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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#04 途上世界のクレセント
99/131

#scene04-03



ジーナの加入手続きはナギが考えていたよりもさっぱりと進んだ。あのバカ貴族が騒いでくれたおかげでジーナがここを離れる決意をしてくれたと思うとその部分だけは少し感謝したい。


「ナギ、話しに聞いていたがここの魔物は強いんだったな?」

「ああ、強いぞ。未開拓地で長命種も多いから巨大な魔石塊が取れる」

「ナギ兄、精錬練習用のブロックがほしいから少し狩りに行ってもええか?どうせ今日は動けそうにないし」


キーリーは二日酔いでぐったりしているジーナ、ペトラ、パンドラの姿を見ながら言った。


「ちょっと、昨日の宴会ははしゃぎ過ぎたな。クレハ、悪いけど、こいつら温泉に投げ込んどいてくれ」

「構わないわよ。私も少し行こうと思ってたし。ナギは?」

「アーリックが狩りに行きたいみたいだし、連れて行ってくる」

「じゃあ、僕もそっちに行こうかな。ペトラだけならともかく、他のみんなとお風呂に行くわけにはい開かないからね」

「りゅ、ルイテル様、できれば私だけの時も遠慮してください」

「リュディ、私もお風呂に行きたいので手伝ってもらえます?」

「はい!いいですよ、アイヴィーさん」

「リュディ、黒猫だけ借りていいか?」

「あ、わかりました」


リュディから手渡された黒猫を肩に引っ掛けるとナギが席を立った。


「……私も行く」

「よし、昼まで狩りして、昼からコルテスまで移動するぞー」





クレハはぐったりしている三人を連れて勝手に建設されて人避けの結界まで貼られている温泉にたどり着いた。

そこで素早く3人の身ぐるみを剥ぐと湯の中に放り込む。


「わ」「きゃ」「ひっ」


水しぶきを上げて湯の底に沈んでいく3人を見てから自分も服を脱ぎ、浴場に入ってきた。

少し遅れてアイヴィーがリュディに介護されながら入ってくる。


「これは……なんというかこの開放感が」

「お外なんですけど、裸で大丈夫なんでしょうか」

「大丈夫よ。ナギが結界張ってるから覗かれたりはしないわ――ナギ以外には」

「我々としてはセーフなんですけど、ペトラさんやパンドラさんはダメですよね?」

「まあ、その二人がいるから除きとかはしないでしょ」


長い髪の手入れを終えたクレハが、髪をまとめると湯船につかる。


「少しぬるめだけど、まあ、いいわね。3人とも、酔いはさめた?」

「多少はマシに」

「私はちょっと水浴びてくる」

「あ、私も行きます」


シャワーで冷水を浴び悲鳴を上げるパンドラとペトラ。


「体、冷やし過ぎちゃだめよ?」



泥蜥蜴。

この辺では中位にあたるモンスターであるが、基本的には強敵に分類される。

そんな蜥蜴の攻撃を剣で弾きながら、アーリックは余裕の顔で感想を述べる。


「なるほど、力は強いし、鱗は固い」

「でも、こいつから地と水の2属性含んだ魔石塊が出るんだよね?」

「ああ。換金すると結構いい値段になる」

「なるほど。でも、これ、物理攻撃あんまり通らないね」

「そういう時は魔法」


エレノラが火球を放ち、蜥蜴の体を焼いていく。


「……地属の方が割合多いみたい」

「だな。ルイテル、風だ」

「はいよ。アーリック、もう少し抑えててくれ」

「承知した」


ルイテルが剣に風の魔力をまとわせる。

その間、アーリックが、力で蜥蜴を抑えつけていく。


「切り裂け!」


ルイテルの放った一閃で、蜥蜴の巨大な顎がきれいに切り落とされる。


「まあ、こんなものか」

「耐久が高いから属性考えて戦わないと効率が悪くなるってことを覚えておいてくれ。まあ、アーリックなら普通に斬れたと思うが」

「そうか?」

「わかったよ。しかし、ナギの機巧装置とこの魔法剣がないとそんなほいほい属性なんて変えられないんだからね?」

「うん、普通な苦労しそう」


ナギが蜥蜴の解体に取り掛かろうとしたとき、背後の茂みからキーリーとシャノンが顔を出した。


「すごいで、ナギ兄。貴重な毒草がこんなに」

「毒草以外もとってくれよ?」

「それはもちろん。共和国なんかよりも全然気温が高いからやろか?植生が全く違うねんな!」

「ナギ様、お探しの果物を大量に確保してまいりました」

「でかしたシャノンーーよし、じゃあ、このあたり軽く狩り尽したら戻るかー」





「で、こうなるわけね?」

「ああ、ちょっと狩りすぎちゃった」


5頭分のイノシシをさばいて、広場の中心で販売する。

特に凝ったような調理もしてないのだが、売れ行きは上々である。

かなり上級の魔物であるこのイノシシ、味はいいのだが、普通の冒険者が簡単に狩れるのもではない。


「昨日ぶりだな、薬屋」

「お、ベアルか。いくつ買う?」

「こいつらの分も合わせて50ほどくれるか」

「おっけー、ルイテル」

「はいよ。すでに用意してあるよ。しかし、こういうのも案外楽しいね」

「ル、ルイテル様――!陛下が見たら卒倒しますよ!?」

「ライズはここにはいないから大丈夫じゃないかな?あ、それより、ペトラは列整理に専念するようにね?」


「これだけの量をこなせば、流石に慣れてきますね」

「アイヴィーも随分料理ができるようになりましたね」

「まあ、うちは貴族だけど、妻として料理ぐらいはできないとね」

「やはりそうですか」

「私は少し出遅れてますから、その分練習しないと」

「そんなこと言ってるんやったら3人も焼くの手伝ってもええんちゃう?」

「あら、小姑がなにか言ってるわね」

「仕方ありません、私も手伝いましょう」

「それでは私も」

「なんでこんな時だけ結託するん!?いつもナギ兄の寵愛めぐっていがみ合ってるのに!?」

「いがみ合ってはないわよ。負けたくないだけで」


「パンドラさーん、追加のお肉でーす」

「ありがと、リュディちゃん。こういうのも割と楽しいわね」

「じゃあ、私はキーリーさんのところに戻るので足りなくなったら呼んでくださいね」

「ありがとー」

「教会にいれば、孤児への炊き出しそうなものだが」

「私は聖女なんて冠乗せられてるだけの人形だったから。そいうお金にならない仕事は全くしてないんだよね」

「そうだったのか」

「……そんなことより、これ売り切ったらコルテスに出発でしょう?」

「ああ、そうらしいな」

「行きはゆっくり見れなかったから、少し観光したいわ」

「なにか気の利いたアクセサリーでも買おうか?」

「そうねー、いいのがあったらお願い」

「ナギに拾ってもらってから入りがだいぶ良くなったんだが、衣食住に加えて装備まで面倒見てもらってるせいで金がたまる一方でな。給金や討伐報酬でかなりの額もらって、そこからギルドに金入れて、パンドラとの資金用に分けて、実家に仕送りしてもまだ残る」

「趣味とかは?」

「ナギやルイテルに付き合って飲みに出かけたりするぐらいか?といっても、あいつらもオレも一応、嫁さん一筋だから娼館のようなところにはいかないしな。最初のうちは昔趣味でやってた楽器を買うのが目標だったが」

「ああ、あのたまに弾いているリュートのこと?」

「そうだ。あれは帝都の職人に頼んで作ってもらった。かなり高かったが自由に使える額の半分もしなかった。後はもうパンドラを着飾らせるぐらいしかない」

「そう。嬉しいわ。うちのマスターは毎日お金が足りないって言ってるのにね?」

「もう少しオレたちへの払いを下げてもいいと思うんだが、そこは絶対譲らないんだ」

「でも、無駄な買い物してクレハやシャノンに怒られてるのを何回か見たけど」

「変わった機巧装置とか、稀覯本とか、魔導書とかすぐ買うからなアイツ。キーリーとアイヴィー、それにエレノラとお前も似たようなものだが」

「だって、貴重な魔導書が持ち合わせでかえるなら買っちゃうじゃない?――高いのよ、魔法の品って」

「だろうな」

「全員が持ってる本集めたらたぶん大陸一の禁書図書館が出来るわよ」

「禁書なのか……」


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