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16:疑問の氷解、新たな決意。

 年齢が偽られていた結果、色々と齟齬があった気がするので講義を受ける前に聞きたがった結果。

 ヘイレム兄さんが冒険者学校に入ったのは、13歳だった。

 冒険者学校に明確な卒業年というのはなくて、どれだけ学びたいか・同時に冒険者としてどれほどの功績をあげられるかがポイントのようだった。

 それでも上限は定められていて、4年通えば自動的に卒業試験を受けなければならない。

 兄さんは、上限まで通って人脈をコツコツ作ったというわけだ。


 まあ、私の身を護るために作り上げた嘘なので、責めるつもりはない。

 ただ今までの疑問が氷解したと言っても過言ではないので、今度フェルに会ったらこのことを話そうと思った。

 本音を言えば、空白の二年間でお母さんと少しでも過ごせたのかということが知りたかったのだけど。

 そこは残念ながら、私が生まれてすぐの出来事だったのだという。

 ただ違ったのは、聖なる都で1年半は最低でも過ごしていたということだろうか。

 当初は都の守護隊に依頼して、物盗りの犯行と断定されて、抗議してを繰り返した後に、嫌がらせ行為等が続いて店を畳み、そして半年ほどかけてサーナリアへ移動したということだったのだ。

 うーん、正直そんな記憶ない。

 まあ、言い訳するなら赤ん坊から幼児期にかけては半分以上が寝て遊んで寝ての繰り返しの生活なのでこれで1年とかカレンダーを見たり時計が合ったりするような生活でもない。

 つまるところ私自身把握してなかった。


 でも7歳か。

 ってことは小学1年~2年生くらいなのね。

 幼児とばっかり思ってたけど、もうすっかり児童ってわけだね!!


 ……だから何って、とりあえずまあ、認識を改めて修行しようってことくらいかな?

 で、修行と言えばこの遺跡での行動なんだけど。

 ナーシエルが双剣で前に出て、私がクロスボウ&魔法で援護する形。兄さんはフォローで、おじいちゃんは解説。

 ちなみにナーシエルは強かった。鑑定したいくらい。したらなんかバレそうだからやらないけど。

 ついでに私のステータスもきっと上がってるよこれ! 昨日は宿屋で兄さんがずっと一緒だったから見れなかったけど。


 ナーシエルは裕福な家庭ではなかったらしくて、幼いころから狩りをしていたらしい。

 ダークエルフ族は基本的に近接攻撃に特化しているので彼も、彼の師である父親も皆双剣を使うそうだ。

 村全体で裕福ではないけれど、飢えることもない。そのくらいらしかった。

 冒険者になったのは、その方が何かと都合が良かったから、とのこと。


 今でも奴隷制度というのはあって、中には攫われて秘密裏に奴隷にされちゃう例もあるんだって。

 冒険者として登録しておけば、移動先のギルドに連絡さえしておけばどこで消息を絶ったのかとかが把握できるから登録料と更新料を惜しまず登録しておくのが一般的なんだとか。

 そうかあ、そういう利用方法もあるんだなあ。登録料も更新料もさほど高いものじゃないしね。

 言っちゃえば一食我慢すれば足りる、くらいな感じなわけだし。


 ちなみに今回はここに来るまでの講義がスキップされてる分、さらに次の階層へと来てからのご飯でした!

 ちなみにコカトリスとかキメラが出てくる階だったよ!!

 意外とコカトリスのお肉が美味しい。キメラは素材として高く売れるんだそうだ。

 コカトリスの卵も首尾よくゲットできたので、親子丼風にして食べました。


 これにはナーシエルもご満悦で、ダンジョンの中なのに美味しいご飯が食べれるのは士気も上がっていいなと大喜びだった。


「イリスは将来良い女になれるな」


「そうかなあ、ほら、ナーシエルが一緒にいた冒険者さんたちには、さあ」


 凡庸。

 そう言い切られていたわけなので。

 見た目が悪いって言われたけど、いやいや標準くらいだから! 並みだから!! 平凡なんだからね!!!

 成長したらもっと見た目も変わるかもしれないし!


「そうか? 気立てが良くて明るいお前なら、きっと嫁にしたいと思う連中は多いと思う。人間族の美醜感覚はどうも自分たちにないものを求めがちだから、他種族を褒め称えるのだろうと思うが……」


「そ、そう?」


「ああ、イリスはそのくるくる変わる表情が可愛いと思うよ」


「……ナーシエルって女の子にモテるよね、きっと」


「そういうことはないと思うけど……」


 くっ……天然め……!!


 でもそう言ってもらえるとこれが慰めでも嬉しい。

 そうだね、見た目は最低限身綺麗にして、女子力を上げよう。

 そうすればいつかはフェルに告白だってできるかもしれない。


 淡い夢くらいみたっていいじゃない。


「イリスを嫁にしたいなら、俺が認めた奴じゃないとな!」


「……プラチナランクの冒険者を納得させるだけの相手っていうのはそう見つからないのでは……?」


「それでも家族を大事にできそうにない奴に妹を嫁がせるわけにはいかないんだ!」


 兄さんは本当に家族思いだなあ。



◇◆◇



 さて、この遺跡の構造は全部で地下8階まで。


 B1 → 初心者中の初心者向け階層

 B2 → 虫系(ワーム・蜘蛛・蟻)

 B3 → 水生系(リザードマン・半魚人・蛇・食肉魚と蜂)

 B4 → コカトリス・キメラ・バジリスク

 B5 → ラミア・ハーピー

 B6 → メデューサ

 B7 → ランドドラゴン

 B8 → 巨大ゴーレム


 とまあこんなラインナップらしい!

 B3の蜂に関してはアマンの木にいるらしいけど、その所在地が不明なので蜂がいるかも不明。

 アマフェニア・クイーンを恐れず、それを倒したのちに無数の蜂と戦うだけの気概があるなら探してみるといいってことなのでパス。


 しかし大体の敵が書いてあるマップが売られているのはやっぱり便利だなあ。


「次はラミアとハーピーが主体なんだね」


「うむ、地上と空中、両方から攻められることへの対処が求められる。またラミアは毒を持っておるし吸血もしてくるから気を付けるようにな。ハーピーは強靭な爪を持っておって、その鋭さもさることながら掴まれて空中に攫われればそこで食い荒らされると心得えるのであるよ」


「うわあ、……うわあ」


 えぐい。


 本来なら私みたいな弓兵が空を飛ぶ敵への対処としては最適なんだけど、私の弓の腕前? なにそれ美味しいの? 状態なので。

 結局風魔法を使用するのがよさそうだ。

 幸い、ここに来るまでにほとんど魔法は使ってない。ナーシエルの剣の技がすごいのもあるしね!


「ハーピーの羽は冒険者から矢羽に人気だな」


「風の影響を受けなくなる効果があるそうだけど、それなりに高価であるからな」


「へぇー!」


「ラミアから獲れる鱗を煎じると解毒剤が作れるんだぞ」


「あとはこの階層では魔石が獲れる。あると便利であるな!」


「魔石かあ」


 魔石はよくゲームとか小説とかで見かけるのと同じように、この世界でも魔法の媒介なんかになる。

 魔石から作った護符(アミュレット)とか、属性効果を高めるとか増幅(ブースト)効果を付けるとか……まあ普通に買うと超高級品になっちゃうものが自作できる可能性もあるわけだ。

 それに魔石を使った武器・防具は別効果も望めるし、魔石から抽出したものから魔力回復ポーションだって作れちゃう優れモノなのだ!


 当然、買うと高い。

 高いけど需要はある。

 というか私も杖欲しいし、杖に魔石嵌めて魔力消費とかの効果つけたいなあ……。


「まあうまく拾えるかどうかは運であるからな」


「うん、見つけたら獲りたいな!」


『ませき ほしいの?』


「うん、私魔法を使うからー……。……」


『ませき あるよ』


 声が、聞こえた。


 あの子の声が。

 慌てて振り向いた私に、皆がびっくりしているのが気配でわかる。

 どうやら皆には聞こえなかったみたいだ。


 そして振り向いた私の視線の先に、彼女はいた。

 うっすらぼんやり、私も目を細めないと人の形に見えないくらいの(もや)状態で。

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