56:調査にきた竜人族
すっかりマッヒェルさんが私の侍従っぽい形だったり家庭教師だったりする今日この頃。
ちなみに従魔にできました。
人型でもモンスターなら従魔にできるということで、私が持つ従魔枠3つが見事に埋まりました。
なんでしょうね。
ハルピュイア(階層ボス)
神馬(神の御使いが生み出した)
リッチ(反則的に強い)
……その主がC級勇者ってこれなんていう皮肉なんでしょうね?
っていうかおかしいのの集まりですね!!
まあそれでマッヒェルさんにも従魔の宝石が現れて、それがマッヒェルさんの杖の先っぽに収まった。
きらきらと魔力の塊であるその従魔の石はおどろおどろしかった杖に収まるとあっという間に杖そのものが姿を変えてしまった。
まあ、マッヒェルさん自体がボロボロのローブに魔法具であろうサークレットを身に着けた骨? ミイラ? みたいな姿なので禍々しいんだけどさ。
杖はドクロと骨で作られてるみたいなものだったのに、丸い宝石を咥えるようにした蛇のデザインの杖になったのだ。
なんか超頭良さそうな杖になったのだ。
その説明をしている私はなんだか頭が悪そうなのは気のせいである。
マッヒェルさんは私たち菩提樹の3人の教師でもあるので、魔法の使い方、魔法に対抗する術、相手が何を使うのかの予測方法など多岐に渡って知識を披露してくれる上、普段は基本的に空間魔法を使って彼が普段使っていた隠れ家の方にいてくれるらしい。
私が希望した、医薬品の開発に取り組んでくれているんだとか!
その上さらに、私が出したアイデアから今は持ち運び可能なコンロの開発までしてくれているらしく、なんて万能執事……。
ちなみにマッヒェルさんは、人間の国での名前はオロバスと言ったんだそうだ。
捨てた名だけれどと吐き捨てるようだったけれど、私の従魔となるにあたってけじめをつけたかったんだそうだ。
あまり過去は詮索しないようにしよう。
◆◆◆
さて、お金を稼がねばならない。
いずれは結婚の許可を得るために聖都に行くわけだが、その旅費、途中の滞在費、生活費、もしかすれば聖都で家を借りる可能性だってある。
暮らすのにはお金が必要なのだ。
とはいえ、私とアリュートは成人していないし、婚約が認められたからと言ってじゃあ旅に行ってらっしゃいとなるわけでもない。
私も今すぐにどうこうとは思えないし、もう少し技術と知識を学んでからでいいと思っている。
フェルとアリュートもその考えには同調してくれて、マッヒェルさんの指導の元、サーナリア国内のダンジョン攻略と依頼をこなすことになれていくのが優先だろうということで落ち着いた。
そんな矢先のことだった。
「……指名依頼?」
「ええ。アナタたち菩提樹に調査団の護衛の依頼が来ているの。調査団の目的はダンジョン化した遺跡の状態確認。相手方は竜人族よ。彼らの要求はダンジョン内における護衛及び調査の協力、日数は10日。攻略が目的ではないし、遺跡を傷つけないこと。ダンジョンモンスターを倒した際のドロップ品は冒険者に譲るということよ。金銭的にはこんな感じ」
受付嬢から差し出された依頼書を見て、私たちは顔を見合わせる。
今のところパーティリーダーというのは決まっていないから、こうやって私たちは一緒に考えるのだけど……まあ見た目的にはフェルなんだけど、実質アリュートがリーダーでいいと思うんだよなあ。
私? 目立ちたくないですね!!
「悪くないと思うけど、竜人族か。彼らが魔人族に偏見がないなら構わないと思うよ」
「その点は大丈夫。彼らにはパーティ構成は説明してあるし、キミらの年齢も伝えてあるよ。若くても優秀だってギルドとしても保障したからか、彼らは優秀なら人種も問わないし偏見は特にないって言ってたわ」
「竜人族ってでも強いんでしょう? 護衛は必要なのかしら」
「どの種族だって特性はあるけれど、荒事が苦手な人ってのはどこにでもいるものよ」
くすくす笑ったサルキーっぽい犬人族の受付嬢はどうお? と色っぽくしなを作りながら私の頬を撫でる。
え。私にそういう色気振りまいてどうするんですかね。おねーさま!!! って思わず抱き着きそうになったけど。
受けるならすぐにでも予定を合わせたいから泊っている宿屋に来て欲しいという言伝もあったので、私たちは受けることにした。
宿屋に行くと、もう聞かなくてもわかっちゃうね。
黒くて、鈍く光る鱗。
獣人も体格が良い人たちが多いけど、それらに負けないがっしりとした体つき。
まさに、竜だ。
鋭い目つきに鋭い爪、頭部には角があって鬣は灰褐色だ。
あれは黒竜族。竜族の中でも特に防御に優れ、寡黙で、思慮に富んでいる一族だと書物にはあった。
ちょっと閉鎖的な人たちだとおじいちゃんは言っていた。
緊張して顔をこわばらせてしまった私を他所に、アリュートが進み出て優雅に一礼をした。
「ご依頼いただいた調査団の方とお見受けいたします。我ら菩提樹、ご依頼の件にてお伺いいたしました。団長はどなたでございましょう?」
「ぬ。……わざわざすまなかった。アマンリエ殿の推挙にて、貴君らに依頼をさせてもらった。私が団長のバルバスだ。ここにいない者も含め、我らの調査団は5人、いずれも竜人族の学者だ。自分の身を守ることは最低限出来るが攻撃は得手ではないので護衛を依頼させてもらった。……受けていただけると考えてよろしいか」
「はい、そのつもりで伺いました。よろしければこのまま依頼の詳細を伺っても?」
「助かる」
アリュートの穏やかな笑みに相手は少しほっとしたようだった。
竜人族の人はちょっと表情が読み取りづらいなあ。あの人の年齢もよくわからない。
とりあえず、依頼内容としてはサーナリアでももう少し田舎の方にある、帝国時代の遺跡だ。
そこにダンジョンが生まれたらしく、貴重な遺跡が飲み込まれてしまった。
それの中に危険なものがないかどうか、それを調査するのだという。
危険なものってなんだ? と思ったけど、人工ダンジョンとか作り出したんだから他にも似たような技術でとんでもないのがあったのかもしれない。
あとでマッヒェルさんに聞いてみたらなんとなくわかるかも?
「ねえ、お嬢さん?」
「えっ?」
「とても綺麗な目をしているね、君は。白い肌もとても滑らかで……私の爪が間違って触れたら痕が残ってしまいそうなほどに華奢で……。君も私たちの調査団を護衛してくれる冒険者なのかな?」
「えっ、あの、はいそうですけど……」
「やっぱり。嬉しいね、君のような可憐な人と出会えたなんて。私はレラジエ。見ての通りの黒竜族の若造だ。よろしければ君の名前を教えてくれないかな」
「……イリスです」
「べたべたしないでくれるか、護衛はするが夜伽要員なわけじゃない」
「おや、それは誤解だよ。……立派な番犬がついてらっしゃる」
「きさまっ……」
「レラジエ! 貴様また不要な面倒を起こすつもりか。竜人族として恥を知れ!」
「おやおや、父上は相変わらずだ」
「貴様の所為で我らは故郷を離れほとぼりが冷めるまでの調査団を組まねばならぬというのに、一番反省せねばならぬお前がその体たらく……!!」
バルバスさんはどうやらこのレラジエという人の父親で、この人が何か面倒ごとを起こして国元を離れなければならないらしい?
あれ、もしかしてこの依頼、ちょっと厄介だったりする?
にやり、と笑ったレラジエさんが、私の手を取って恭しく持ち上げたかと思うと、自分の額に宛てさせた。
それは竜人族からすると確か挨拶だけれど、手にキスをするような気障ったらしい行動と同じだったような。
私がその行動に呆れていると、バルバスさんは更に怒りを覚えたらしくレラジエさんに席を外していろと怒鳴った。
「嬉しいなあ、キミは――とても良い香りがする。きっと私と君は相性が良いよ、……異性として、ね?」
去り際に言われた言葉は、聞かなかったことにする!!
というわけにはいかない。
フェルとアリュートが、あっという間に怖い顔をしたから空耳じゃないんだと実感したのだった。




