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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#04 途上世界のクレセント
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#scene04-01




鉄道計画は順調に進み、帝都や隣のグッビッシュではすでに駅の建造が始まっている。

鉄道運行やダイヤ管理の知識をナギとクレハによって何となく聞いた政府がすでにそれらの研究を行いマニュアルの作成に取り掛かっている。

例のパーティーに何となく参加させられ、何となく巻き込まれたヴォルフ・レンギンは、中佐まで昇格させられ、現在試験運用中の鐵鋼警備隊(アイアン・ガード)の隊長をさせられている。

ナギとキーリー、そしてアイヴィーは鉄道用の機巧エンジンの設計図を完成させた。


そして、ナギたちが研究をしている間にクレハやアーリックが中心に狩りに出かけ、大物を大量に持って帰っていた。

そしてたまに混ざるルイテルの姿に受付嬢が慄くという事もたびたび起こる。

また、一部を除いて帝都にて待機している昏き星夜のメンバーたちも狩りを行うため、異常なまでの食肉や素材がナギの手元に集まっていた。また、その討伐数は相当なもので帝都周辺の強い魔物はあらかた狩り尽され、管理が楽になったと帝都駐在兵から感謝されることもあった。


そして、会議も兼ねた昼食会でナギが口を開いた。



「みんな、飯食いながらで良いから聞いてくれ。次、どんな楽しいことをするか、ちょっと計画建ててみたから」

「そんなにハードルあげて大丈夫か?」

「面白くなかったらどうするのかしら?」

「気になりますね」

「……うん」

「で、何するん?」


視線がナギへと集まる。


「おう………ちょっとまてよ」


何かを探すしぐさをすると、一枚の地図を取り出した。


「次の目的地は、ここだ」


ナギが指差したのは、ヴァルデマル帝国から南に相当進んだ先にあるオーシプ自治州南端の街ガルニカ。

結成からわずか半年でその名を大陸中に知れ渡らせたギルド“クレセント”が結成された土地でもある。


「どうして今更ガルニカ?」

「なんたって、クレセントを結成した街だしな。それに、一人欲しい人材がいるんだ」

「ああ、彼女ね」

「そうそう……ってことで、明日には出発するか」

「ガルニカまで行くとすると……移動はどうするんだい?」

「レムケまで行ってマーリケまで船に乗る。そして、そのまま一気に南下するとして……帰りは王国通ってリュリュに寄っていく」

「レヴェリッジの工房はもう閉鎖して、従業員は家族ごと移動を開始しています。残っているのは祖父たちだけかと」

「領地は何にもないところだけど最低限の居住スペースと緯度は設置しておいたし、隣のシッファー伯とディースブルグ候に食料と彼の融通をお願いしておいたからオレたちが帰るのが多少遅くなっても何とかするだろう」

「シュラインも同行しているので何とかするでしょう」

「じゃあ、ガルニカのあと、王国によって、帰ってくるのね?」

「余裕があれば法国でスカウトでもするかな。混乱も収まってるだろうし」

「よーし。ペトラ、準備するよ」

「ええ!?あの、ルイテル様、なんでそんなにはりきって!?」





準備といっても、全員大概の持ち物をその手の腕輪に収納しているので特に手間取ることもなく、門の外へと出ていく。

朝番の兵士に見送られた直後、ナギたちは機巧バイクによる高速移動を開始した。

ナギの後ろにはアイヴィーがひっついており、またサイドカーにはリュディが載っている。

クレハとキーリー、アーリックとパンドラ、ルイテルとペトラ、シャノンとエレノラ+サイドカーに毛玉と猫という組み合わせで1時間弱という短時間でネストリ湖を望む都市レムケへと到着した。到着するまでに、クレハとルイテルが無駄に加速したり蛇行したりしたせいで後ろの少女二人が若干ぐったりしている気がするが、おそらく気のせいだろう。

レムケから船に乗れば明日の朝にはカレヴィ自治州マーリトへ到着する。

といっても、揺れが少なくとも船での移動なのでひたすら暇であった。

よって一行はひたすらトランプゲームやチェスをしていたが途中で船酔いになりダウンすることになる。

マーリトへ到着した時には全員テンションが無駄に上がったのだった。


「やっぱ、陸最高」

「今度はもっといい船にしましょう」

「なあ、クレハ。あれが一番ええ船なんやけど……」

「じゃあ、ナギ、作って」

「湖に浮かべるのにあれよりでかいやつ作ってもな……まあ、考えとくよ、っていってもまず、造船工房創らないとな」

「ナギ兄、こんなわけわからんレベルのわがままに答えんといてよ……」

「で、ナギ。ここからどう移動するんだい?」

「そりゃ、バイクだろ」

「えええ!?またですか!?」

「おや、ペトラ。僕の運転に不満が?」

「い、いえ、でもできればもう少しスピードをですね……」

「ははは、考えとくよ」


結局、ペトラは絶叫することになった。

なお、キーリーはエレノラと交代し、シャノンの後ろに乗った。

エレノラは案外こういうのが大丈夫なようでクレハとともに楽しんでいた。

道もあまり整備されていないことから一週間ていどかかるマーリケからガルニカへの道のりを5時間で走破した一行は、昼過ぎのガルニカへと到着した。

到着してすぐに表れたのは、今自分たちが来ている服より少し飾りの少ないものを着た3人組だった。


「テオ。どうだ?」

「ええ、良いタイミングというか悪いタイミングというかですね……ちょうど昨日でした。しかし、昨日連絡したのですがつながらず」

「ああ、すまない。船の上だった。で、状況は?」

「とりあえず介入して落ち着かせましたが、またすぐにでも」

「わかった。とりあえず、説明を頼む」



時間はナギたちが船の上でカードゲームに限界を感じ始めていたころ。

いつも通り、テオ、ミシェル、サルドの3人は狩りを終えて換金を行うために列に並んでいた。

ナギから渡すよう頼まれていた情報は、ガルニカに行くと言ったら、風変わりな若い男爵についでに届けるよう頼まれた、という体で渡したので、彼らがナギの部下であることはばれていない。


「ねえ、テオ。今日の晩御飯どうしようか?」


テオに腕を搦め手囁くのはミシェル。見た目は美少女だが男だ。

それがわかっているし、慣れているのでテオは特に気にせず応える。


「どうしようかって言われても、ここだと肉とパンぐらいしかないだろう」

「やっぱそろそろ買い出しいかないとダメかな?ねぇ、サルド」

「そうね。誰が行く?前は私が行ったけど」

「じゃあ、次はオレが。腕輪もあるしまとまった量運べるだろう」

「そうだった、最初からテオが行けばよかったじゃん」

「というか、お前ら、当然のようにテオと呼ぶようになったな」

「お館様が付けた呼び名だし、短くていいじゃん。あたしも、“ミミ”とか呼んでほしい」

「ミシェル、シャノン様に殺されるわよ?」


くだらない話をしながら列を進み、次はテオたちの番、というところで邪魔が入った。

突然“青い翼”へ入ってきた貴族風の男とそのお供2人は、並ぶ冒険者たちを掻き分けてジーナの前までやってきた。


「ジーナ!探したぞ!まさかこんな辺境にいるとは!」

「!?――ギリウス、様!?」

「そうだ!君の婚約者のギリウスだ!迎えに来たよ、ジーナ!こんな小汚い場所から早く帰ろうじゃないか――ん?なんだい?君――ぶ!?」


テオは迷うことなくその男の肩をつかんだ。

そして、振りけると同時に、拳を叩き込んだ。


「おい、並べよ」

「貴様!平民風情が!」

「王国人風情が、さっさと掃き溜めに帰れ――ジーナさん。換金お願いします」

「え、ああ、はい」


テオドールのジョブは隠者(ハーミット)。戦闘に向いているジョブではないがLv.7ともなればそのあたりの有象無象を素手で殺す程度の能力はある。

テオの放つ威圧感と腰の短剣に手を掛けているミシェルとサルドを見て萎縮した御供たちは気絶して若干歯が砕けた様子の馬鹿を担いでギルドから出ていった。


「サルド、お館様に連絡だ」

「はい」


何度コールしても繋がらなかったが、幸いナギたちが到着するのは翌日であった。


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