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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#03 黒の勇士編
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#scene03-36



しばらく時間が経過し、良く晴れた日の昼時。

ナギとルイテルの悪だくみを実行した。

時期的には肌寒いが、アイヴィーが開発した結界暖房器具のおかげで薄着でもそれほど問題はない。


「で、悪だくみってのがこれね……」


クレハは前庭を超改造して作り上げた屋外パーティー会場を見てため息をつく。


「結婚式とかしてなかったしな。まあ、ちゃんとしたやつは領地貰ってからちゃんとやるけど、3人にドレスの一つも着せてやらないと男してどうかという気持ちもあってな」


控室で珍しく正装をしたナギが笑う。

クレハ・シャノン・アイヴィーの3人はそれぞれ、白を基調としたドレスを着ているが、デザイン的にはかなり新しいものであり、露出度も高めである。

動きにくいという理由だけでクレハとシャノンがレース等の装飾を排除しようとしたのをキーリーとパンドラが力づくで止めたのでそれなりに装飾はついているが、貴族の女性のドレスに比べると比較的シンプルなデザインである。

シャノンのドレスはホルターネック、クレハはオフショルダーになっており、背中や肩が美しい。


そっとクレハの肩に指を這わせると可愛い悲鳴を上げたがそのまま殴られるナギ。


「いてて」

「びっくりするでしょうが」

「それにしてもカウンターに躊躇いなさ過ぎるだろ……」


頬さすりながらアイヴィーの方を眺める。

2人ほど上半身の露出はないが、そのかわりにその脚を大胆に露出している。


「どうでしょうか」

「うん、全員最高だ」

「あたりまえでしょう」「ありがとうございます」「うれしいです」


ノックの音が響く。


「僕だけど、そろそろ鑑賞し終ったかな?」

「ああ、すぐに行く。悪いな」

「いやいや。その代りにペトラにもとっておきの奴を作ってくれたし、僕の服もね」

「で、誰が来るんだ?」

「ザイフェルト公は領地に戻ってたから残念だけど、エッゲルト公は来てくれるようだね。あとは、ディースブルグ候とオレインブルグ候も。フェーレンシルト子爵は当たり前として、たぶん、シッファー伯は来るね。あとはレンギン伯の次男にも声をかけておいた」

「まあ、こんなものか。じゃあ、出迎えに行くとしますか」




ヴォルフ・レンギンは、妻であるジェナとともに恐る恐る門扉をくぐった。


「ジェナ、本当に私たちみたいなのが来てもよかったのか?」

「ええっと、あなた、落ち着いてください」

「まだ、領主継いでないとはいえ兄貴ではなく私がヴィーラント公に呼ばれる意味が……」


会場、といっても、門をくぐってすぐの場所であったが、魔術的な結界が働いていることはわかった。

そして、最初に目に入ったのは、何度か目にしたことのある老獪。


「誰かと思えば、レンギンのところの次男坊か」

「お、お久しぶりですエッゲルト公」

「ヴァイトはおらずお主だけか?」

「ええ、どういったことなのかさっぱりなのですが、軍経由で招待状が届きまして……」

「彼は、私が招待しましたんですよ――お久しぶりです、エッゲルト公」

「お、出よったな、問題児」

「ヴォルフ大尉も久しぶりだ。改めまして、ナギ・C・シュヴランです」

「あ、シュヴラン、伯爵!?そうか、そういう事だったのか?しかしどうして王子主催のパーティーに?」

「それはね、僕とナギが友達だからさ。親友といっても過言ではないね」

「まったく、王子だけでも厄介なものをこんな面倒な若造と手を組むとは」

「ははは、そういうものではないよエッゲルト公。ちなみにエッゲルト公、北部はもうすっかり寒いみたいだけど、この結界暖房器具買わないかい?」

「確かにこれがあればいくらか快適になるな。歳のせいで寒いのが辛いのは事実――だが、この機巧装置一つでどんな無茶ぶりをされるか分かったものではないですから、素直には頷けませんな」

「まあ、それはまたあとのお楽しみ、ということで」


「ナギ――いや、シュヴラン伯。本日はお招きいただき」

「ああ、大丈夫。オレに対してそんなに畏まる必要はないよ、ヴォルフ」

「そう、そうか?」

「だけどもう何人か侯爵が来るからそこだけ気を付けて」

「あ、ああ」

「料理とかは適当に楽しんでくれ、後でクレハと挨拶に行く」

「わかった」


ナギは今到着した客のもとへ向かった。


「場違い感がすごいな」

「でもまあ、隅っこで楽しみましょう」

「ジェナ、男爵家の出身の割にはタフだな……」


「ディースブルグ候、お久しぶりです」

「今日の主催はヴィーラント公爵だったけど、やはりシュヴラン伯も参加していたか。あの方はあまりパーティーとか開かないから何の目的か気になるが」

「ルイテル、すごく疑われてますね。まあ、仕方ないとは思いますが」

「まあ、今日は楽しませてもらうよ」

「はい、料理もお酒も良いものを揃えてあります」

「そもそも、この不思議な結界ですでに驚いているんだがね。ああ、こっちは私の妻だ。たまたま一緒に王都に来ていたから連れてきた」

「初めまして。妻のリンシアです」

「初めまして、ナギ・C・シュヴランと申します。おっと、オレインブルグ候が到着され――ああ、ルイテルが……おっと、次は自動車が……すみません、今少し人が足りないもので、後ほど、妻と一緒に挨拶させていただきますね」

「悪いね。まあ、ルイテル様と二人で対応してるからねぇ……私たちはエッゲルト公に挨拶をしてくるよ」


車から降りてきたのはシッファー伯とその奥方、そして娘であった。


「やあ、シュヴラン伯爵」

「シッファー伯爵、お待ちしてました」

「何とか陛下に休みをもらってきた。随分文句を言われたので後で陛下用に土産を包んでくれないか」

「ええ、わかりました。というか、そういうと思ってた、とルイテルが準備するように言ってきましたので」

「それと、妻と娘だ。娘は14だからまだ嫁にはやらないが」

「お父様」

「おっと、悪い。それで、どんな料理を出してくれるのか」

「あなた、それは少し失礼なのでは?」

「どうせルイテル様のことだから無茶なお願いをしてくるに違いない。それなら楽しんだ方が得だろう」

「常套手段すぎて付き合い長い人にはダダ漏れじゃないかルイテル……さて、それでは始めましょうか。すみません、少々お待ちください」


シッファー伯たちを案内してナギはすぐに屋敷の中に嫁たちを呼びに入った。

その間にキーリーがふらふらとあいさつをしながら食事や飲み物を配置していく。


「すみません、お待たせしました」


ナギとともにクレハ、シャノン、アイヴィーが会場に入り、テーブルに付く。


「お父様、シュヴラン伯爵の奥様方、みなさん綺麗な方ばかりですね」

「そうだな。しかし、あのドレスは……どうだ?コレット」

「少し露出が多いように思いますが、デザインは素敵ですね。着ている方のスタイルがいいからというのも少なからずありそうですが」

「ふむ、あとで2人のために作ってもらうか。どうせシュヴラン伯と妹殿が作ったのだろうし」

「あの方はドレスも作るのですか?」

「それどころか、ここに並んでいる料理も彼やその奥方、または、妹殿が作ったものだろう。この屋敷には料理人は置いてないがルイテル様は毎日おいしいものを食べているというわけだ」


そこへちょうどキーリーが回ってくる。


「お久しぶりです、シッファー伯。奥方様とお嬢様は初めまして。キーリー・シュヴランと申します」

「やあ、あのドレスは君の作かな?」

「そうですね。兄はあまり凝ったデザインは得意ではないんですが、お嫁さんのドレスぐらいはいいものを着せないとという事で」

「なるほど。今度、うちの嫁と娘にもお願いしていいだろうか?」

「はい。大丈夫ですよ。後日またデザインや色などのお話をしましょう。お飲み物はどうされますか?」

「ワインを、といいたいところだがこのあと城で職務があるので」

「それでしたら、兄の好きなこの山葡萄のジュースをソーダで割ったものなどいかがでしょう。ワインに比べると少し甘いですが、お料理の邪魔はしないと思います」

「めずらしいな、それを貰おう。娘にも同じものを」

「わたくしはワインをいただいてもよろしいですか?」

「わかりました。今日のワインはカレヴィ自治州アイラで作られたものです。少し酸味と渋みがありますが、今日用意させていただいたお料理は少し味が強いので問題はないかと」

「ありがとうございます。珍しいですね、外国産のワインは」

「私はあまり詳しくないんですが、兄曰く、大陸南側の葡萄が出来が良いらしいです」

「彼は何でも知っているな……そういうば今日はあの共和国鈍りではないのか?」

「さすがにあれは色々と……あの時は酔ってましたし」

「それもそうか……おっと、ルイテル様が…………ああ、このためか」


ルイテルがクレハたちに劣らないドレスを着たペトラの手を引いて会場に入る。


「今日は来てくれてありがとう。もう僕の企みはわかったと思うけど、今日は楽しんでくれ」


シッファー伯やエッゲルト公などおおよそ事情を察していたものは苦笑いを浮かべ、ディースブルグ候やオレインブルグ候はため息をついた。



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