12話
お馬鹿さんが起こした騒動から数週間程過ぎたある休日
食堂にてアランと共に昼食を取っていた
「そう言えば今日はオリヴァー君達と一緒じゃないね」
「あー…アイツらは別で昼飯食ってるよ」
「そうなんだ」
何で一緒じゃないかと言うとな、この学園の寮には各部屋に色々揃っている
冷蔵庫や風呂は勿論、洗濯機や台所まで…詰まり自炊も出来る訳だよ
そこでレヴィが愛妻弁当作るとか言い出しまして、俺の分も作ってくれるとは言ってくれたんだが流石に断った
何故ってか?
お前らよく考えろ、愛妻弁当とか言って超気合い入れて作った弁当をオリヴァーが喜ばない訳が無いだろ?
そんな中で昼飯とか食ってみろよ…口から砂糖吐いて飯に手がつくわけねぇだろ、全部デロ甘くなるぞ
そんな飯食いたくねぇよ
「はぁ…本当何なのアイツら」
「ははは…でもいい幼馴染みさん達じゃないか」
「まあな、アイツらは一応俺の事を分かってくれているし…理解もしてくれてるからな」
「うん…あ、じゃあ俺もディランの事知りたいし今度一緒に街に行こうよ!」
「え、まあ別にいいが…そこまで気を使わなくてもいいんだぞ?」
「そう言うのじゃなくて、友人として知りたいんだよ」
何この子、メッチャええ子やんけ…俺とは真反対の性格してるな
やっぱ親が違うと育ち方も違うのかなぁ…まあ別に親父や母さんが悪いって訳じゃないけど
と、そんなことを思っていると魔法科の男がアランに声を掛けてくる
「やっと見つけたぞ、トップの指示で今から演習やるんだとよ」
「え?今からやるの?」
「ああ、俺もついさっき聞かされた」
「うーん…分かったスグ行くよ…ゴメンねディラン、そういう事だから」
「気にするな、早く行ってこい」
「ディラン…?お、お前あのは時の野郎!」
おいおい、なんかコイツ喧嘩っぱやくないか?まあ俺からしたら大歓迎ですけどね
「テメェあの時はよくも!!」
「おい止めろって、ここ食堂だし…」
「喧嘩なら買ってやるぜ?来いよ」
まあそれを言った瞬間に相手が魔法を放つ形に入ったので容赦無く顔面に横蹴りを入れてやりました
「ぶがぁ!!」
「ひゅー…危ないな全く」
「はぁ、だから止めとけって言ったのに…」
そっちの意味で止めろって言ったのか
と、次の瞬間に食堂に女子生徒の大声が響く
「ちょっと貴方達!一体何してるのよ!ここは食堂よ!!」
身長は少し低め、体のつくりもやや控えめな水色髪の女子生徒が近づいてきた
タイミング悪いなぁ、今俺こいつの胸倉掴んで持ち上げたところなんだけど……あれ?これ弁解難しくね?
「さあ、洗いざらい吐きなさい」
何かよく分からんけど生徒指導室?的な部屋へと連行されまして、事情聴取中でごぜぇます
「そういや手前は一体何者だよ」
「風紀委員よ、それぐらい知っておきなさいよ」
ふーん、この学園にも風紀委員とかあるんだ…てかこんなチッコイのがやってんのな
「貴方、失礼なこと考えたでしょ」
「さぁね、どうだろうか」
コイツもソフィアさん同様エスパーなのかな?
「じゃあ先ず名前、何年…あと何科か教えて」
「ディラン、一年で異能科……そういやアンタの名前は?」
「ヘレンよ…で、何でさっきみたいな状況になったの?」
「向こうが魔法使おうとしてきたんで正当防衛したら……まあ、ああなりました」
「正当防衛と言うよりは過剰防衛に思えたんだけど?」
「気のせいじゃないですかね、人それぞれ価値観ってものは違いますしね」
「まあそういう事にしておく」
確かに過剰防衛は一理あるな…いや一理どころかモロ過剰防衛な気がするけど気にしたら負けだな
それより今気になってるのは
「……さっきからどこ見てるの貴方」
「何でお前…男用の鎧付けてんだ?」
惚けた顔になるヘレン、だが次の瞬間に顔が真っ赤になった
「な、ななな何言ってるの!これは私特注の物だ!!」
「ああ成程、合うサイズがないと」
「ち、違う!そういう事じゃなくて……わ、私に合う性能の鎧が無いだけ!」
「止めとけよお前、余計惨めになるぞ」
「煩いわ!!」
「やけに騒がしいけどどうかしたのかしら?」
ドアからソフィアさんが現れた、ヘレンは立ち上がり近くに駆け寄る
「あ!ソフィアいいところに!」
「ああヘレンか…何でディランも一緒にいるのかしら?」
「そこの人に連行された」
「また何かしたのね貴方、本当に程々にしなさいよ全く」
うーむ、しかしこう…並んでしまうと……なんと言うか
俺も立ち上がりヘレンの近くまで行き肩に手を置く
「な、何なの」
「ドンマイ、でも諦めんなよ…ソフィアさん程にはならくてもこれから成長するかもしれないから」
「うっさいわ!余計なお世話!!」
序にソフィアさんから土鉄拳を頂戴しました、やっぱり超痛いんだけどあれ
「なぁ、どこに向かって歩いてんだ?」
「貴方みたいな変態セクハラ野郎には学園長から鉄槌を下してもらう!」
「もう既にソフィアさんから貰ったんですけど…」
「自業自得よ、何を言い出すかと思えば全く貴方は本当にもう……」
「サーセン…てか何で付いてきてるんですか?」
「嫌な予感しかしないからよ」
ソフィアさん、それは予感じゃなくて事実だと思いますよ
「失礼します」
「おや、風紀委員のヘレン君じゃないか…何かあったのかな?」
「少々、色々ありまして……」
事情説明中、殆ど俺の事をディスってただけに思えたのは俺だけか?
唯、胸の事については話してなかったな…報告をしてたのは最初の喧嘩のところだけだった
「ほぅ…本当にそれだけかなディラン君?」
あ…アレ絶対分かってるな
「いやまぁ、少々胸部について話したんですが…ほら、やっぱり貧乳だってステータスだと思うんですよ…ですけどやっぱり男としては大きい方に目が行ってしまうと言いましょうか、母性溢れる大きい方が魅力があると言いましょうか……しかし俺は貧乳だって悪くないと思いますよ?それだってその人の個性ですしそれが好きな人はいますしね?唯こう…なんと言うか……差があり過ぎるとやはり大きい方が好意的に見えてしまう…と、言ったところですね」
話終えるとソフィアさんとヘレンは完全にドン引きしていた
オーヴェンさんはうんうんと頷いてるけど
「まあそれは状況が状況だよね、隣にソフィアちゃんが居たから違いがハッキリしちゃた…まあ気に病むことは無いよヘレン君」
「うわあああああああああ!!!もうやめて下さいよ!!!」
「あ、ソフィアちゃんそう言えb」
瞬間、土鉄拳がオーヴェンさんの顔面にめり込んでいた
後ろへ吹き飛び頭から落ちる
顔パンは痛いなぁ、せめて頭にしてほしい…いやと言うか極力しないで欲しい
「この屑共は揃いも揃って変態ばっかり……はぁ」
「ちょ、サラッと屑とか言わないで下さいよ」
「何よ、文句でもあるの?」
「いえ何でもありません」
だからその構えてる拳をしたに下ろしてくだされ、俺の頭が吹き飛んでしまいます
「酷い目にあった…」
「まあ、なんと言うか…ドンマイ」
「貴方の所為でしょうが!!」
ガルルと犬が威嚇するように俺を睨む、すると唐突に
「契約決闘!私としなさい!」
契約決闘?この前グズには決闘を申し込まれたけど何か違うのかな?
「ソフィアさん教えて」
「はいはい、契約決闘は序列変化じゃなくてお互いの要望を賭けて決闘するのよ…因みに要望の内容に制限は無いわ」
「あー、勝った方の要望を飲むと…そういうヤツか」
「その解釈で問題無いわ」
ふーん、なかなか面白そうな決闘の方法だな…制限が無いなら結構色々な事が…
「言っておくけど内容に制限は無いとは言え非道的な内容は社会的に殺されるから覚悟しなさい」
「いや俺別に何も言ってないんですが…」
「貴方の考えてる事なんて大体分かるのよ」
やはりエスパーなんじゃないかこの人、まあそういう事ならば色々問題無さそうだな
「私が勝ったら貴方の学園生活におけるその態度を改めて貰うから!」
「俺が勝ったら?」
「ふふん!そんな事は万が一にも有り得ないから!」
そんなに主張しても無いものは出てこないぞ…何がとは言わないけど
序列とか興味無いけど一応聞いておこうかな
「なぁ、俺の序列は知ってる?」
「知らないけど?」
デスヨネー、だろうと思ったよ
「私たち生徒会役員は序列争いには参加しないの、その代わり役員全員が序列20位以上の実力なの!」
さらに主張したよこの人、だから無いものは出ないって
「はぁ…ヘレン、一応この男は…」
「おっとソフィア、みなまで言わなくていいの…どの道私が負けるなんて有り得ないからね!」
随分と自信たっぷりですな、尊敬するぜそういう所
そんなに自信が持てる奴ってなかなかこの世には存在しないからな
するとソフィアさんが小声で
「一応、手加減はしてあげて頂戴…生徒会役員だしね」
「まあ善処しますよ…それでヘレンさん、決闘のルール上万が一俺が勝った場合も要求は飲まれる訳だよな?」
「ええ、勿論」
「待ちなさいディラン、先ず私に言ってからにしなさい」
「いや、あの…俺まだ何も言ってないんですが……じゃあ耳貸してください」
「何だ?」
ソフィアさんにだけ聞こえるように耳元で内容を話す、すると渋ったような顔で
「う…うむ、まぁそれなら問題…無い……かな」
「へいキタコレ」
かなり渋ってらっしゃるが許可が下りたのだから存分にやらせてもらおうか
「心配し過ぎだソフィア、どんな要求だろうと私が負けることは無いのだから!」
「はいはいじゃあ行きますよー」
どうやらヘレンさんは魔法科の様ですな、手を翳し魔法を唱える
あ、因みに今は広い広場的な場所にいて人一人居ないので問題無いよ
「『火炎弾』!」
「せい!」
「は!?」
飛んできた炎の弾を蹴りで吹き飛ばす、呆気に取られた顔を浮かべるヘレンさん…はっ!と我に返り次の魔法を唱える
「『氷結弾』!」
「せい!はっ!とう!」
「な、何で!?」
三つの氷塊を飛ばしてくる、殴って蹴って殴った…以上
氷塊は粉々に砕け散った、今度は唖然とした表情になる
「なら俺から行くぜ?」
「え、ちょ…うわっ!?」
足払いをし、尻餅をついたところに寸土目の正拳突きをする
「そ、そんな…有り得ない……」
「はい俺の勝ち…で、どうするよ?」
「き、きっと何かカラクリがある筈!もう一回!再戦を希望する!」
「まあ別にいいけど、その場合俺の要求をもう一つ聞いてもらうからな?」
「うっ…か、構わないさ!」
「ディラン、貴方…」
「言いたい事は大体分かりますよ…ところで紙ありませんかソフィアさん?」
「え?…まぁ、あるけど」
貰った紙を10枚ほどに切り分ける、そしてそれぞれの紙にある事を書いていく
何を書いてるかって?それはお楽しみ
「要求はこの紙でクジをして出たものにするな」
「まあ内容は…一応、多分…大丈夫……だろう」
二回戦目、飛んできた風属性の魔法を『闘気技・旋風陣』で吹き飛ばした後に掌底の風圧でヘレンさん自体を飛ばした
三回戦、開始と同時に『闘気技・地返し』
地面に手を突っ込み卓袱台返しの要領で地面の一部を持ち上げる
一緒に持ち上げられ後ろに倒れたところに正拳を寸土目
そんな感じで合計4回戦やって全て俺が勝った結果になった
「うぅ…どうして勝てないの〜!」
「はぁ…ヘレン、人の話は最後まで聞くものよ」
「ど、どういう事ソフィア?」
「コイツ…詰まりディランはね、私と同等…寧ろ下手すれば私よりも強いのよ」
「…………え?」
それを聞いたヘレンさんは最初は何を言っているか分かっていないような顔をした
「な、ななな何言ってるのソフィア…そ、そそそんな訳ないでしょ」
「残念ながら事実よ、試験時に超巨大クレーターを作った張本人でもあるわよ」
するとみるみる青ざめていく…おっと、何やら逃走を図ろうとしているな
肩をガシッと掴む…ギギギと擬音がつきそうな感じで首をこちらに向ける
「おいおい何処へ行かれるのですか風紀委員殿…これからがお楽しみじゃないですかぁ」
「え、えええーと…わ、私これから仕事が」
「負けた回数が4回だから4つ要求を飲んでもらいましょうか」
「ヒッ!」
「なぁーに、悪いようにはしない積もりだよ」
さてさて、4回程クジを引くとしましょうか
どうなるか楽しみだなぁ
「全く、何処で道草しているのかしら…しっかり伝えた筈ですのに……」
私の名はシスフェル、この学園の名誉と栄誉ある役職…生徒会・会計を務めているエリートですわ!
今は同じ生徒会の風紀委員、ヘレンちゃんを探しているところですわ
今日は会議があるとしっかり伝えた筈ですのに幾ら待っても帰ってこないのですわ
何時もならしっかり五分前行動をしているヘレンちゃんが珍しいですわ…一体何処にいるのかしら
廊下を歩いていると人だかりを見つけましたわ…全くこう言ったものもヘレンちゃんの仕事だというのに、何をしているのかしらか
生徒達を散らせようと近づいた時……とんでもない光景が目に飛び込んできましたわ
巨大な看板の足に縛られた涙目のヘレンちゃん、看板には大きく『貧乳万歳』と書かれていたのですわ
更には首からも板が下げられ『この度、私ヘレンは風紀委員という権力を使い無実の生徒に冤罪を掛け…etc』と書かれていましたわ
その傍らには顎に手を添えながらニヤニヤと嫌らしい笑を浮かべる男と、溜息をつきながら悩ましげに額に手を当てているソフィアの姿が…
な、ななっ!!何なんですのコレは!!!?!??




