#scene03-29
ナギの案内で1階に戻り、多目的室とプレートの貼られた部屋に入る。
「アーリックとかクレハとかルイテルとか、剣の訓練するかなと思ってな」
「壁も床も飛び切り頑丈にしといたから、好きに近接訓練できるで」
「エレノラやパンドラも多少はした方がいいな。もちろんキーリーも」
「うちはええわー……」
「そうはいかないぞ」
そういうとナギはキーリーに木刀を渡した。
そして、もう一本をクレハに投げる。
「それ洒落にならへんやつ!あと、うちはそれなりに体力あるで!エレノラとかよりは!」
「ちゃんと防ぎなさいよ」
「話聞いて!」
クレハの高速の一撃を何とか受け止めるが一瞬でキーリーはへろへろになる。
「多少は体力つけいないと」
「確かにねぇ、僕も少し勘を取り戻さないとね。ナギ、僕にも剣をくれるかい?2振り。本当なら1本で十分だけど、今日は久しぶりにやってみようかな」
「ああ」
木剣を二振りルイテルに投げ渡す。
「これなら怪我する心配も少なそうだね。でも重さはそれなりにあるのか」
「少し細工してるからな。アーリック、ルイテルとうちあってみな」
「いいのか?」
アーリックにも長剣型の大きな木剣を渡す。
アーリックの強力な剣打はルイテルには受け止めるのは難しそうにも思えたが、かなり簡単に受け止め、2本の剣を上手く使い剣を流しアーリックの懐に滑り込んだ。アーリックの反応も早く、ルイテルの剣をはじく。そのまま、何かわかりあったのか、かなり本気での打ち合いが始まる。
「まあ、こんな感じ使ってくれ」
「ちょ、ナギ兄、助けて」
「仕方ないな」
ナギが木刀を取り出し、キーリーとクレハの間に割り込む。
「ナギが相手してくれるの?」
「遠慮したい。それより大浴場行くぞ」
アーリックとルイテルもつれて大浴場に入る。
勿論男女別だ。
男湯の方は女湯よりも気持ち小さく作られているが、それでもかなり贅沢なつくりをしている。
「おー、シャワーはシャワーでいいけど、やっぱりこういうのがいいよね」
「まだこういう設備を作るのは金がかかるからな」
「これは、いいな」
男3人であるが並んで湯船につかっている。
こちらは他愛もない話をしながら、ナギの持ち込んだ酒をちびちびやっていたのだが、女湯はというと。
「アイヴィーって意外と背あるんやなぁ、羨ましいわ」
「ほんとに。胸も大きいし」
アイヴィーはキーリーとエレノラに支えられて、浴室に入る。
「なんでお風呂入ってるんでしたっけ?」
「せっかく創ったんだしいいじゃない。というか、パンドラはシャワーとか浴びてなかったと思うけど、洗わなくていいの?」
「え?ああ、一応魔法では……でもなんといいますか」
「洗っておきなさいな。キーリー、避妊薬ある?」
「あるでー。体に害のないやつ」
「えっと、一応いただいていいですか」
「……そういえば、魔属性の術式に避妊魔法があった」
「それ呪術とかとちゃうよな?」
「……みなさん、リュディもいるので少し自重してくださいね」
「はわわ……大人の会話です……」
「これは大人とは少しちゃうなぁ……」
体を洗い、湯船につかったとき、クレハがおもむろにシャノンの胸を揉む。
「ひゃっ!?何するんですか!?」
「いや、これでナギを誑かしたのかと」
「確かに、シャノンさんの胸はおおきいですね。形も綺麗ですし」
「うわぁ……なんかナギ兄の嫁の謎の争いが始まった……」
「キーリーもペトラも大き目よね」
「うわ、こっち飛び火した」
「そうでしょうか?こんなものでは?」
「まあ、パンドラは除外して……ああ、それだとペトラも除外ね」
「少しはなれてよう……エレノラ、どうしたん?」
「この育たない胸をなんとかしたい」
「ああ、地味にダメージ受けてたんか……」
男衆が風呂から上がっても、女衆が出てくる気配がないため、男3人で先に遊戯室に入り、ビリヤードなどをしていた。
1ゲーム終わったところあたりでクレハたちも遊戯室にやってくる。
「ビリヤードと、ダーツボードと、バーカウンター、なかなかの出来栄えね」
「ここを一番頑張ったといっても過言ではない」
「久しぶりにダーツでもやろうかしら」
「適当に遊んでてくれ。オレはちょっと夕食の準備してくるから」
「お手伝いしましょうか?」
「今日はちょっと変わったものを実験的に作ろうかなと思ってるから。シャノンもたまには休憩したらいいよ」
「ナギ様のそばにいることが至上の幸福なのですが」
「んじゃあ、うちが手伝おか?たまには」
「そうか、じゃあ、キーリー、一緒にキッチンにいくか」
「ペトラ、このビリヤードって遊びの相手してくれるかい?ああ、もちろん、アーリックも引き続き頼むよ。次はナギに勝ちたいからね」
「そうだな。パンドラ、一緒にどうだ?」
「ルール教えてもらってもいい?」
「勿論、といいたいところだが、このナギの置いていったルールブック読んだ方がわかりやすいだろう」
「……ほんとに何でも作るね、あの人」
「ほんとにおもしろいね、ナギは」
しばらくはルイテルも含めて遊戯室に籠っていたのだが、もうすぐ日も暮れようという時間になって訪問者が現れる。
どうやら貴族の訪問者らしく、対応したのはペトラだった。
「お待たせいたしました、何か御用でしょうか」
「失礼。私はハント子爵ともうします。こちらにシュヴラン男爵が滞在されていると聞きまして。こちらは友人のパーペン男爵とギレン子爵です」
「はぁ、それはどこで?お伺いになったのでしょう?」
「我々と親交のあるグラウン伯爵からです。取り次いでいただけますか?」
「失礼ですが、ご用件は?」
「同じ帝国貴族として一度ご挨拶をと」
「えっと、ハント子爵とギレン子爵、それにパーペン男爵ですか。少々お待ち――わ、何時からそこに?」
「さっきからさ。ペトラ、これは追い返していいよ。今度不敬罪かなんかで爵位剥奪しておくから」
「そう、ですか。屋敷の主人であるルイテル様がそうおっしゃるなら。それでは、お帰り下さい」
「「「――――――へ?」」」
ルイテルの名前に固まる阿呆貴族3人。
「君たち、公爵である僕の屋敷に約束もなしにいきなり訪ねてくるとはなかなかいい度胸してるねぇ」
「え?いや、そんな……!?」
「あとで宰相から使いが来るからその時にでも報告しておくよ」
「ちょ、ちょっとお待ちください、殿下」
「あと、僕の友達は、シュヴラン伯爵だから。その辺間違えないでね?」
ペトラが扉を閉める。
「いやぁ、予想通りナギに接触しようとするバカがいたね」
「屋敷の持ち主ぐらい調べればわかると思うのですが」
「それより、食堂の方からすごくいい匂いがするね」
「嗅いだことのないタイプですが、これは、お腹が空きますね」
「ちょっと食堂覗いていくかい?」
「はしたないですよ、ルイテル様」
「そうはいっても――ん?」
再び訪問者である。
「誰かな?」
「ちょっ、ルイテル様!?そういうのは私が!」
ルイテルが顔を出すと、そこには先ほどの3人、ではなく見知った顔があった。
「やあ、宰相――じゃなくて、シッファー伯爵」
「少々お邪魔してもよろしいですかな?」
「ああ、構わないよ。まさか、宰相閣下が直接くるとはね」
「私もあの者が気になっていたので。直接見たかったのです」
「私もいるぞ」
「……なんでいるのさ。僕が言うのもなんだけど、君は来ちゃだめだろう、ライザルト皇」
「今日のところは兄上の弟のライズという事にしておいてください」
「無理があるよ。顔知ってるんだから。まあいいや、とりあえず中に入って、貴賓室に――うわ、ナギ、ここもいじったんだね」
貴賓室のドアをあけると今までのごてごてした装飾ではなく、落ち着いた気品のあるものに変更されていた。
置かれている家具も洗練された新しい形をしており、なかなかのものである。
部屋に入った宰相とライズもこれには驚く。
「じゃあ、ナギを呼んでくるから少し待っててよ」
「ルイテル様、そういうのは私が!」
ルイテルが話を聞かずに外に出ていき、ペトラと宰相・ライズの間に気まずい空気が流れる。




