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C級勇者はどうやら逆ハーとかいう状況を手に入れた。  作者: 玉響なつめ


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57:幻の図書館を求めて

「……ねえ、アリュート」


「なんだい、イリス」


「ちょっと聞きたいんだけどね?」


「うん」


「私たちが護衛するのよね?」


「そうだよ」


 私の真面目な質問に、アリュートも至極真面目に応えて――目を反らした。


 だってそうだろう。

 私たちよりずっと体格のいい竜人(ドラゴニュート)が5人。

 カソックみたいなデザインの臙脂(えんじ)色の上着の前をはだけた状態に黒塗りの鋼の鎧をその下に纏い、巨大な盾を各自持った彼らに囲まれる私たちがどう見たって護衛される側だろう。

 でも実際は逆! 私たちが彼らを護衛するんだよ?!


 いやぁ……知らない人が見たら絶対わかんないって……。

 っていうか寧ろこの装備でこの人たちが学者だとか絶対ないって……見た目詐欺でしょ……。


 で、調査団の団長バルバスさん・副団長のサミジーナさん、バルバスさんの息子のレラジエさん、それとブエルさんとシトリーンさんだ。

 皆ファミリーネームはない。黒竜族、ただそれだけで十分らしい。


 皆、(たてがみ)は灰褐色で一見すると見分けがつかないようだけれど実際は結構顔立ちが違う。

 指は3本。足は彼ら専用のブーツを履いているけど、確か文献によると鋭い爪があるとかあった気がする。

 はあ、かっこいいなあ……。

 レラジエさんだけは私にウインクしてくるのが困ったものだけど。


「いい加減にせんかレラジエ!!!」


「なにもないですよ、私は彼女に挨拶をしただけです」


「イリス殿も、申し訳ない。息子は少々変わり者でな……」


「いいえ、大丈夫です」


「感謝する」


「まったく酷いなあ、親父殿は……。私が説いたのはただ、種の繁栄は拘るだけでは成り立たないのではないかというだけではありませんか」


「竜人族を何だと思っている! いい加減にそのふざけた思想を口にするのを止めよ!」


 うーん。

 どうやらレラジエさんは竜人族の“婚姻は同種族とすべき”という風潮に異を唱える人のようだ。

 その所為でバルバスさんはレラジエさんを伴って他国への調査団という形でほとぼりが冷めるのを待っている……ってとこかな?


 まあいいけどね、そこのところは人それぞれ。

 私たちは私たちで依頼をこなすことが大事だよね!!

 ちなみに驚くことなかれ、レラジエさんは17歳だって……竜人の成人は20歳だからあと3年だけど、体格的にはもう他の大人と遜色ないね。


 ちょっと言動がアレだけど、レラジエさんはとても友好的で、おじいちゃんが言うような理屈っぽくてとっつきにくいという人ではなかった。

 だからこそ、種族的にはちょっと変人扱いなのかもしれない。


「大きな盾ですね」


「我々黒竜族は、守護を得手としておってな。その分攻撃は苦手であるし、己から戦闘を仕掛けることもせん。しかしダンジョンの内部調査となるとそうも言ってはおれんのだが……正直、我々は守らせればどのような攻撃も耐え忍ぶと誇れるが、敵を倒すのにどれほど労力を要するかと思うとな」


「そうなんですか……あの、祖母のアマンリエとはどのようなお知り合いなのですか?」


「うむ、聞いておられぬか」


 そうなんだよ。お祖母ちゃんの推薦でのこの仕事、受けることになったから報告したのよ。

 そうかいって言っただけでおばあちゃん微笑んだだけだったのよ!

 それ以上は自分で調べなさいと言わんばかりの態度でした。


 だから聞いてみることにした。

 うん、単純明快。


「アマンリエ殿はジャナリス殿と共に竜人の国に歴史の研究に来られたことがある。あの方は古代文字に造詣が深く、ジャナリス殿は多岐に渡って歴史に詳しい御仁であられた」


「そうなんですね……」


「当時すでに二つ名を持っていたお二方に我らが記す書物の類を見せて欲しいと請われて、見せられるものを見せ、こちらも色々と学ばせていただいた。少々ジャナリス殿はのめりこむと周りが見えなくなるのが難ではあるが、良き学者よ」


「ありがとうございます」


「孫娘殿も聡明なようでなによりだ。……息子が、迷惑をかけるやもしれんが……」


「いえいえ、ちょっとびっくりしましたけど……悪意があるわけじゃないですし……」


 そして私たちが向かうのはシェンテのダンジョン。通称、書物の庭。

 なんでそんな名前がついてるって?

 いや、なんでもかつてそのダンジョンに挑んだ人がものっそい図書室を見つけたらしい。

 けどその時酷いダメージを受けて撤退、慌てて準備しなおして挑み直したけどその図書室は見つけられなかったそうだ……。

 でもそれがダメージの所為での幻覚とかではないことは証明されている。

 その冒険者は、ひとつの書物を持ち帰ったからだ。


 それは失われた魔法の一部を記した魔法書で、古代文字で書かれ、ところどころ風化が進んでいたために解析は不可能な部分が大多数であったけれどその存在は認められ。

 だから、幻の書がたくさんあるであろう巨大な図書室がどこかにある……はず、というのが伝説のあらましだ。

 おじいちゃんも挑んだそうだけど、何かしらの条件を満たさないと出現は難しいというところまでいって結局それを見つけられなかったという。

 条件ってなんだろう……?


 バルバスさん曰く、そこには巨大な図書館が存在した歴史があるんだって。

 それはバーラパーラパルスネラさまの時代よりもさらに前、この世界に“神さま”が普通に存在して、私たちのような多種族すべてと言葉を交わし、恵みを与えてくださった時代。

 神の与えてくれた恩恵を集め、記した書物を各地で集めた大図書館が世界中に複数存在していたそうだ。

 それがダンジョンの種に飲み込まれて今のダンジョンのどこかにあるのだろうというのが見解だ。

 そして今回の目的はそれを探すこと、というのが一応名目。


 なにせじゃあ今まで何してたのよって話になっちゃうでしょ?

 そう、そりゃレラジエさんのことで国を出てきてるから、じゃあついでに今までやれてなかった調査に踏み出そうか、というオチなわけですよ!

 彼らは知識に貪欲だけど、他の国に足を延ばしてまでどうこう……というほどではないそうだ。

 竜人たちの国にあるその書物のあった建物はあるにはあるけど倒壊してしまって書物のほとんどが失われているんだそうだ。

 でもその残った書物でもものすごく情報は得られたけど、無理してまで得るほどかというとそこまでではないしな、というのが正直なところらしい。


 ちょっと興味あるよね!

 今回マッヒェルさんはお留守番です。

 アズールは勿論一緒。

 セレステもダンジョンまでの行路は一緒だよ!


 因みに私がマジッグバッグを持っていることを正直に話して、食材の一部を多めに持っていくことにしました。

 地図はギルドで購入済み。

 といっても、こちらも踏破者がいないダンジョンなので途中までしか情報がないけど……まあやっぱりないよりましただよね!!


 それにしても虫だの本に擬態する魔法生物だの蜘蛛だの……あと罠が結構あるとか、亡霊とか……この図書館なにがあったのかしらね……?

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