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C級勇者はどうやら逆ハーとかいう状況を手に入れた。  作者: 玉響なつめ


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64:ゆりかご

 カモフラージュ・スライムと別れた私たちは、歩きながら幾つかミドリアーナさんに過去のお話を聞かせてもらっていた。

 やっぱり気になるのは『ゆりかご』とかいう団体のことだ。


「ミドリアーナさんは知ってる?」


『私も直接メンバーを見たことはありませんよ~』


 やっぱりそう上手い話はないのか!

 当時の人なら知ってるのかなーって期待はあっさり砕けてバルバスさんも目に見えて落胆してる。

 ミドリアーナさんはちょっと申し訳なさそうにしてたけど、いやいやこれはこっちの都合だから!


「ミドリアーナさんの頃の“ゆりかご”ってどんな活動してたの?」


『そうですね……貧困層の所にいつの間にか人員とお金が運び込まれて生活水準が上がったとか、悪徳商法を極めていたような連中がいつの間にか身ぐるみはがされてたとか……まあちょっと尾ひれがついた噂だと思いますけど』


「聞く限り正体を明かさない義賊っぽいね?」


『私たちが知っている限りで“ゆりかご”のメンバーには王族も含まれてましたからね』


「えっ?」


『神々の寵児は各国にいましたけど、寵児同士というのは直接敵対関係にないみたいです。どちらかというと人とは違う感覚を分かち合える、そんな感じだったみたいですよ』


「そ、それは新しい発見だ! ぜひ詳しく教えてくれんか!!」


『ええ、いいですよ~』


 バルバスさんがぐわっと勢い込んで詰め寄ってもミドリアーナさんはほわっと笑っているだけだ。

 うーん、この人この強面もなんのそのだなあ。接客する際にはもっと強面がいたのか?

 それとも幽霊になったことで精神面がさらに強化されたとか……?


 なんでも神々の寵児っていうのはただふわっとした表現なわけじゃないらしい。

 現在では聞かない話だけど、当時では神さまの意思がしょっちゅう人々に感じられたらしいので『選ばれた人』が存在していたんだと。わあ、夢物語じゃなかったね!

 それで、信仰篤いとかそういう基準があるかどうかはわからないけどそれぞれ神々が自分の力を特に貸した相手……それが神々の寵児と呼ばれる、要するに特異能力者だってこと。

 中には当然その力に溺れて色々しでかした人もいたみたいだけど、割とその力を使って世界平和しようよ! って人がいたらしい。らしいっていうのはミドリアーナさんも直接関わりがなかったから。

 でも行動を起こすのが個々だったり、どこの誰がやった、ってので揉めたり、寵児に対する嫉妬とか羨望とかでややこしい事態になって結局は戦争が起きたり暗殺事件が起きたりと散々な結果が出たので寵児たちはやっぱり一人でできることは限られているとかなんとかで協力し合うようになった。

 だけど敵対国だったり敵対勢力だったり、神々同士がいがみ合ってたりと色々な要素がまじりあって基本的には『秘密組織』として所属を隠していたんだと。


 まあ、ゆりかご、ってのはそういうものらしい。

 ただ当然全員がヒミツの存在ってなると、名前を騙ったものとか事件とかが出た時に証明ができない。というわけで最もその時中立でありながら強力な国家の、しかも王子という立場の寵児が代表として名乗りを上げた。他のメンバー、活動については秘密だが『ゆりかご』の行動は把握している、と宣言した。

 時にテロ行為を阻止したり、時に難民問題を解決したり、時に迷いネコを探して街を破壊してしまったりとその幅は広い。


 ……いや、猫を探して町を破壊ってどういう状況?

 そんな私の疑問にミドリアーナさんは朗らかに教えてくれた。


『なんでも錬金術に長けた寵児が作り上げたゴーレムが猫を追いかけて街中を直進したっていうことで王子が謝罪に出向いたことが新聞で残されてたんですよ~』


 ……うわあ。

 王子、大変だったんだなあ。何事も代表者って辛いね!


 良い事ばっかりじゃないみたいだし。


 実際、寵児たちに対して各国は戦争の時に協力を要請したりもしたんだそうだ。こっちのほうが不利だ、難民が出てしまう、罪もない国民が哀れじゃないのか! とね……。

 もしくはあの国は酷い、あの国の罪もない民を救うために立ち上がった自軍の兵士をひとりでも国元に無事に返してやりたいから協力しろ、とかね。


 うん、施政者って酷い。

 いや政治を悪用しているというのが正しいんだろうけど、何が正しくて何が正しくないのかは結果論として後の歴史家が判断するってやつなんだろうな……。

 

 とにかく『ゆりかご』は独自のルールで動いていた組織。

 少なくとも、ミドリアーナさんが死ぬ直前まで確実に存在していた、本当の秘密組織なのだ。

 寵児同士の敵対はなかったとされているけど、私はあったと思うなあ。


 組織に属さない相手との、裏での戦いはあったんじゃないかな。

 力を与えてくれた神さまのためなのか、理念の違いなのかはわからないけど。

 ただどっちも強い力を持っているから、ろくでもない戦いになることはわかっているし無傷では済まない。


 だから、きっと表面上平和だったんだろう。


 ……あれ、もしかして世界が変に戦争ムードなだけじゃなくて色んな傷跡があるんだっていう話は、まさか……寵児同士の戦いの、結果、とか……?


 

 ……ついでにマッヒェルさんってまさか……?


「ねえイリス」


「え、ああなぁにアリュート」


「……その、」


「うん?」


「カモフラージュ・スライムがついてきてるんだけど……どうする?」


 どうするって言われても。

 もう私従魔契約できないし?


「……連れてけないって説明だけする?」


「今はフェルがそう言ってるけどついてきちゃうんだよねー」


 うーん。連れてって大丈夫かなあ……。

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