21:アズールと一緒
眠って起きて体調が万全に……という思ったのだけど、なぜか兄さんとおじいちゃんが休めとすごく言ってきた。
ナーシエルも二人の様子がおかしいと思ったようだけど、きっと私が魔力枯渇で倒れたから心配なんだろうと彼も心配してくれてなんだか逆にいたたまれなかった。
まあ宿屋で大人しくしている以外選択肢が与えられなかったので、アズールや自分を鑑定してみたりすることにした。
したいとは思ってたからね!
で、結果。
名前 : イリス・ベッケンバウアー
性別 : 女
種族 : 人間
職業 : 勇者
ランク: C
レベル: 30
HP : 9500
MP : 18900
攻撃 : 2000
魔力 : 20000
特技 : 神聖魔法(Lv.1)/回復魔法(Lv.9)/属性魔法(Lv.5)/身体強化(Lv.5)/鑑定☆/翻訳(Lv.9)/アイテム生成(Lv.5)/属性耐性(Lv.7)/恐怖耐性(Lv.8)/知力強化(Lv.8)/魔力強化(Lv.6)/精霊魔法(Lv.3)/先読み/従魔契約
うん、色々増えてる。
っていうかパワーレベリングェ。それなのに増えないHPよ!
特技が従魔契約ってなんぞ?
あとアイテム生成とか属性魔法が地味にレベル上がってた。マジッグバッグ作ったり攻撃魔法の練習したからか。
それと鑑定が☆マークになっちゃってるんだがこれって確か前に見た時がLv.9だったから10になって限界到達なのかな? ワオ!
じゃあ従魔契約とか調べられるのかな。
うーん、ゲームみたいにカーソル乗っけて説明が出るわけじゃないし、システムアナウンスがあったら便利なんだけどなあ。
流石にそれは望み過ぎか。
それにしても従魔契約が特技ってことは、まだ何体か従魔契約が結べるのかな?
そしてアズール。
名前 : アズール
種族 : ハルピュイア
契約主: イリス・ベッケンバウアー(親愛度:3)
レベル: 10
HP : 18500
MP : 3000
攻撃 : 8900
魔力 : 1000
特技 : 急襲 風刃 従魔変化
#親愛度 とは
思わず考えちゃったよ!
ハハハと笑ってごまかそうと思った途端に私にしか見えないそのステータス画面に、追加表示が現れた。
『親愛度:従魔との関係性を示す。数字が高いほど好感度が高く、会話や共同技などが出せるようになる。』
……なんですと?
っていうかこんな説明画面初めて見た!
これが鑑定・レベルマックスの力なのかな。
あ、じゃあこれって便利なのかもしれない。
私は自分の武器をじっと見つめて鑑定してみた。
『練習用クロスボウ:作成者ドム
軽量化と威力を増す改造がしてある。【加護:妹への愛】』
待て。色々待って。
加護ってなんぞ。
『【加護:妹への愛】無事帰還の祈りがこもっている。命中+10。】』
なんだろう、この世界にこういうのあるのか……。
でもそれならお母さんの加護があったっていいと思うんだけど。
ゲームみたいなヘルプがあればいいのにと首を傾げる私に、羽繕いに飽きたらしいアズールが肩に乗ってすり寄ってくれた。可愛い。
「アズールは元の姿の方が楽?」
「チチチ」
うん、会話出来たら楽なのになあ。
「おなか空いたの?」
「チチ!」
うん、それはわかった。
ってことでパンをちぎってあげると、えぇーみたいな顔をされたので干し肉を上げた。
そっちは喜ばれた。
そうか……好感度が上がると会話もできるようになるっぽいし。
でもご飯を上げるっていうのでは上がりにくいだろうし、こればかりは一緒に過ごしてあげてくしかないよね。
アズールの特技に関してはレベルがないみたいだ。
元々持っている特技だからなのかな……?
従魔変化っていうのはこの小鳥の姿になれることなんだろうと思う。
「ねえねえアズール、元の姿には自由に戻れるの?」
「ピ」
「小鳥の姿にも?」
「ピ」
「そっかあ、じゃあアズールが夜一緒に宿屋で休むなら止まり木とか巣材が要るかなあ……とりあえずの簡易なものでいいかな?」
「チチ……」
ダンジョンで手に入れていた植物の種に水を含ませて、私は魔力を注ぐ。
これは前世の技術だ。
特技を突き詰めると建築特化になるという奇妙な勇者パラメーターの……ちょっと悲しくなってきた。
勿論その特技にパラメータポイントは降らなかったんだけど、知識はあったので要はお試しだ。
にょいにょいと急激に伸びた蔓が私の意思に従って編み込むようにして形になっていく。
それは大き目なドーム型の鳥かごの形に上手くまとまってくれた。
勿論出入口つきだよ! イメージ通りになって良かった。
蔓の方も上手く私の魔力を吸えたからか、形を作った後も青々と茂っているし、止まり木部分に補強された蔓と、葉も生い茂らせてある。
天然のベッドっぽい感じにしてみた!
「どうかな、アズール」
「ピピィ、チチチ!!」
「あっ、喜んでくれたの?」
目を丸くしていたアズールが、私の問いかけに羽ばたいて頬ずりしてくれた。
どうやら気に入ってくれたようだ。良かった良かった。
一応この蔓もダンジョン産だけど、安全性はおじいちゃんから聞いているので大丈夫。
なんでもこの種類の蔓はつり橋を作るのにちょうどいい上に、ダンジョン産は地上のやつよりも長持ちするらしいから重宝されているんだそうだ。
勿論育った奴がね! 種から育てる人もいるみたいだけど、場所取るからね……。
「アズール、ハルピュイアの姿に戻って」
鳥かごを堪能していたらしいアズールが、私の願いを聞いて出てきた。
くるん、と宙を一回転したかと思うと、そこには緑がかった羽毛の先が青いグラデーションになっているハルピュイアへと変化していた。
でもダンジョンで見た時と、なんだか違う。
彼女の胸元には従魔の石がきらめいているのは別に問題ない。っていうかあれ伸縮自在のネックレス……じゃないな、体と同化してる?
「触れても、平気?」
「キュルルルル……」
警戒していた甲高い音ではなく、甘えるような鳴き声は許可のようで私はそっと手を伸ばす。
胸元にある石は、まるで意思を持っているかのようにきらきらとしていた。
触れれば魔力を感じて、成程私の魔力だと納得する。
「これは受信機みたいなものかな。私の魔力をアズールに渡して強化したりもできるのかな……?」
「キュルル?」
「うーん、それはダンジョンで試すしかないね。それにしても……」
ダンジョンで見た時のアズールは、こんなに羽が艶めいていただろうか?
ハーピーたちが汚れていたというのもあるけれど、ハルピュイアが特別綺麗かと言うとそういうわけではなかったはずだ。
でも今のアズールの羽は体毛はなんだかつやつやしてとても綺麗だ。
これも私との従魔契約のメリットなんだろうか?
「うーん、うん、とりあえずは変化は魔力を使わないみたいだし、維持してもそう魔力も変化ないみたいだ。とりあえず小鳥状態でいてくれたら一緒に居られるからそっちでいてくれる?」
「キュルルル」
ふわっと羽ばたくとまた瞬時に小鳥になった。
アズール的には違和感がないのか、それとも慣れたのかどちらかは不明だけど鳥かごに入って早速ご満悦そうだ。
私は鑑定の能力を用いて従魔契約を見てみた。
【従魔契約:3体まで可能】
あと2体はいけるのか。
でも魔石が必要なんだろうし……あそこで一応ゲットしておくべきなのかな。
アズールとの相性もあるだろうしそこは悩むところだなあ。
ああ、やっぱりシステムアナウンス的なものがあったら便利なのになあ。
「チチチ?」
「なんでもないよアズール。お水飲む?」
「チチッ!」
私一人だと寂しいからついついアズールに話しかける。
アズールも応じてくれるから、嫌がられてはいないんだろうと他愛ないことをたくさん話した。
これでもう少し打ち解けられたらいいなあなんて打算もあったけど、純粋にアズールと仲良くなりたかったから。
でも私は知らなかった。
従魔契約をした時に、親愛度は通常1からのスタートだということを。




