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8:世界は薔薇色。

 結果として、私は女の子であることを隠さずに育つことにした。


 というか、5歳も過ぎれば女の子らしい顔立ちというのは隠せないらしい。

 男の子の様な恰好をさせても結局は年齢とともにバレてしまうし、がさつな女の子に育ったら可哀想だという意見もあったからだ。

 これにはイゴールにぃとおばあちゃんが喜んだ。ようやく女の子らしい恰好させてあげられるって。

 ワンピースとかスカートとか、フリルのついたのとか可愛い刺繍のとか色々用意してたようです。


 で、おじいちゃんが長老の1人シンリナスさんの後ろ盾を得たよと報告ついでに私を冒険者にしたい旨を伝えるとお父さんは渋い顔をして、次兄のドムにぃが「じゃあ俺がお前の武器を作ろうな!」と張り切り、アイセルにぃとビッケルにぃは冒険者でも女の子なんだからってアクセサリーを作ってくれるらしい。

 イゴールにぃはお父さんと同じで渋い顔をして、「イリスは女の子なのにぃ……」と口を尖らせていた。


 思うんだけど、最近もうオネエ化を隠してないよね?

 私の世話をして、お母さんの代わりをするからって家の中で女の子らしさを得てもらおうと思ってとか色々言ってたけど、その素養天性のものだと思います。


 家族は最初気味悪がったりもしたけど、結局ありのままを受け入れているので寛容な家族だよね。

 まあ私も兄がオネエとか中身が大人なんで面食らったけど、イゴールにぃのこと大好きです。


 しかし改めてみると私のこの状況。

 実はすごくない?

 冒険者な長男に、がっしりと兄らしい兄の次兄、やんちゃ系の三男四男、そしてオネエ系? おかん系? な五男、そして実直な父親とまあ割と身内贔屓を引いたとしても彼らは割とカッコ良い。

 そんな彼らにちやほやされて大事にされちゃう私、あれこれなんて乙女ゲー?


 ……いや、私思い切り幼児だけどね。

 とはいえ、私が冒険者として独り立ちできるかはともかく自衛の技を身に着けることには家族の誰も反対しなかった。

 結局自分の身を守るには、まず自分も努力しなくちゃね!





 さてそんな中、うちの家族がカッコ良いのは本当で、最近自宅の工房でドムにぃ目当てに兎人族の冒険者の人が通い詰めてる。

 名前はピッキーさん。黄色みがかった毛を持つ、長耳兎族の女の人だ。

 気が強くて、ウサギらしく発達した下半身をふっくらボトムスに包んだぴぃんと長い耳を揺らしてる女の人だ。

 ちょっと短気みたいで混んでたりするとたしたしと足を踏み鳴らすのがなんとも可愛い。

 ボトムスからぴょこんと出てる尻尾がふりふりするのもすごく可愛い。


「こんにちはピッキーさん!」


「あらイリス、今日もいい天気ね。……あら?」


「えへへ、どうかな?」


 なんせお得意様のお1人なので、幼児らしく可愛く接客だ。我ながらあざとい。


「イリス、もしかしてあなた……女の子だったの?」


「うん! このワンピースね、イゴールにぃが用意してくれたの! 可愛い?」


「ええ可愛いわ! そう、女の子だったのね。気が付かなくてごめんね?」


「ううん、いいの! 今日は武器のお手入れ?」


「え? いいえ、あの……そうね、あの、バックラーなんてあればいいかなと思って!」


 ああ、用事がなくて今一生懸命思い浮かべたんですねわかります。

 ドムにぃの為にこんなに恋する乙女なんだけど、対するドムにぃは朴念仁(激ニブ)です、ごめんね。


 そんなことを察するくらいには中身がトシ食ってるわけですが、勿論表にそれを出すわけにはいかない。


「ピッキーさんは冒険者だけど、ひとりでやってるの?」


「そうよ、まあランクはそこまで高くないけどね。私はまだシルバーにも届いてないから」


「でもすごいね!! ケガしないようにバックラー、ドムにぃに作ってもらおうね!」


「ありがとう、でも私は素早いからあんまりケガしないのよ」


 冒険者にはランクがあって、ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナと続いてその後もあるそうだけど、大抵の冒険者はシルバーからゴールドが良いところだとピッキーさんは教えてくれた。

 えっへんと胸を張るピッキーさんだけど、ちょっと短気なだけでとても良い人だからやっぱり怪我はして欲しくない。

 方便だとしても、バックラーは良い選択だろう。

 腕に装着するタイプの小型バックラーならきっと邪魔にならないはずだ。


「ピッキーさんがケガしたら、私悲しいもん。」


「……ありがとう、そうね、過信は禁物だわ。イリスは優しいのね」


「えへへ!」


 撫でられるって気持ちいいよね!!


 和子むかしでは考えられなかったのでとても嬉しい。

 おっと私を不憫なものを見るかのような目で見るな。


 こう見えてゲームとかも不自由はしなかったから乙女ゲームとかMMOとかやりまくってたんだぞ!!

そんな中では愛されてたんだからな!


「ピッキーさんがおねえちゃんになってくれたらいいのになー」


「ふぇっ?!」


 びょん、とピッキーさんが飛び跳ねる。

 ちょっと驚いただけなんだろうが、その高さったら……兎人族ってすごい。


 忙しなく耳を揺らして、ピッキーさんは視線も揺らしてる。

 そんな私たちのそばに、ようやく他のお客さんがはけたのかドムにぃが寄ってきた。


「こら、イリス。お客さんを困らせたらだめだろう?」


「ドムにぃー。困らせてないよ! ピッキーさんがね、バックラー見たいんだって!」


「バックラーかい?」


「え、ええ、ここここんにちはドム!!」


「こんにちはピッキー、ちょっと待ってておくれね」


 いくつかの見本品があるのだろう、ドムにぃは私を肩車するとそのまま中に入る。


 うちは既製品も武器屋に卸しているけど、直に来てくれた人のために見本品を置いてその人用に新しく作ったりカスタマイズする仕組みだ。

 勿論、既製品を買うよりもずっとお値段は上がってしまうので冒険者でも中級以上じゃないとなかなか手が出ない。

 手が出ないけど、やはり自分の体に合った武器や防具を使うというのは一瞬の勝利をつかみ取るのには欠かせないものだという。


「イリス、一体何を言って驚かせたんだい?」


「ピッキーさんみたいな人がおねえさんになってくれたらいいのになーって」


「ははは、そうだなあ、イリスも女の兄弟が欲しかったのか」


「ドムにぃが結婚すればその人はイリスのお姉さんでしょ?」


「そうだな、まあいつになるのやら・・・」


(朴念仁!!!!)


「そ、そういうことなら!」


「え?」


 私たちの会話が聞こえていたのだろうピッキーさんがふんぞり返るようにしてドムにぃを見上げて、でも顔真っ赤である。


「わ、私がドムのお嫁さんになってあげてもいいわよ!!!」


「え?」


「か、勘違いしないでよね?! イリスのためだけじゃなくて、ちゃんとその、ドムのことだって好ましく思ってるから私がこう言ってあげてるんであって、誰にでも言ってるわけじゃないんですからね!!」


 ツンデレとはちょっと違う?

 キレデレ? これはキレデレってやつなのか?


 しかも何気にその後小声で「私も妹ってもの欲しいなと思うし。イリスなら絶対可愛がる自信あるし」とか私にまでデレてる。

 何この可愛い人。

 思わず肩車してくれている兄を見れば、告白すっとばしてプロポーズされてるんだとようやく理解したらしく顔どころか首と耳まで真っ赤にして、手にしていた見本品をぼとぼとと落としている。


「いや、あの、……え? え?」


「ど、どうなのよドム!!」


 周囲はようやくかよとか早く受け入れちまえよとか、まあ野次馬ができていて正直私もそっちに行きたい。


 囃し立てたいのをうずうずと待つ双子とか、後ろで何故かドキドキしてる父親とか、店の前でできてる人だかりの中に混じる長兄とか……え?


「じゃ、じゃあお友達から!」「ヘイレムにぃ!!!」


「よ、よろしく!!」


「「「うおおおおおめでとおおおおお!!!」」」


「ヘイレムにぃがいる!」


「な、なんだって?!」


「えっ、イリスどこ?!」


「ドム兄貴おめでとうってヘイレム兄貴?!?!?」


「やあ、ただいま!!」


 姉候補ができた上に、兄が帰ってきた!


 とまあベッケンバウアー家はいきなりの喜びに思わず店を閉めてしまった。いいのかそれで。


 で、ピッキーさんを加えての昼食となって、思わず「先生! ご無沙汰しております!!」とかおじいちゃんに彼女が平伏しちゃったり、ヘイレムにぃがプラチナの冒険者と聞いて遺跡(ダンジョン)からの出土品(アイテム)に目を輝かせたりと大変にぎやかだった。


 今度はピッキーさんちに挨拶に行かなきゃねということで善は急げとドムにぃとピッキーさんはすぐに出て行った。

 なんせサーナリアは広い国。

 ピッキーさんちはここから町馬車を乗り継いで三日はかかるとのことで、後日両家顔合わせするにしてもまずは当人たちから挨拶しようねと送り出されたのだった。


 で、問題は異種族婚にはとてもお金がかかるとのこと。

 聖都に行ってそれぞれの種族が扱う教会に寄付金を収めないといけない。

 こうすることで安易な異種族間での婚姻を規制し、また離婚を防ぐというシステム。

 ただこれがべらぼうに高いので実際に結婚するにはもう少し時間がかかるのかもしれない。

 まあ今日告白したばっかりだからね!


 で、イゴールにぃは夕飯の支度にとりかかってる。

 今日は長兄が帰ってきたお祝いをするからごちそうなんだそうだ。

 勿論双子は狩りに行った。


 とまあそんな感じで兄弟たちが散ったところで私を膝に抱えていたヘイレムにぃが、やれやれと言った感じでため息を吐き出した。

 兄さんは、真面目な人なんだと思う。

 兄弟の中で一番、家族を想っているんじゃなかろうか。


 私が生まれた時の事件の段階でまだ15歳だった兄さんは、母さんの仇を探るために冒険者になると言ってそこの学校に通うことにした。

 そこで力をつけて、有力者の懐に入って色々探っていたに違いない。

 それに加えてこまめに私たちに連絡を取り続けてくれていた。色々お土産を送ってくれたり、写真のようなものを送ってくれたり。

 お陰で離れていても私たちはヘイレム兄さんを忘れることはなかった。


「イリス、お前の師はヘイレムが適任であると思うのであるよ。ちょうど呼び戻そうと思ったところだったので丁度良かったのである」


「へえ、イリスは冒険者を目指すのか?」


「吾輩は、良いところまで行くと思っているがね」


「そうか。……そうか、じゃあ俺がいる間は俺が先生になってやろうな。恐らく5年は一緒に居られるはずだ」


「5年?」


「うん……うん、そうだなあ、順を追って話そう。折角家族が揃っているんだから」


 やっぱり平穏な人生って、そうはないのかな。

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