1:C級勇者の不遇なる人生。
三宮 和子という女性がいた。
高校生の時に唐突に異世界に召喚! なんてゲームとか小説のようなことになり、挙句に召喚された先で『なぁんだ、C級勇者かよ……』なんて残念がられた残念勇者だった。
平凡な容姿、平凡な頭脳な彼女は今でいう毒親から解放された喜びもつかの間、いきなりディスられた挙句にロクな説明もなく世界のために戦えと放置状態でよくわからない世界である程度生き抜いて、成人間近だという頃に知り合ったA級勇者パーティと共に少し進んだくらいで強敵に出会って人生を終えたのである。
その時の彼女のステータスはこうなっていた。
名前 : 三宮 和子
職業 : 勇者
ランク: C
レベル: 88
HP : 3500
MP : 6000
攻撃 : 1200
魔力 : 3000
特技 : 神聖魔法/回復魔法/属性魔法/体強化/鑑定/翻訳/アイテム生成
こんなものであった。
ちなみにA級勇者は同じくらいのレベルだったが、もっと違うステータスであったことは言っておく。
とにかく彼女の召喚されてからのセカンドライフもそう充実したものではなかったのだ。
その世界でもまあ人間関係の黒さなんてものを垣間見た分、これでよかったのかもしれないなんて思った三宮さんだった。
ところが、だ。
彼女は呆然とする事態を迎えていた。
なぜならば、気がついたら暗闇で手もろくに動かせない状況。
これはあの強敵のブレスにやられて全身やけどで生き残ったとかなのか! と脳内で慌てたものの、聞こえてくるのはあーだとかうーだとかの赤ん坊の泣き声だ。
え? こんな重傷者の横に赤ちゃんとかおいてて大丈夫なの? そう思った。
だが冷静になってくると、痛みがないのだ。
魔法で痛みを除去しているにしても、体は火傷などの違和感を感じさせない。
ということは違うのか、と思った。
そしてもう少し過ごして衝撃の事実に彼女は目を丸くして絶句する。
三宮 和子。享年19歳。
現在は、なんと転生して赤ん坊、しかもどうやら召喚された先の世界とはまた違う世界に生を受けたのであった。
目が見える、声が出る。
温かく抱っこされる。
大好きだよーなんていう兄の声がする。
お父さんだぞーなんて声もする。
……あれ、今度の異世界あったかいね。