#scene03-33
さあ、討伐だと、いきなり飛び出す――というわけにもいかず、一応、“青き翼”に顔を出し、討伐依頼を受注してから、門で待機していた兵士に(ルイテルが)話をつけ、颯爽と帝都の外へと飛び出した。
30分も進まないうちに、南西の空に黒い影を見つけることが出来る。
「いやぁ……生きてこんな光景を見ることになるとはね」
「何かあるのか?ただのワイバーンの群れだろ?」
「ナギ、知らないのかい?神話だよ神話」
「神話?神話、神話……ああ、世界が滅ぶ前に竜種が活性化して、都市を食い荒すとかいう……」
「間違いなくその光景に一致してると思うんだけど」
「まあ、このぐらいなら何とかなるだろ。数は……47だな」
「作戦は?」
「パンドラ、エレノラ、魔法で撃ち落とせ」
「やってみる」「結構、難しそうね……でも、やりがいがあるわ」
「クレハとシャノンで羽斬って飛べなくして行ってくれ、アーリックとルイテルは落ちた奴にトドメ」
「うん、僕もそれが最適だと思う」「ずいぶん楽な仕事だな」
「前衛組はついでに後衛組への攻撃弾いてくれ」
「ははは、簡単に言ってくれるね」
「リュディはクラと一緒に群れに対して威嚇」
「はい!」「にゃ!」
「キーリーはアイヴィーを守りつつ、後衛組の調整しつつ、オレと一緒に解体作業だ」
「……なんかうちの負担重ない?」「自衛ぐらいはできますから大丈夫ですよ?」
「……あの、私は――?」
「ペトラは――そうだな……銃だろ?じゃあ、後衛組の守りがメインかな?余裕あったら撃ち落としてくれてもいいけど」
「流石にこの銃の火力じゃワイバーンは撃ち落とせません」
「そっか、案外弱いんだな……帰ったらキーリーと魔改造してやるよ」
「まかせとき!」
「すごく不安です!」
ギャア、なのかギィ、なのかはわからないが何やら吠えながらこちらに近づいてくる。
魔力の高いエサが来たぐらいに思っているのかもしれないが。
「行きましょう、エレノラ」
「……うん」
「ナギさんに教わった」「新しい魔法で」
杖に埋め込まれた機巧装置を補助に使い、超高速で式が収束していく。
それぞれ“聖”と“魔”の攻撃術式。
「おお、本当に見たこともない術式だね――早すぎて全然読み取れなかったけど」
「読み取れなかったのに結果はわかるのか。なるほど、“予測の魔眼”とはすごいものだ」
「やっぱり気づいてた?」
パンドラとエレノラが同時に式を終了させ、杖を振るった。
その瞬間、先頭を飛んでいた2匹のワイバーンに不自然な雷が落ちる。
「Aランク聖術白雷!やっぱり、魔法ってのはこうじゃなくちゃ」
「――Aランク魔術黒雷。良い術式」
一撃でワイバーン2匹は飛行不能となり落下していく。
そしてエレノラとパンドラは次の魔法を撃つ。
落下した2匹は地面に着く前にクレハとシャノンによって翼を切り落とされていた。
「おっと、じゃあ、トドメさしてくるね!いやー、魔物と戦うなんて久々だー!」
「ルイテル様!?気を付けてくださいね!」
すでに飛ぶことのないそれの頭を一薙ぎで吹き飛ばすアーリック。
それに対してルイテルは一閃で綺麗に首を落とした。
「見事だ、ルイテル」
「アーリックこそ。そのパワーは僕には出せないよ」
「そちらこそ器用で羨ましいものだ」
「そうかな?――おっと、次が来たよ?」
こちらへと標的を定めて滑空してくるワイバーンたちを躱したり弾いたりしながら、落下してきたものを順調に仕留めていく。
クレハはたまに滑空してきたものをそのままカウンターで一撃死させていた。
「……あれは無理だな」
「うん、カウンターはできても仕留めきれないだろうね……」
「あれは参考にしちゃダメな奴だぞ」
そういいながら今しがた仕留めたワイバーンをサクサク解体していくナギ。
「おおー、こいつ結構な大きさの魔石塊だ」
「肉はどれぐらいとれそうだ?」
「一匹から死ぬほど取れるからしばらくワイバーンには困らないだろう」
「それは良かった」
「しかし、一匹ずつ撃ち落とすの面倒になってきたわね」
「同意」
「じゃあ、実験しますか」
「是非試してみたい」
「大きい魔法は素材が取れなくなるからあかんで」
「「えええー……」」
「不満げに唸られても困る」
「じゃあ、代わりにナギさんにとっておきの魔法を使ってもらうというのは?」
「それはそれで面白そう」
「んー……どう?ナギ兄」
「やってみるか?地味な奴でいいなら――シャノン!」
「ここに」
シャノンをわざわざ隣に呼び寄せたナギは、シャノンの機巧装置に触れて特殊な機巧式でなんらかのロックを解除した。
「まだ実験段階だからシャノンの奴にしか積んでなかったんだけど」
「なんで私のにはないの?」
「しゃーないだろ、クレハ。旅の途中で思い付きで作ったんだから」
「ナギ様、属性は」
「お互い一番安定する“幻”で」
軽く2000万Eはするナギの作った魔法石を入れる。
「「機巧接続」」
その瞬間、今までの術式とは比べ物にならないほどの魔法式が二人を包んだ。
時間は長く、ワイバーンたちをいなしながらもメンバー全員がその姿を見つめている。
正面に立って吠えていた黒い虎――クラもその姿を見つめていた。
「「永劫ノ夢」」
そう2人が唱えた瞬間術式が弾け、半分も残っていなかったワイバーンたちが一斉に落ちた。
落下したことによって強い衝撃が彼らを襲ったと思われるが、近づいて確認すると眠っており、時折、唸るような声や悲鳴のような音を漏らしていた。
「亜竜も夢を見るのか――面白い」
「見ているのは悪夢ですけどね」
「……で、どういう魔法なんですか?」
一番最初にこらえきれず聞いたのはペトラだった。
「これは対象を永久に冷めない悪夢に落とす魔法だ」
「今回は範囲を絞りましたけど街一つぐらいなら簡単に覆える魔法です」
「それって、私とナギでも発動するの?」
「たぶん、オレとクレハがやったらまた別の魔法が発動すると思う。というかこれ大量に魔力持っていかれるし、精神的に疲れるからオススメしない」
「ですね。リンク状態なだけでも十分使えそうですし」
「リンク状態?ってなんだい?」
「自分の能力の一部を相手に与えることができる。オレは今シャノンから隠密系の能力や感覚を貰っている」
「そして、私は直感と分析の能力をいただいています」
「へぇ、便利そうね。実用化は?」
「もうちょっとテストしてからだな。シャノンの次はクレハと試してみて――って感じだな。魔力が一部でも混ざるから拒絶反応とかないかしっかり調べないと」
「なるほどね」
「魔法の話はよく分からんが、とりあえず全部潰してきたぞ」
「おっと、ごめん、アーリック。僕もこっちが気になって」
「いや、構わない。このぐらいのこと、仲間だろう」
「なんだかこそばゆいけど、少しうれしいよ。じゃあ、詳細は後で聞くとして撤退しようか。軍が見に来る前に」
「おっと、そうだった。キーリー急げ」




