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C級勇者はどうやら逆ハーとかいう状況を手に入れた。  作者: 玉響なつめ


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23:注意点

 さて、ランドドラゴンのステーキを作ったところでわかったことがいくつか。


 アズールの翼の先には爪があって、それが指の代わりに物を掴める。

 力加減もできるらしく、私の手伝いで剥いだ皮をつまんで兄さんに渡すとかの芸当ができた。

 ハーピーと違って二足歩行ができるけど爪の所為で歩くのは苦手なよう。

 ハーピーはもっと鳥っぽい下半身だからずんぐりむっくりだけど、アズールはすっきりした「足だ」って誰もが言うような形をしてる。

 胸の部分は羽毛が薄くて正直巨乳だから宿屋で渡した装備を付けていたんだけど(と言ってもチューブトップみたいなやつ)、装備したまま小鳥に変身しても小鳥姿に変化はなかった。


 まあそんな感じに、より人間っぽい姿なので骨付きランドドラゴンの肉とか上手に食べるよ!

 漫画肉みたいのを作って渡したんだけど、美味しそうに食べてた。

 スプーンとか渡したら上手に使うのかもしれない。今度試してみよう。


「ナーシエル、スープのおかわりいる?」


「もらおう」


 あとナーシエルは結構食べる。

 頬を膨らませて私の作る料理をもりもり食べる。


 美味しいかららしいけど、まあ、うん……褒められて嬉しいので問題ない。

 スープっていうかシチューなんだけどね。

 野菜は今回持ってきたんだよ! 兄さんのマジッグバッグにも入れたの。


 獣人の国ではシチューが人気なんだよね。野菜をたくさん入れて、狩ってきた肉を煮込む。ものすごくシンプルな家庭料理。

 パン類はそんなに種類がなくて、いっそシチューが主食と言ってもいい。

 パンとかは国外の人の方が好んでる感じかな。でもパンの実みたいなのがこっちにもあって、それが本当の主食。味は普通。人気はない……。

 

 だからシチューが人気なんだけどね! 私はパンの実とシチューと両方食べるのが好きだなあ。

 そのほか人気料理と言えば、お芋を揚げたやつとかかなあ。


「ねえおじいちゃん、どうして私はランドドラゴンに攻撃しちゃだめだったの?」


「だめではないのであるが……そうだね、きちんと説明をしようか」


 3杯目のシチューを平らげたおじいちゃんがどっからか取り出したハンカチで口元を拭いつつ私の頭を撫でた。


「ランドドラゴンの皮は、剥いで見てわかったと思うがとても厚く、固い。並みの冒険者の力では切り裂くのは難しいのであるよ。ヘイレムは熟練の冒険者の域に入っているし、ナーシエルは精霊魔法を武器に使う(すべ)()けているようだ。その点イリスは魔法で倒すことは可能じゃろうから、そこは疑ってはいないよ」


「じゃあどうして?」


「お前さんの魔力を温存するためさ。かといって武器ではイリスの力は弱く、ランドドラゴンに傷ひとつつけられんだろうし牽制にもなりはしないのであるよ」


「……そっか……」


 まあ妥当な線だろう。


 私は魔法に優れているし、普通の7歳児に比べれば身体能力は高めだけれど。

 それでも普通の冒険者では苦戦するというこの階でドラゴンと呼ばれるほどの難敵相手に訓練用の弓で太刀打ちできるほどすごい神童でもない。


 いや、待てよ?

 ナーシエルみたいに魔法力を乗せたらどうだろう?

 それじゃ魔法力温存にならないか……それにやったことないし。

 エンチャント系は使えないこともないけど、矢にかけたことはないしなあ。


 そういえば、前世の記憶に特殊な木を使って作った弓で、弦を自身の魔力で形成してそれを敵に向かって引っ張ると弦の魔力がそのまま矢となって放たれるとかいうのがあったな……。

 今度それが試せそうな木を探してみよう。


 となるとやっぱり非力さを補うのに魔力を使う?

 杖でもう魔法一択という方法も考えたんだけど、それだと魔法が使えない敵や、私の魔力を目的とした人攫い相手とかに難しくなるのが目に見えてる。

 勿論、今みたいにパーティを組んでいれば良いんだろうけど兄さんは勿論仕事があるし、ナーシエルだって臨時だし、信頼出来て頼りになる仲間を見つけるまでは自分の身を護れないとどうしようもない。


 ああー気を付けるべきことが増えたなあ。

 やれることが広がると、その分気をつけなきゃいけない注意点が増えていった感じ。

 むしろやれること以上に出てきた、っていう感じかな。


 まあそれでも絶対無理とかそういう問題じゃないから、解決のために努力すれば何とかなるんだろうと思う。

 幸い私には前世の記憶──“こことは違う別世界の知識”があるんだからきっと何か解決の糸口になるはずなんだから。

 あちらの世界の魔法の研究書を読んだ記憶もあるし、何故か知らないけど本来は出来ないであろうステータス画面が開けたり弄れたりと向こうの世界のルールが適用されているわけだし。

 いやルールっていうかこの世界でまだ使える人が他に居ないだけなのかもしれない。

 かといって私が使ってみてと教えて、相手が使えなかったリスクを考えるとやはり言葉に出すのは躊躇われる。


『何悩んでるの?』


「あ、リリ」


『難しい顔してる』


「うーん、あのね」


 あとわかったことと言えば、リリと私は会話が念話のようなこともできる。

 頭に浮かべた映像を、リリが理解してくれるとかそんなくらいだ。

 でもまあ全部思ったままに筒抜けってわけでもないから、会話の合間にそういうイメージを挟む、みたいな?


『そんなの見たことない』


「試せる?」


『リリ、今のままで魔法使えないよ?』


「そっかぁ……アズールにやってもらうかなあ」


『それは無理じゃない? 従魔だし』


「あーうん……それもそっか……」


 ペットに同じ行動をしろって言う方が無理だろうと言い切るリリに、私も何となく理解する。

 向こうの世界でもサモンとかテイムされたモンスターは、必要以上のことはできなかった。


 リリができたらよかったんだけど。


『リリのことは鑑定だっけ。それはできる?』


「え? わかんない、やってみようか」


 リリは名前以外思い出せない。


 そうか、鑑定してみたらもっと詳しくわかるかもしれない。

 私はリリをじっと見つめて、出てきた表示に息をするのも思わず忘れた。


『どう? どう??』


 にこにこ笑うリリに、私はどうしていいかわからない。


 だって、そこに表示されているのは。


 【リリファラパルスネラの亡霊:Lv.9】だったのだから。

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