか嫌な予感が当たったと言うかな」
「どうしたものかな」
俯き思考を回し始める委員長
「やはり…その使いを仕留めるか」
「それはあまり効果的ではないと思いますよ」
「何故だ?」
「使いが来ないと魔法科の輩は怪しむでしょう、それに手を組んでいるとは言え敵同士…いざとなれば勝手に撃ち込むでしょう」
「それもそうか、ならどうしたら……」
何、心配する事は無い…二科が組んでいるという確信が持てたのならそれで充分
寧ろそれが知れたのなら大きい
「……ディラン、貴方また嫌な笑浮かべてるわよ」
「おや、これは失敬」
「と言うことは何か策があるってことよね?」
「流石ソフィアさんよくお分かりで」
「…貴方の事が分かってくるに連れて何故か居た堪れないわね」
失礼な、それじゃあまるで俺が嫌な奴みたいじゃないか
……まあ嫌な奴か、そんなこたァどうでもいいんだよ
「それで、策とは何かなディラン君」
「まあ早い話…アイツらの作戦を利用しようって話ですよ」




