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10:ダンジョンへ行こう!

 ざっくり学んだ一か月。

 たった一か月かよ! とかは思わない。


 結構濃ゆい一か月だったのよ……?


 おじいちゃんによる講義=ほぼ毎日=ヘイレム兄さん(現役一流冒険者)による野外活動指導。

 もうね、5歳児ですけど獲物の皮を綺麗に剥ぐのもなめすのも、血抜き作業もばっちりよ!!

 なぜか古代語とかまで習得させられたけどそれって必要なのかな……。


 ちなみに愛用している小刀は、綺麗な模様が柄に彫られているもので、お母さん(リリファラ)の遺品だ。

 お父さんが、私が使ったら喜ぶだろうからって。

 いつか私が大きくなったら、装備品とか服とか、残っているお母さんのものをくれるって言ってくれた。

 それだけで泣きそうだったけど、皆が優しくて、泣いていられないと思った。


 お父さんがすごい優しい目を向けてくれて、私もいつかこんな風に好いてくれる人を見つけて幸せになりたいと心底思えるようになった。

 和子の時には諦めていたけど、イリスで新たに思うことくらい許されると思う。


 因みに初恋のフェルだけど、あれ以来数回顔を合わせてる。

 相変わらずカッコいいし、最近は私を見て目を細めて笑ってくれることも増えたんだよ!

 嬉しいよね!!

 ちっちゃい子を微笑ましく見てる、ってオチだってわかってるよ!



◇◆



 さて、各種族についてのおさらいをしていこう。

 これはすごく不思議なバランスが働いていると思った。


 人間族というのは繁殖力に優れ、魔力を持つ場合もあり、器用さなども備えている。

 しかし寿命も各能力も他種族に比べ低く、器用貧乏型と言っても過言ではない上に戦闘能力などの低さから魔獣などと遭遇した際の一般人の死亡率は種族ナンバーワンだ。寿命に関しては魔力で左右されるようだけど。

 ただその繁殖力とその特性から各国との外交を重ねて今は立派な王国を築き、他種族と対等の関係を保っている。

 太陽神を主に信仰しているが、理由も『夜は危険』という戒めを持っての事らしい。


 獣人族は肉体能力と繁殖力が非常に優れているが、その反面治癒力の高さから医療技術が未熟であること、友好的で情に篤い種族が多いことから各国で友好関係は築いているが、反面騙されやすいことが問題となっている。また、敵に背を向けることは良くないとされるので強大な敵に挑んで死んでしまう例も少なくない。

 ちなみに医療技術を広めればという案はあったのだけれど、結局普段医院にかかることがないために医者が赤字になってしまうので広まらなかった。

 自然信仰からの大地の女神信仰が主流だ。


 妖精族は魔力の扱い、特に自然系能力に優れている。種族としては一概に姿で判別できないほど多岐に渡り、寿命は長い。

 排他的な思考を持つ者も多く、外交を担当することからエルフ族が王を担っているが、議会などで話し合いをする理性的な王国。

 因みにダークエルフ族もいるが、和子のいた世界の小説の様なエルフとの敵対関係とかは特になく、ただ肌の色が違うとか、近接攻撃が得意か遠距離攻撃が得意かの種族的違いなだけらしい。

 こちらも自然信仰からだけれど、空の女神信仰が主流。

 けれど自然信仰の観点から獣人族とは割と仲が良いようだ。


 魔人族は魔力の扱い、特に精神系に優れている。種族としては角と尻尾の生えた人間が多く原色の髪色をしているのが王侯貴族らしい、わかりやすい。

 他にもハイ・オークのように亜人に近いかたちの種族もいるけど農耕が盛んだという。

 他種族から嫌われやすいが、非常に洗練された文化を持つ皇国。

 嫌われやすい理由が“家族を想い過ぎるから敵対したら呪っちゃう”という理由だっていうから笑えない。

 信仰に関しては広く多岐に渡る模様。商売の神が今人気らしい。


 竜人族は非常にタフな種族。魔法も使えるらしいけれど、それほど高位のものは使えないそうだ。

 ただとても理性的で知識に対して貪欲で、一夫一妻制度とまではいかなくても同種婚を推奨し異種族婚を悪とする風潮があるようだ。

 ハイ・リザードマンなどの爬虫類系種族もこちらに属しているが、竜人族は赤竜・黒竜・白竜・黄竜・青竜の5種族が中心となって政治的取り決めをしている。

 知識の神を崇め、理詰めで話をしようとする傾向があってちょっととっつきにくいそうだ(おじいちゃん談)。


 まあ私が各国を巡るかって言われたらわかんないけどね!

 まだ5歳だから町を出るのだって家族が一緒じゃないとね!!


 ってことで、遺跡(ダンジョン)デビューが決まりました。





 と言っても粗方開拓された遺跡(ダンジョン)に挑むのです。


 開拓された遺跡(ダンジョン)は、得られる宝物が少ない代わりに内部の地図が販売されていたり敵の情報がわかっているのでアイテムの準備がしやすいのだ。

 まさに冒険者の若葉マークを育てるのにうってつけ!

 と言っても冒険者でないとまず遺跡(ダンジョン)に入ることすらできないし、入り口で衛兵さんがブロンズクラスの冒険者のみのパーティは断ったりときちんとしたものだ。


 私?


 勿論冒険者証持ってますよ。ブロンズの。

 取得の試験はバスクェッツェリ大森林の中でも下級魔獣、一角ウサギを規定数時間内で狩ってくることだったので、おじいちゃんとお兄ちゃんのスパルタもといエリート教育を受けた私の敵ではなかったのだよ。

 ギルドのお姉さんも笑顔が引きつってたよ。


 で、入り口の衛兵さんもプラチナランクの兄さんとおじいちゃんと一緒だったので快く送り出してくれました。


 さてこの遺跡(ダンジョン)、入口の見た目は洞窟だ。

 奥に進むとだんだん下へと降りていく道があって、最下層の最奥に入口まで飛べるワープがあるのだという。

 手に入るアイテムの多くは魔力を多分に含んだ薬草と鉄鉱石、モンスターから得られる素材、それと遺跡(ダンジョン)内部で死亡した冒険者の遺品と、遺跡(ダンジョン)や特殊モンスターが生成する特別アイテムだ。


「良いかねイリス、遺跡(ダンジョン)とは生き物の様なものだと思ってよい」


「生き物?」


「そうだ、遺跡(ダンジョン)という生き物の内部に入っていくのだと言えばわかりやすいかな?」


 おじいちゃんによると、内部で生きる魔獣モンスターたちはダンジョンとの共生と考えられているのだという。

 だから死亡した有機体(冒険者含む)はダンジョンに吸収され、装備品はそのまま残るのだ。

 その装備品をミミックや宝石虫など貯めこむ性質のある魔獣モンスターが生息し、またそれを狙って冒険者が現れ、さらにエサが勝手にやってくる場所ということで他の魔獣モンスターも棲息し、ダンジョンも内部が潤ったりエサがほっといても出るというWIN=WIN。

 見事な関係性が出来上がっている、ということなのだ。


 で、落とされたアイテムをレアモンスターやボスモンスターが生まれる時に吸収して体内で魔力やらなにやら融合しちゃったりするとアイテムが変化して出てくることが稀にあるらしい。

 マジックアイテムになったりとかね?

 その他にも天然の城塞だと考えて宝物を隠す偉い人とか盗賊とか、研究で籠った魔法使いの遺品とかがいっぱいあったりするところもあるんだとか。


「内部は広いこともあるし、狭いところもある。不可思議な空間が広がっているのであるよ」


「そうだな、俺はこの遺跡(ダンジョン)は初めてだけど、確か昔栄えた王国の訓練場だったんだっけ?」


「うむ、さすがはヘイレム。自慢の孫なのであるよ! この場所は遠い昔、バーラパールネラドルスキリエ女帝の時代に作られたとされ、当初はヘイレムが言っていた通り訓練場であったそうなのだが時代の変異と共に忘れ去られダンジョン化してしまったのであるよ」


「へえ~……」


「ダンジョンというものは魔獣が住まうものであるが、生態系の問題なのかある一定期間で魔獣が一定量増えると外に放出される、いわゆる巣分けのようなことが起こってそのたびに近隣住民が危険な目に遭うのであるよ。ダンジョンに挑む冒険者が増えるとそれが起こらないという研究がなされて以来、ダンジョンが見つかり次第報奨金を各国出すほどなのである」


 この遺跡は特別危険なモンスターはいないけれど、直接攻撃だとか魔法攻撃だとか遠距離だとか、水生生物に空中を飛ぶ敵だとか、まさに一通りの種類がいて訓練にうってつけな造りそのまま進化しているのだという。

 日帰りはさすがに厳しいが、新規開拓のダンジョンに比べれば日数も計算できるほど開拓され尽くしていると言える。


「それじゃあ進んでみような」


「はあい!」


「1階は安全とは言い切れないけど、大抵死ぬような罠もないし、ほら、壁に松明も置いてあるだろう。松明があるってことはこの辺りはそれを定期的に管理できるほど余裕がある場所っていう目安にもなる」


「管理は誰がしてるの?」


「大体は国から補助金を得て、ダンジョンから一番近い町が請け負うのであるよ」


「このダンジョンの一階はどんな敵がでるのかな?」


「全部で8階層であるが、最初の階はスライムやお化けキノコ類が出るのであるよ。毒や麻痺に注意である」


「はあい!」


 流石にスライムとキノコに後れを取らないと自分を信じたい。

 いくらC級だからって。

 C級だからって。


 ……。

 これ、勇者のランクって上がることってあるのかな……。

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