表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/25

illusion is mine - 3

シュタンは昨日のあの場所に向かって走った。行き先が分かっているためか、走る足取りは、昨日と比べるまでもなくとても軽かった。

 早く、早くあの場所へ!

 しかし、その気持ちと裏腹に前へとうまく進むことができなかった。

「焼きそば、おいしいよー」

「そこのお若い人、寄って行きなさいな」

「おじちゃん、たこ焼き一つ」

「あいよ。お嬢ちゃん可愛いから、一つオマケだ」

「うわぁ~、おじちゃんありがとう!」

まだお昼だというのに、お祭りは盛況で人波が途切れない。道の端で開かれる露店は道の幅を狭くし、その道を若い男女は道を塞ぐようにして横に並ぶ。さらに、子どもたちは楽しさに従順で、周りの人などお構いなしで走り回っている。何とか人の隙間を見つけて通り過ぎようとしても、すぐに違う人でその部分が無くなってしまう。別の、自分だけが知っている道があればいいものの、この街に対してそのような土地勘など持ち合わせていない。ゆえに、人に流されて進む他に手段がない。

「こっちは急いでいるんだ。早く行かせてくれ!」

 無意味だと分かっていても、シュタンはこの鬱陶しさに黙ってなどいられなかった。その言葉を口にする度、隣にいた人には一瞥をくれられる。急いで前に行こうとすれば、人にぶつかり、睨みつけられる。その度に「すいません」と言わなければいけない。

 こんなことをしている場合ではないんだ。早く、昨日のあの場所まで。シュタンの乱暴な足音は人々の喧騒の中へと消えていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ